光と影
三か月以上もお待たせしてすいません!ようやく落ち着いてきたので上げます
「ふぅ・・・・」
王国で自分はせっせととあるものの整備をしていた。これから大事なものとなる分、整備は欠かせない。
「クニサキ~~?」
「うん?」
見るとメリアだった。彼女を見るとまたかと思う。彼女はやはり技術者の血が騒いでいるのか、やたらに整備している時に覗いたりして来るのだ。
ただの覗きなら俺も文句は言わない。だが彼女は事あるごとに俺の目を盗んで勝手に部品を分解したりしてしまうのだ。お蔭で以前、バラバラになったエンジンの部品の一部が見つからなくて、一日中それの捜索をしたこともあったのだ。
「お前・・・今度あれやったらまたこれだからな?」
俺が右手を上げるとメリアは苦笑しながら、やらないと言う。おそらく彼女も以前の事件で俺に大目玉を受けたことをまだ覚えているらしい。
小さく体を縮ませているメリアを尻目に俺は太陽の暑い日ざしに照らされている緑色のそれを見た。
UH-60JA
これはブラックホークで有名な機体に日本側が独自の改修を施した機体だ。陸自の他にも空自や海自も保有していて、そちらはUH-60Jである。
どうしてこの機体を丁寧に整備をしているのか、それはこの機体が今回の救出作戦の要となる機体なのだ。
それはどうしてか。それはこの救出作戦自体が極めて危険な任務だからだ。目的地に市民たちが着いている可能性は極めて低く、救出するにしても輸送艦「くにさき」ではどうしても見つかりやすくなってしまう。そこで迷っていた時にミルシアが助け舟を出してくれたのだ。
『あのクニサキさんがいつも甲板に置いているあの機械は使えないんですか?』
ミルシア自身にとってはほんの軽い気持ちで言ったのに違いない。だがそれが作戦を立案するにあたってそれがこの難しい作戦を成功させるための突破口となったのだ。
まず第一に輸送艦「くにさき」で敵の哨戒圏内ギリギリの範囲の海域まで近づく。
第二にそこから二班に分ける。一つは国東と共にヘリで救出に向かう者。二つ目は「くにさき」で待機して船の防衛及び運んできた難民の保護などだ。
しかしこの作戦にもかなりのリスクが伴う。一番の障害は難民の数だ。それがどの程度かでこのリスクが上るか下がるかするだろう。
(まぁ、要するに出たとこ勝負という訳だ)
この作戦は俺が今まで経験した中で一番ひどい戦いだ。俺としてもこんな形でかつての仕事場に戻るなんてしたくなかった。あぁ・・・建ててもらった家のベッドが恋しい。
「わっ・・・うわぁ!?」
ドンと嫌な爆発音が響き渡り、まさかと背筋に悪寒が走りながらそこを見るとエンジンからあまり見たくない黒い煙とそこで放心状態となっているメリアを見て、納得がいったと同時に俺はすでに走り出していた。
「あっ・・ちょっ・・待って!クニサキ、これは理由があって」
「はいはい、分かっていますよ。そうなんですよね。じゃあ、ちょっと甲板から出てお話をしようか?」
「何も分かってないでしょ!?それに口が笑っているのに目が笑ってない!い・・・嫌だ・・・はっ・・そうだ!」
彼女はもはや言い逃れができない状態ということにようやく理解が及んだのか、何かをブツブツ喋っている。その隙に捕まえてお話しようとしたときに彼女が右手をかざした。
「・・・?」
「ふふん」
彼女は不思議がっている俺を少し笑みを浮かべながら見るとその右手を振り降ろした。ちょっと待てよ。そういえばこれをどこかで。
「あっ!?」
俺が彼女が何をしようとしたかにたどり着いたのと彼女の右手から出た白い光が甲板で弾けるタイミングはほとんどいっしょだった。
「逃げるが勝ち!」
「くそっ、光魔法か。あいつ、そんなものまで使えたのか・・・・待てぇい!!」
熱い日差しの中で二人の影が揺れ動き、やがて消えて行った。誰もいなくなった甲板には長く飛んだせいで疲れたのか、海鳥たちが羽を休めていた。
同時に緑の鉄の鳥も再び、空を飛べることを夢見て、今は自分の元となった海鳥と共にその羽を休めていたのだった。
