2
聞き違いだろう。恐らく。いや、きっと。
何しろジャスミンは……。
だが、困惑しているジャスミンをそっちのけで、リュディアスは満足そうにうなづいた。
「ジャスミンか。分かった。連れて行く」
「は!?」
(何が分かったの!?)
そして。
連れて……行く?
どこに?
リュディアスのたくましい腕で、ジャスミンはがしっと抱えあげられた。いわゆるお姫様抱っこの状態だ。
「え?きゃぁあー!」
次の瞬間、リュディアスは再び広げた羽をはばたかせて、空に飛び立った。一瞬で遥か上空へ。
「離して、離して!」
バタバタ暴れると、
「この高さから落ちると死ぬぞ。オレも暴れられると、うっかり落とすかもしれない」
憎たらしいほど落ち着いた口調で、リュディアスが言った。
(……確かに)
恐る恐る下を見れば、建物もかなり小さく、人は米粒のような大きさだ。確実に助からないであろう。
まだ死にたくないジャスミンは不本意ではあるが、とりあえず大人しくすることにした。不承不承リュディアスの首に手を回すと、嬉しそうな顔をした。
家族ではない異性とこれほど近い距離にいるのも、ましてや抱きかかえられるのも初めてだったので、好きでもなんでもない相手なのにやたら心臓がどきどきしてしまった。さっき
初めて会ったばかりなのに。顔はいいからそれも仕方のないことかもしれない。自分であきれてしまうが。
「いい子だ」
ジャスミンが身動きするのをやめた途端、子供扱いするみたいに、ふっと笑ったのは腹が立つ。
「わ、わたしのこと連れて行って、どうするんですか? 召使いにでもするんですか?」
なぜ連れ去られたのか心配になって、ジャスミンは恐る恐る尋ねる。とりあえず、危害を加えられる心配はなさそうだが……。
まさかた、食べはしないだろう。竜族がひとを食べるなんて、聞いたことないから。
「召使?」
ジャスミンの質問は、鼻で笑われた。
(な、何よ。笑うなんて)
「お前は私の妻にする」
「つ、妻!?なぜですか?」
リュディアスとジャスミンは、さっき初めて会ったばかりなのだが。『結婚』と言っていたのは、残念ながらジャスミンのそら耳ではなかったようだ。
「一目見て分かった。お前は私の運命の番だ」
「うんめいのつ、がい?」
聞きなれない言葉に、ジャスミンは、思わず首を傾げる。
「簡単に言うと、運命の相手だ。竜族には産まれる前から、すでに決まった相手が存在する。今までずっと出会えなかったが、竜族でなく人間だったとはな」
「運命の相手……」
前世で言うところの、『赤い糸の相手』だろうか。ものすごくロマンチックな言葉だ。ジャスミンにはとても縁のなさそうなほど。
「お前も、私を見て何か感じたはずだ」
「え、ええ。まぁ……」
聞かれてジャスミンは言い淀んだ。感じたと言えば感じた。
だが、番とやらではなくても、リュディアスに見つめられて何も思わない女性などいるはずがない。こんなに端正な顔をしているのだ。
「いえ、でも結婚は無理です。お断りします」




