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水中の罠

パァン!パァン!


「そこだめです!もっと狙いを絞って」


「うううう・・・・・」


メリア達は銃の訓練を受けていた。正式にここの仲間になるのだからこれくらいは覚えてほしいと思ったからだ。

指導はもちろん一番最初のメンバーであるミルシアに任せている。俺は遠巻きから見て、間違った事をしていたら少しアドバイスしてやるアドバイザーみたいなことをしている。


「しかし、何だかきな臭くなったなぁ」


俺は手に持っていた地図を眺めていた。今いる国の海図であるが少しきな臭い。あの職人が渡してきたのはこの海図であるがかなり遠い孤島であった。それに聞き込みをしてみたところあの辺りは少し危険らしい。

だからこそ急ピッチで作業を完了させなければならない。確かにもう少し待ってから言ってもいいがそろそろロックドラゴンの凍結に使う魔石の在庫がそこを尽きかけていた。


「在庫を買い足しておけばよかったな、まぁ、今となっては遅いが」


何せロックドラゴンの討伐自体が唐突だったために肉などの輸送に使う凍結用の魔石を買い足していなかったのだ。当時は何とかなるだろうと多寡をくくっていたが様々なことがあって予定が大いに狂ってしまい、こういう事態を引き起こしてしまったのだ。


「クニサキさん、どうかしましたか?暗い顔をして」


ふと声をかけられて顔を上げてみるとミルシアが顔を覗かせていた。どうやら心配になってきたらしい。


「いや、何でもないよ。それよりもメリア達の訓練の方はどうなっている?」


すると嬉しそうにミルシアは語り出した。


「皆さんとても熱心に訓練に励まれています。射撃面はまだ日が浅いのでまだまだですがその他にはついてこれています。ですのでもう少し頑張れば完璧になります。それに私の後輩が出来て嬉しいです」


最後の方は完全に質問から外れて事を言っていたがミルシアが嬉しそうなので良しとした。どうやら心配されていた程ではなかったほどだ。


「あとメリアさんでしたっけ、彼女は銃の扱いが上手いですね。運動面では他の人たちに劣りますが射撃面では飛び抜けていますね」


「ほぉ、そうか、そうか」


嬉しい報告を聞いた。メリアは確かに運動面では劣るだろうがこれからそれを改善しておけばよい。メリアは特別に62式を持たせてやろう。


「報告ありがとう。もう少ししたら飯だから頑張ってくれ」


「はいっ!失礼します」


敬礼をして去っていく。あまりこういうことはされたことが無いので少し興奮してしまった。違う意味では無いぞ。

その時にビビッと電気が走るような感じがした。この感覚は前にもあった。しかし


「動いていない?」


一人その場で呟いてしまった。頭を切り替えてCICに行く。動いていないのなら急を要する事では無いはずだ。

CICに着くとレーダーを見る。感覚で何となく分かってしまうがこの能力を得る前の自分ではどうしても人の目で確認したくなってしまう。確かに動いていないが光点がある。万が一だが確認する必要があるだろう。後で罠でしたなんて笑えないからな。無線機を使ってミルシアを呼び出す。


「どうしましたか」


「ミルシア、レーダーに何かが映った。今から艦橋の見張り台に行って監視をしてくれ、どんな些細な事も見逃すな。すぐに俺も向うから」


「はい、分かりました」


「後、可能だったらメリア達も連れて行ってやってくれもしかしたら良い体験が出来るかもしれない」


「それについては問題ないです。もうついてきちゃってますから」


まじか。あいつら訓練さぼって何をしているんだ。・・・・・まぁ、可愛いから許すが。

俺は通信を終わるとすぐに艦橋に上った。艦橋に上った瞬間に無線機が鳴り、出てみると物凄い声が聞こえてきた。


『く、クニサキさん!!』


「何だよ。もう上ってきたぞ」


「あっ、いたんですね」


居て悪かったな、チクショウ!!


