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 はっきりジャスミンが断ると、リュディアスは意外だったのか、驚きの声を上げた。


「なぜだ!?」

(驚かれたこっちがびっくりなんですけど?)


 イケメンというものは、初対面で(しかも出会ってすぐ)求婚して、相手が了承するのが当然だと思ってるのだろうか?


「まず、わたしまだ結婚できませんし。十六歳ですから」


 他にも理由はあるのだが、これは大きな理由だった。この国の法律では成人である十八歳でないと、結婚できないことになっている。王女であるジャスミンも、例外ではなかった。

 他の理由は説明するつもりはない。少なくとも出会ったばかりのリュディアスには。


「十六? 人間だから小柄で童顔なのかと思っていた。まだほんの子どもではないか。ではまだ番えぬな」

(よかった。無理やり結婚しようとする気はないみたい)

 ジャスミンはこっそりほっと一息つく。


「ええそうなんです。だからどうかこのままくるっと方向転換して、城にお戻りください」


 だがリュディアスはジャスミンに同意することはなかった。もと来た道を戻ることなく、そのまままっすぐ飛び続ける。


「今は結婚しないにしても、いずれお前はオレの妻になる。簡単に島を案内しよう。案ずるな。必ずお前のことは今日中に城に帰す」

(ど、どうして結婚が決定事項になっているのかしら)

 

 先ほどはっきり断ったのに、その自信はいったいどこから来るのだろう。


「分かりました。必ず返してくださいね。今日中に。外泊なんてしたら、両親と兄が卒倒しますから」


『そのようなことは、必要ありません』と断りたかったが、ジャスミンは了承した。なぜだか、会ったばかりのリュディアスが、嘘をつかないという確信があったから。そして城のものに心配をかけることは心苦しかったが、人間がほとんど足を踏み入れたことのない、竜の島に行ってみたかったのだ。

 ジャスミンの言葉に、竜はにっと笑った。


「オレに二言はない」


 ジャスミンがふと下を見下ろすと、もう海が見えた。ヴァ―リアス王国の陸地からはもう抜けたらしい。

 エメラルドグリーンの海の水面が、きらきらと光っている。このように美しい海ならば、近づけばきっと魚たちが悠然と泳いでいるだろう。

ジャスミンは思わず声を上げた。


「わぁー! 海ですね! なんてきれいな色……」


 王女ゆえに自由に出歩くことはできないので、距離としてはそんなに離れていないものの、海を見たのは久しぶりだ。前世では何度も見たが。


「海を見るのは初めてか?」

「初めてではないのですが、こんなに綺麗な色ではなかったので。沖縄とかリゾート地でないとこんなには……」


 ジャスミンは失言したことに気づいて、慌てて口をつぐむ。


(まずい。キャロル以外の前で、前世のこと口にしちゃうなんて)


 キャロルの前ならいいというわけではないのだが、彼女ならばごまかしがきく。


「オキ、ナワ? なんだそれは」


 当然リュディアスは怪訝そうな顔をする。



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