ロゼッタの生き方
エイドルへの街道をのんびりと、メイド3人が交代で馬車を押して歩く。
何せ重力操作で重さはゼロ、摩擦係数もゼロ(笑)。
バットでクリーンヒットしたら、どこまでも飛んで行きそうな軽さ。
さっき、初めて人とすれ違った。
その冒険者チームは目を丸くして、若いメイドが押す馬車を見ていたが、馬車についている紋章を見て、”魔道具の馬車”、だと納得したようだ、作戦成功!
エイドルの町の周りを大きく囲む高さ7メートルにも及ぶ城壁。
街道から町に入る城壁門には衛兵が2人、後ろの小さな2階建ての建物は衛兵控え所。
エイドルの城壁門の手前、500メートルほどでメイドとお子様たちが馬車から降りて、手はず通りにエイドルの町へと入場し、エイドル伯爵邸で後続の護衛冒険者、護衛兵たちを待つ予定。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう。
今でも、空の上みたい。足元がフワフワしてる。」
そう言いながら、足をそろえてピョンピョン跳ぶマロンちゃん。
金髪のポニテが上下して可愛い。
「ピジョン様。」
マチルダさんに促されてピジョン君が
「ボクたち一行を絶体絶命のピンチから救ってもらったうえ、このような、・・・」
「ピジョン様、我々は修道女として当然のことをしました。
おまけに、おかげで大先生(笑)のもと、実地の飛行訓練にもお付き合いいただき自信をいただきました。
お礼は,”オアイコ”、ということで。」
「もったいないお言葉の途中ですが、お礼はもう頂戴しております。」
ロゼッタがピジョンの話を途中でぶった切り。
「ハ~、」
マチルダさんが大きくため息をついて、
「ピジョン様、たいへんご立派なあいさつでございましたが、」
「ありがとうございました!」
マチルダが大きな声でキリッ、と美しい礼でユンカーたち3人に礼をする。
「お礼は時には演説は不要なものです。」
「坊ちゃま方、メイド一同、礼!」
「サン、ハイ!」
『ありがとうございました!』
みんな、揃ってキレイなお辞儀。
育ちのいいひとは姿勢もよい。
「それではメイドたち、荷物の確認と最終点検。
私はシスター様方と大事な大人の話をいたしますので、ピジョン様のお世話はハリー、お願いしますね。」
マチルダさんはメイドたちにテキパキと指示を出すと、少し離れて立っているユンカーたち3人の方に歩いてくる。
「お久しぶりです、ロゼッタ様。」
マチルダが丁寧な礼をする。
「あたしはただのロゼッタさ、ロゼッタ・ハーローじゃないんだから同格だよ。
呼び捨てにしておくれ。」
「久しぶりだね、マーチ。」
ロゼッタが礼をとるマチルダの体を抱きしめる。
「ウイリアム兄さんは立派に当主をしているそうだね。」
「はい。」
「ちびメアリーが嫁いだ先も、良くしてくれてるようじゃないか。」
「はい。」
「あまりの偶然にあたしは声も出ないほどだったさ。
亡国のシスターが偶然にせよ、旅空にいつも思う一族の宝、血のつながった甥、姪を助けることができ、話すことができ、旅をすることができ、夢のようだったよ。」
「2度と会えるわけがない、と思っていたマーチまで一緒にいて、・・・」
ロゼッタはむせび泣いていた、涙をボロボロと流して。
「よく、助けてくださいました。
ロゼッタ様はやはり、ハーロー家の至宝、お戻り、・・」
「マーチ、その話のケリは7年前についてるはずさ。
改めていう、あたしはただのロゼッタ。
教皇庁勤めのフリーのシスターさ。」
共に抱き合い、泣いていた二人。
「では、あたしは当主に今回、旅のユンカー様ご一行のお3人に助けられたと、のみ、お伝えします。」
「それが、ロゼッタ様のご希望であるようですので。」
マチルダが言う。
「あー、そうしておくれ。」
「さー、みんながマチルダの指示を待っているじゃないか。
ここでサヨナラだ、伯爵に聞かれたらホリデー伯爵の配下に救われた、と言っておくれ。」
「すんなり、大貴族同士の貸し借りの話でキレイに精算になるはずさ。」
「御意、わたしは勝手に、個人的に、ロゼッタ・ハーロー様を尊敬しております。
それは誰に何を言われようとも変わりません。」
「失礼します。」
ターンをしてマチルダは一行のもとに歩いていく。
「姉さん、良かったの?」
イリヤが小さくつぶやく。
「いいに決まってるさ。」
やがて3人のメイドと3人の子供たちが城壁門の中に入って行くのを無言でロゼッタは見送っていた。
教皇庁の”フリー”のシスター。
なんか、カッコよくて色っぽいカモ