「で?大声を上げるくらいミルシアは何を見つけたんだ?」


「あれです。難破船があります!!」


「何?」


俺は今までの雰囲気を打ち消した。急いで艦橋にあった双眼鏡で見る。ちなみにミルシアは勝手に置いてあった双眼鏡を見ている。


「あれです!」


ミルシアが指さした方向を見ると確かにミルシアが言った通り、ボロボロの船が一隻あった。この世界の船は基本的に帆船が基本だが特徴的なマストは全て折れて、船体にもかなりの大穴が開いていた。漂流しているようで今も浮かんでいるのだが不思議だった。


「とりあえず合図を送ってみよう。誰かいるかもしれない」


俺は幽霊船というものに注意していた。

幽霊船とはよく船が集まる場所に現れて、ボロボロの状態でそれを見て近づいた人間の船を襲う船乗りにとってはトラウマ級の魔物なのだ。俺はそういう系はあまり好きではないので出来れば遠慮したいものだった。

発光信号を船に送った。頼むから出てくれよと俺はちょこっと祈った。





僕達は運が良かった。アイツに襲われてまさか生き延びるとは思ってもいなかった。

僕はたまたま運送するために客船に乗り込んだのだけどアイツに襲われたせいで海賊船から身を守る為の護衛船は皆、アイツに沈められた。僕が乗り込んだ客船も今は海に身を任せるだけの置物になっている。


「おいっ!目の前から何か来ているのぞ!」


乗客の一人が叫んだ。その言葉に全員が悲鳴を上げた。僕も足の震えが止まらなかった。

今の俺達にアイツを倒せる武器も何も持っていない。今来たら美味しい餌になるだけだ。また一人が叫んだ。


「いや、違うぞ。船だ!」


その言葉に全員が声を止めてそれを見た。確かに船だった。だが船と表すにはそれはあまりにも大きくそして異様だった。


「あれは鉄で出来ているのか・・・?」


「でも帆が無いぞ。本当にあれは船なのか?実は魔物だったり」


「あっ、見て光ったわ」


「もしかして合図じゃないか。俺達も何か振返してみよう」


希望が見えたことでようやく活力を取り戻した乗客は自分が持っている様々な物を巨大な船らしきものに振り返した。




「合図が見えました」


「どうやら幽霊船では無かったようだな」


とりあえず救助かな。あれくらいなら「くにさき」の許容量を超えることは無いはずだ。


「救助活動をする。近くまで寄せるから少し揺れるぞ」


俺の言葉の通り、一気に舵を切ったために少し揺れる。


「ミルシア、頼むぞ」


「了解しました」


救助活動をする為に全員が慌ただしく動く。


「クニサキさん、早く」


呼ばれたので急いで会談を下りていく、今のところは敵影は無い。今のうちは。



一時間後


乗客は意外に少なかった。事情を聞くとどうやらかなりやばい奴に半数以上がやられてらしい。まじか。


「とりあえずいつソイツに襲われるか分からない。早いとこずらかろう」


「そうですね。とりあえずこのことは王国にも伝えな___」


会話の途中で何かが聞こえた。


ピコォン!ピコォン!


「!?」


間違いない、これはレーダーの音だ。

それで気が付いた。とんでもないことに。なぜ敵は足の遅い客船を逃がした?確かに餌として最後に沈めようというのなら分かる気がする。だがここまで時間をかける必要があるだろうか。もしもこれが。


ピコォン!ピコォン!


狙いが客船ではなく


ピコォン!ピコォン!


ノコノコと助けに来た船が目的で


ピコォン!ピコォン


その船が今の俺達なら



頭の中でレーダーの音が反響していく、一定の周期でだが確実に近づいていた。


嵌められた。これは罠だ。


それが分かった途端に背筋が凍った。急いで無線機を出す。


「クニサキさん?」


慌てている国東にミルシアが疑問に思う。


「伏せてろ!来るぞ」


艦内放送に切り替える。


「総員衝撃に備え!何か身近な物に掴まれ!」


その時に船体が大きく揺れた。


「キャッ!」


ミルシアが転ぶのを腕で抑える。


「くっ!」


やっちまった。少し傷が開いたか。だがそんな事を思っている暇はない。

揺れが収まったのを見て、もう一度無線機に叫ぶ。


「敵が来た!総員、対水上戦闘用意!」


輸送艦では絶対に発令されないはずの命令。だがここが異世界なら話は別だ。もちろん俺だってこんなことをしたことが無い。初めてのことだった。


「武器庫からありったけの武器を持ってこい。後で行くから」


「分かりました」


ミルシアは怪我を心配するような顔をしたが俺が「大丈夫」というと心配そうな表情で走っていった。


「さて、やるか」


意識をCIWSのカメラへと切り替える。そこに映っていたのは


「マジか。こんなの勝てるの?」


そう思っても仕方がない。それは全身を蒼い鱗で覆っており、体は水中に適した体になっている。

まさしくそれは海龍であった。

いきなりの超展開。作者もびっくりです。

いや、「くにさき」が影が薄いので出してあげたかっただけです。ちなみに海龍のモデルはラギアクルスです。

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