屋敷襲撃
シリアスが顔を出します。
「本当にここなんだろうな?」
「は、はい。部下がここに入ってくるのを見たそうです」
「そうか。ならいい」
メリアの屋敷の近くの森で複数の男達が潜んでいた。特に集団の中でひときわ目立っているのは先頭の大男だろう。
「まさかガリルの野郎があんな姿で帰ってくるからどんな奴がやったのかと思ったら・・・まさかあそこのお嬢様だとはな」
「兄貴、知っているんですか?」
「おうよ。だがそんな相手だからこそやりがいがあるってもんよ」
「さすが兄貴です!兄貴ならあの屋敷の魔道具なんてあっという間に蹴散らしちゃえますね!」
「当たり前だよ」
この男達はさっき国東がボコボコにした男連中の仲間だった。仲間の一人が内地軍の魔の手から何とか逃れて知らせたのだった。
「お前らは屋敷のお嬢を探すんだ。俺はその間に護衛のメイドを倒しておく」
「分かりやした!!」
男たちは持ち場へと行く。大柄の男は高級そうな屋敷を不敵な笑みで見る。
「お前たちも運が悪いな。俺様、”炎のガゼル”に喧嘩を売ったことがな」
男は手から炎を出し、屋敷へと向けた。
ドォン!
「何だ!?」
「屋敷の正門からだわ!」
爆音と共に正門の方から夜でも分かるくらいの炎が上がっていた。
「一体、何があったの?」
「とりあえずここは危険です。皆と合流しましょう」
「そうね。分かったわ」
屋敷の中に戻るとメイドの一人を捕まえて、訳を聞いた。
「何が起こったんですか?」
「どうやら盗賊の輩が攻めてきたらしいわ!メイドは皆、そちらに向かっているわ。あなたはお嬢様のお傍に居て!」
「分かりました」
どうやらかなり切迫した状況のようだ。しかし一体、誰がこんな事を。先程の連中は全員が内地軍の連中のお世話になっているはずだし、何より俺だって勝てた相手にメイド達が苦戦するはずがない。
そんなことを考えているとふとメイド服のスカートを引かれた。見るとメリアは不安そうにこちらを見ている。これがゲームならさぞ良いシュチュレーションかと思うが幸か不幸かこれは現実だ。
「大丈夫です。いざとなったらこれで撃退しますから」
服に隠している9mm拳銃を見て、少し安心したようだ。
「さっ、行きましょう」
手を引いて、とりあえずメリアの部屋に行くことにした。逃げるにしても62式を部屋に置いて行くわけにはいかない。どうしてもあれがいるのだ。
俺はあまり時間が無い事に焦りを感じながら、メリアの部屋へと急いだ。
屋敷正門にて
「何だ、何だ。歯ごたえが無い奴らばかりだな」
ガゼルは地面にうずくまっているモノを蹴り上げた。
「ガハァ!?」
それはメリアの護衛メイドの一人だ。他にも正門付近には多くのメイド達が倒れている。
「メイドさんよぉ、そろそろ教えてくれねぇか?お嬢は一体どこにいるんだ」
その質問に全身が黒くなり、服が破れたところが火傷しているメイドが答える。
「誰が・・・お前・・なん・・か」
「あ、そっ、ならもっと痛い目に合わないとしゃべってくれないか」
手に炎を宿すとメイドの顔が驚愕に歪む。
「その魔術は!お前はまさか・・・!」
「察しが良くて助かるよ。俺の炎にどれくれい耐えられるかな?」
「待っ・・・て」
「俺は待てるタイプじゃないだよ」
炎を宿した手をメイドに向けようとした時に屋敷の窓に何かがいた。
「うん?おおっと、どうやら俺は運がいいみてぇだ」
彼の視線も先に居たのはたまたま部屋に戻る為にそこの通路を使っていた国東達だった。これは他の通路が全てメイドによって主要な階段などが全てバリケードで埋め尽くされていたことが原因であった。
「さて楽しませてくれるかな?」
ドォン!
