屋敷脱出準備
「そうか。そうだったのか」
ようやく彼女の秘密を知る事が出来た。だがそれに対しての喜びは無かった。それよりも疑問が深くなるばかりだった。
「その桂木という人間からはまだ連絡は無いのですか?」
ダメ元で聞いてみたがメリアは首を横に振るだけだった。
「そうですか・・・。分かりました。それでは・・・」
「待って!」
次の言葉を言おうとした時にメリアは突然大きな声を出して制止させた。
「あなたはカツラギを知っているの!?クニサキって名前がどことなくカツラギに似ているし何か関係があるの!?」
その質問に俺は動揺を見せずに俺でも驚くくらいに冷静に答えた。
「それは私にも分かりません。ですが心当たりはあります。私と彼女はおそらくですが同じ組織にいたことがあります」
「それは何の組織!?」
俺と桂木が何らかの繫がりがあることに希望を見いだせたのか詰め寄ってきた。
「私と彼女が元の世界で所属していた組織です。主に国防を目的とした組織で」
「軍隊ってことね。つまりあなたもカツラギも軍人ってことね。だからあんなに強かった。そうよね!!」
「まぁ、違いはほとんどありませんが・・・・」
「で?その組織の名はなんていうの?」
言葉を濁す俺に彼女は詰めかけた。
「ねぇ、知っているんでしょ?教えてよ。頼むから。じゃないと胸張ってあの人を探しに行けないのよ・・・・」
そんな理由があろうとは思いもしなかった俺としては悩むところだった。そんな彼女を見て俺は目をつぶって言った。
「自衛隊です」
「え?」
聞き返す彼女の顔は目を瞑っていて分からないがどういう顔をしているのかは分かった。だから教えることにした。
(つくづく甘いな、俺は。)
自分の甘さを心の中で自虐する俺だが不思議と悪い感じはしなかった。むしろ力になってやりたい、大事な彼女の情報を少しでも分けてあげたいと思ったのだ。
「私たちは日本という国の国防を主任務とするぐん、組織に所属していました。それが自衛隊です。ついでに言っておきますがその武器も銃という名ではなく、62式という機関銃です」
「ジエイタイ、ロクニーシキ?」
俺に教えられた言葉を繰り返し言うと俺の方に向き直る気配がした。
「クニサキ、他に彼女についての情報はある?何でも欲しいの」
その言葉に目を開けた。その時の顔は今までのサボり癖のありそうな顔とは打って変わって決意を新たに決めた者の顔がある。
「残念ながら私は桂木という名の知り合いは同期にはいませんでしたので自分の知らないところか他の部隊にいる可能性が高いはずです。ですので私が教えられる情報はここまでだと分かって下さい」
「そう・・・分かったわ」
少し残念そうな顔をしていたが俺は仕方がないと割り切る事にした。知らないモノは仕方がない。俺だって神様じゃない。人間だ。知らないことだってたくさんある。
だが少しだけだが予想はついていた。証拠はあの62式を見た時だ。アレの図面を見たところで少しだけだが予想はついていたが今回実物を見て、確信を得た。あれは現代の自衛隊では一部を除いては既に博物館で飾られるくらいの代物だ。一般の普通科隊員が持っているはずがない。
(ということは桂木と言う男は・・・・いや、それは後でいい。まずは目標が出来た。)
今回は新しい国の探索でも出来ればいいと思っていたが俺の予想を突き抜けて行った思わぬ成果は嬉しい誤算だった。それにあの桂木と言う女性。メリアの話では一年前に来たと言っていた。
(一年前は丁度俺が「くにさき」と異世界に飛ばされて、操る能力を手に入れたのと同じだ)
一年前に彼女もまた俺と同じく異世界へと飛ばされたのなら、その一年前のあの日に何かあったという訳にもある。出なければ同一人物でもない人間が同じ日に異世界に飛ばされるなんてことがあり得るのだろうか。
(いや、ありえない。必ず何か原因があるはずだ)
