愛とシトラス③
とても近い距離感で過ごしていたものの、これまで何も思うことのなかった感じることもなかった胡乃葉という存在は、あの日記を読んでしまってからの俺にとっては凄く異物のように感じられて、胡乃葉の事を異常なまでに意識するようになってしまった。
前までの俺の頭の中は、ベラトリックスのことでいっぱいだったが、今の俺の頭の中は胡乃葉のことでいっぱいだ。
勿論人間には、人それぞれ大小様々な秘密がある。それを勝手に覗いてしまった自分が悪いというのは明白だ。だが、覗いてはいけない扉の向こう側を覗いてしまったのだ、俺はこれまで感じることのなかった、胡乃葉の爽やかな花のような匂いや私物、立ち振る舞いに至るまで、胡乃葉という存在そのものを強く感じて、もう元には戻れないだろうと直感した。
――とある日の夜、夜ご飯を食べた後の時刻は午後二十時半頃、部屋の窓を開けて俺は胡乃葉と風景を眺めながら涼んでいた。
俺達の間にはあまり会話は交わされないし、たまに交わされる言葉も他愛のない口から溢れた息遣いのような言葉であるから、実質的には俺達は同じ部屋にいながらも一人部屋にいるかのような気持ちになっていた――それはいつものことだが、何故か今日の俺と胡乃葉の間の雰囲気は、いつもと違うものになっていた。
――日記を読んだことがバレたか? ……角度も手に取る前と同じになるように戻したし、できる限りの工作はやったから、バレる要素はないはずなんだけどな……。
開けた窓から吹き込んでくる爽やかな風も、今の俺をクールダウンさせるには弱かった。
俺の頭の中は胡乃葉のことで埋め尽くされていて、心はドキドキしていた。……まるで恋でもしてるみたいで馬鹿馬鹿しいと一瞬思ったが――いや、本当に自分は恋でもしてるんじゃないかと思った。そのくらい、胡乃葉の一挙手一投足を目の端で追いかけずにはいられなかった。
でも、そういう自分の状態を抜きにしても、今の胡乃葉は、具体的にどうと言うことは難しいけど、なにかいつもとは違う雰囲気に感じられた。いや、俺がただ勝手に内心ドキドキしているからか……。懐かしいな、胸がドキドキするこの感覚。
列車の微振動に気持ちはどんどん緩んでいく。食後で頭もぼーっとしている。ああ酒も飲んだか。変わらない風景ではあるが、坂を登っているからか速い速度で進行している列車は、まるで大きなゆりかごみたいだ。これだけ色々揃っているんだ、気持ちが開放的にならない方がおかしい。全てが心地良く、全てが気持ち良い、こんな時間がずっと続けばいいのに……。俺はそう思いながら目を瞑った。
ぎゅっと、俺は誰かに手を握られた。
目を開けなくとも分かる、それは胡乃葉の手だ。俺は胸のドキドキが加速した。
「どうしたの、急に」
俺は瞼を閉じたまま、胡乃葉にそう語りかけた。
すると胡乃葉はぎゅっと握った俺の左手をより強く握ってきた。
カチッと物音が鳴った。それは恐らく電球を消した音だろう。瞼で遮られていて見えない外の世界が、胡乃葉によって完全ではないものの暗闇に包まれているのが分かった。
胡乃葉は俺の左手を握ったまま立ち上がったようだ。そして、物音から察するに窓を閉めてカーテンも閉められた。そうすると、部屋は完全な暗闇に包まれたようだった。
俺はずっと瞼を開けることなく閉じていて、表情も変えずに、ずっと静観していた。
胡乃葉はずっと握っていた俺の左手を解放した。この先どうなるんだろう、邪な感情が俺にふと浮かんだ。胡乃葉は何かゴソゴソを動いているようだった。まさか……。
ゴソゴソした物音が終わると、胡乃葉は再度俺の左手を握ってきた。
「目を開けて、キビト」
俺は言われるがままに瞼を開いた。
胡乃葉は全裸になっていた。
俺は、最初はゆっくりと、だが次第にふつふつと燃え上がるような興奮に、一瞬息が詰まった。
暗闇で完全に見えるわけではないものの、胡乃葉は明らかに全裸になっていた。その表情は恐さも少し感じるくらいに獣に近いものだった。性の獣を目の前にし、俺はまるで本物の獣と相対しているような気分になった。涎をだらだらと床に溢している獣に、俺は今からどう弄ばれるのだろうか。
確かな興奮が、俺を襲った。ペニスは痛さを感じるほどに勃起していた。
胡乃葉は全裸のまま、瞳孔開いた性に囚われた目つきで俺に抱きついてきた。ズボンの上から勃起したペニスが胡乃葉に当たった。胡乃葉はそれを感じ取ったのか、ニヤッとした表情を俺に向けてきた。頭がぼーっとしてきた、アズサへ対する謝罪の準備は、もうとっくのとうに出来ていた。
「あんたも……脱ぎなさいよ」
胡乃葉は絶え絶えの荒い息遣いで耳元に囁いてきた。
パンツに我慢汁が染み付くのが分かった。俺は胡乃葉の胸を揉んだ。すると胡乃葉は俺のペニスの先っぽを、ズボンの上から撫で始めた。俺はこの時点で胡乃葉と同じように理性が飛び始めて、もう……なにも考えられなくなっていた。
俺は胡乃葉の胸を揉むのに飽きると、服を脱いだ。そして、じわっと出てくる我慢汁を、胡乃葉のお腹に押しつけた。胡乃葉は俺の耳を舐めてきた。そんな胡乃葉を俺は耳から引き剥がして、屈ませた胡乃葉の口にペニスを突っ込んだ。もうこの時点でえげつない匂いが部屋中に漂っていた。俺は一分も経たないうちに胡乃葉の口の中に射精した。
胡乃葉は口元を手で拭いながら俺の方を見上げてきた。俺は目線を送ると、胡乃葉は口の中のものを全て飲み込んだ。俺のペニスは一度萎れたが、その後胡乃葉の胸を舐めているうちにまた屹立し始めた。胡乃葉の身体は柔らかく、良い肉付きをしていた。自分よりも大きい胡乃葉の身体を、俺は宿主を侵す寄生虫のように貪った。俺が胡乃葉に抱きつくと、俺の身体は全て胡乃葉の肉付きの良い身体に包み込まれた。
俺は胡乃葉にベッドに押し倒された。このときの胡乃葉の力の強さは異常で、抵抗するのは適わなかった。
胡乃葉は俺の勃起したペニスを手で包み込んでより硬くさせたあと、自身の性器に挿入した。