ちなみにこの後、光魔法を巧みに使って逃げ続けたメリアとそれを息絶え絶えながら追いかけた国東は「くにさき」の中を駆け回り、艦内で刑事ドラマのような逃走劇を繰り広げたがあまりに騒ぎ過ぎたのとメリアの光魔法の効果が強すぎたのもあって、不機嫌になったミルシアとアリシアが激怒して部屋から出て来て、ミルシアが国東、アリシアがメリアを襟首捕まえて部屋まで連れて行き、二時間ほど説教されて心身ともにかなり疲労した二人が部屋に帰ったのは甲板での騒動から早三時間と少し経っていた。
「うっ・・・ひどいめに遭った。メリアめ・・・・必ず後で倍返ししてやる」
結局あの二人のせいでメリアへの説教が全くできなかった。今度会ったら開幕頭ぐりぐりの刑をしなければいけないな。
「ふわぁ~~さすがに眠いよ」
さすがに今日は神経を使い過ぎた。ヘリの整備に半日以上費やし、更にメリアとの果てしない鬼ごっこをしたのだ。いくら自衛官でもこの世界に来て、女性の姿になった俺にとってはやはり体に負担をかける仕事だったのだ。
ベッドへ倒れ込んだ国東はベッドの感触をその身で味わいながら深い眠りへと入っていった。
クルス王国
「はぁ~~まったくついてないな」
クルス王国のとある森で帝国軍兵士の一人が愚痴を溢した。それに感化されたのか周りの者達も気分を悪くしながらついさっきの出来事を思い出す。
帝国軍は先の戦いで王国軍の主戦力の大半を撃滅した。その立役者は帝国軍の部隊では無い為に帝国軍兵士の大半は不満を持っていた。その為、その不満を周囲の村などを襲って金品を強奪して晴らしていたのだがやがてそれも飽きてくると今度はその奪った金品を賭けの材料にしてゲームを行っていたのだった。
「まったく誰だよ。あそこでゲームをしようなんざ言った奴は」
彼らもまたそんなあまたの兵士の一人だった。だが彼らはゲームで負けが込んでしまい、挙句の果てには全ての金品を取られた後と言う本人たちにとってはあまり笑えない状況になってしまった。
そこで頼みに頼みを繰り返した結果、この哨戒任務を終わらせたら金品を全てとは言わないが返してやると言ったために今の状況になっているのである。
「なぁ、聞いたことあるか。この森の噂」
「なんだ、おもしろそうな話か?」
「あぁ、何でもここに弓を持った兵士の幽霊が現れるんだってさ」
それに周りの同僚たちはどっと笑う。この程度なら誰だって聞いたことがあるような怪談話だ。
「はっはっは!!それで?」
「何でもそいつを見た部隊がいくつも連絡が途絶えているらしいぞ」
「おい、それなら俺達やばいじゃないか。はっはっはっ!!」
仲間の一人が茶化して皆が再び、大声で笑う。ひとしきり笑うと再び、次の話へと花を咲かせていった。
「それよぉ、そいつがさぁ」
「あぁ、それ___」
だがそれは長くは続かなかった。
ヒュ!
短い飛翔音と共に笑い話をしようとした仲間の喉に矢が突き刺さる。矢が刺さった場所は絶え間なく血を吐き出し続けていた。
「あがぁ・・あ・・が・・・」
刺された同僚は何が起こったかが分からないまま、息をしようとするが喉をやられているので息が出来ず、喉から空気が漏れる音を響かせただけだった。
「誰かいるぞ!?」
「畜生、どこからだ!?」
余りの光景に呆然としていたがすぐに我に返り、戦闘準備を整えながら辺りを見渡す。だがその間にさらに二人が血祭りにあげられた。
「ヒッ!?」
その光景に恐れおののいた一人が矢が降ってきた方向とは逆へ走っているが別方向から来た矢に体を串刺しにされた。
「まさか一人では無いのか!?」
仲間が次々とやれれている中で隊長が叫び、辺りを見渡すがあるのは漆黒の闇だけだった。
「卑怯だぞ!出てこい!」
その返事に答えたのは無数の矢だった。彼が驚きに包まれた時には体が串刺しになってその場に張り付けにされた。
「ふぅ・・・・」
死屍累々になった現場で人間の吐息が静寂を破る。それを皮切りに次々と人間が出てくる。まるで闇から出てくるように。
「卑怯なのはそっちだろ」
その人物は串刺しになった隊長に唾を吐きかけて、仲間に後処理を任せて闇へと消えて行った。