「!?」
いきなり前方の壁が吹き飛んだ。この吹き飛び方は外からだ。
「敵か!」
9mm拳銃を取り出そうとした時に強い衝撃が首元にかかった。
「クニサキ!?」
隣にいた彼女の声が下から聞こえる。そしてそれが首を手で持たれて持ち上げられた事に気付いたのはすぐだった。前に大柄の男の顔が見える。
「ほぉ、お前がクニサキか。かわいい顔してんじゃん」
「お、お前・・は・・・・?」
「あっ、俺か?俺は”炎のガゼル”って二つ名で呼ばれているな」
その名前に俺は聞き覚えは無かったがメリアには聞き覚えがあったらしい。
「”炎のガゼル”ですって!?あの放火事件の」
「うん?あぁ、そういえば街一つ燃やしかもなぁ。覚えてないけど」
街一つ燃やしたと平然と言えることに俺は狂気を感じた。
「俺が来たのは分かっているな?俺の部下が随分とそちらのお嬢さんに世話になったみたいでな」
どうやら予想は間違っていたらしい。悪い意味で。まさかあのナンパ男のボスがこんなヤツとは思いもしなかった。今更、遅いが。
「それ・・で?俺達に”炎のガゼル”殿直々に来たと?外はいいのに中はだめだな・・・グフゥ!?」
「強い女は嫌いじゃないが少し身の程の弁えたほうがいいぜ。メイドさんよ」
強い力で首が締め付けられる。あともうひと押しされたら意識が飛んでしまう。
「やめて!!」
彼は彼女の本気の殴りも痒い程度にしか思っていないようだ。
「気に入った。それにおもしろい遊びを思いついた」
「遊・・び・・だと・・?」
不穏な考えが浮かんだ。まさか。
「このお嬢さんはいただいておく。返して欲しかったら取り返しに来るんだな」
ドスッとメリアの腹から聞こえてきた。メリアはガクッと姿勢を崩すとガゼルにもたれ掛った。
「まっ、待て!!」
「お前もいい女だから本当は持って帰りたいんだがな。そうなると遊びを伝える奴がいないから勘弁してやる。次来たら容赦はしないがな」
首に強い力が再び、かかる。視界が段々と暗くなっていく中でガゼルは笑みを崩さないままでヒントを残した。
「俺達は朝の列車でこの町を出る。それがラストチャンスだ。もし逃したら・・・・このお嬢さん、売っちまうかもな。ハハハハハ!!!」
意識を失う直前に聞いた言葉はそれだった。
「だい・・・じょ・・ぶ・・で・・」
何か声が聞こえる。えっと、確か何をしていたんだっけ?
「大丈夫・・で・・か」
確か屋敷が襲われて、メリアお嬢様が・・・
「大丈夫ですか!?クニサキさん!」
「ハッ!?」
目が覚めた。周りには残骸とけが人のメイド人。アリシアだった。
「クニサキさん、お嬢様は!?」
「・・・・・攫われたよ。見事にな」
「そんな!?」
「すまない・・・」
俺は謝った。守れなかったのは誰が何というおうとも俺の責任だ。どうやっても許されることはない失態だ。
「いえ、謝らないでください」
「いや、それよりも今、何時間たった?」
「え、メイド長も負傷されてしまったので指揮が取れずにけが人の救助に当たっていたのでもう夜明け前です」
「何だって、こうしてはいられない・・グゥ!?」
動こうとすると体中が悲鳴を上げた。
「動かないでください。結構、ひどい怪我だったんですよ。しばらくは安静に」
あの野郎、俺が気絶した後にめちゃくちゃな置き方したな。
「構わない。朝になったらお嬢様が乗った列車が出てしまうんだ!」
「何ですって!?」
俺の言葉にアリシアはひどく慌てる。
「ここからの距離ならもう間に合いませんよ!?もう少し前にそれが分かればいけましたが・・・・奇跡でもない限り・・・」
アリシアは絶望的な声を上げる。俺的にも策が浮かばない。くそっ、こうなることなら「くにさき」からパジェロでも持ってくるんだった。
(うん?パジェロ?)
何かパジェロという単語に引っかかった。パジェロ、自衛隊、車・・・・。
「あっ!!」
「えっ!どうしたんですか大声上げて!」
「まだ間に合うかもしれない!連いてこい!」
どうして俺は忘れていたんだ。ついさっき見つけたばかりじゃないか。
「待ってください!行くってどこへ!」
アリシアの声がするが構っている時間は無い。
(待ってろ、ここからが本番だ!)
二度と過ちを繰り返されない為にもメリアの部屋へとまず向かった。