二人の間で静かな沈黙が少なからずあったがそれも一人の人物によってすぐに終わった。
コンコンコン
「お嬢様?そろそろお夕飯のお支度が出来ました。入りますよ」
まずいと二人が思った時にはありがたいことに体が上手く反応してくれていた。俺は箒などの掃除道具を手に取って掃除をしている風に見せて、メリアは電光石火の早さで音を立てずに椅子に座って、机にある未完成の機械をいじり始めた。
「失礼します。お嬢様?」
「わ、分かったわ。クニサキも今までありがとうね。一緒に行きましょう」
「わ、分かりました」
打ち合わせも何もしていないメリアの会話に何とかついていった。そのお蔭もあってかメイド長にはまったく気付かれずに行くことが出来た。ひとまずはセーフだ。
メイド長が前に行って、真ん中にメリア、そして最後に後ろから俺の順番で食堂に向かっているとメリアが俺の耳元でひそひそとメイド長に聞こえないように話してくれた。
「私はね。お父様とお母様が帰ってくる前にここを出ることにしたわ」
俺は驚いた。あのひここもりニート一歩手前のお嬢様がまさかここを出ていくとは思わなかったのだ。
「ほんとはね、お父様とお母様が帰ってきてから行くつもりだったんだけどそうしたら決断が鈍っちゃうかもって考えたらそれが一番良い方法だと考えてね」
「でもお嬢様、どうやって屋敷を抜け出すのですか?」
いくらメイドでも言っては悪いが運動不足のメリアの足に追いつけない程ではないはずだ。彼女の移動手段が徒歩だけだとしたら見つかったら終わりだ。いや、今は見つからなくても後々から見つかって連れ戻されるのがオチだろう。
「大丈夫、私に考えがあるから。このときのために今まで準備してきたんだから。あとでその準備をするからこの食事が終わったら私の部屋の前まで来てね」
確かに俺だけなら大丈夫なはずだ。だがお嬢様はそうはいかない。歩いているだけで注目の的になる。もし見つかれば叱られるだけではすまないだろう。彼女の過去は分かったがそのような危険を冒すことも厭わないような彼女の行動を根源は何だろうか。
「私はね。ここを出て、彼女を探す旅に出たい。そしてもし見つかったらこう言いたいんだ」
俺の心の中を見抜いたように彼女は続ける。
「”ありがとう”って。そしてあいつを殴って、どうして帰ってこなかったんだとも言ってやりたいわね」
むちゃくちゃな理由だがその分、気持ちがこもっているようにも見える。
「そうですか。ならば協力しましょう。よかったですよ。あなたが私の思っていた人で」
「?」
「そろそろですよ」
メイド長の案内でメリアが食堂に消えていく直前に俺は周りから見えない位置からメリアに向かって親指を上へと突き出した。
食事後
「ここなんですか?」
「そうよ」
俺達は再び、警備を掻い潜って少し古びた倉庫まで来ていた。本当に大丈夫かとやはり心配になってしまうが今まで問題が無かったらしいので心配しすぎなんだろう。
「ここは誰にも見せていないわ。お父様やお母様、メイド長にもね」
そこまで隠しているという事は余程大事なものを隠しているのだろう。まさかとは思うがこの倉庫の扉を開けたらアメリカの映画みたいに銃器が山ほど出てくるんじゃないだろうな?いや、話を聞く限りは大丈夫なはずだ。大丈夫だよな?
「これは彼と別れた後にまたあの森に行った時に見つけたモノなの」
またモノか。一体このお嬢様はどれだけ持っているんだ。
「これよ!!」
勢いよく倉庫の扉を開ける。その中にあったのは。
「なるほどこれなら足には困らないですね」
俺はその中にあった物で妙に納得してしまった。
国東 「メリークリスマス!」
ミルシア 「メリークリスマス!」
メリア 「メリークリスマス!」
という事で少しだけ登場人物達にクリスマスを祝ってもらいました。皆さんはクリスマスは何を過ごしましたか?私はケーキを山ほど食いました。おいしかったです。
今後ともこの作品をよろしくお願いします。




