【後日談】3- レオンにとっての幸福
◆
今日。
ようやくセレナが、自分を選んだ。
自分の意思で。
誰かに決められた婚約でもなく。
王家の都合でもなく。
レオン自身を。
その証が、今ここにある。
指輪へ口づける。
ようやく。
つないでもらえた。
レオンにとって、この指輪は約束などという綺麗なものだけではなかった。
セレナを自分につなぐ鎖。
そして。
自分の首につけられた首輪。
それでよかった。
むしろ、それがいい。
対等でなくても構わない。
セレナが主で。
自分が、その手から離れられないものでも。
主が捨てない限り。
つながれたものは、ずっとそばにいられる。
レオンはもう。
セレナなしで生きていく自分など、考えられなかった。
同じくらい。
いつかセレナにも、そうなってほしい。
自分がいなければ寂しくて。
探して。
触れたくなって。
今日のように、自分から手を伸ばしてほしい。
どちらがより愛しているかなんて、平等でなくていい。
セレナが一つくれるなら。
自分はもっと返せばいい。
そのうち。
どちらの方が重いのか分からなくなるくらい。
お互いなしではいられなくなればいい。
レオンはセレナの手を、自分の頬へ寄せた。
目を閉じる。
すぐに。
セレナの親指が頬を撫でてくれた。
それだけで満たされる。
それなのに。
もっと欲しくなる。
「オレのすべてを、セレナに」
頬を撫でる指が止まった。
レオンは目を開けた。
「オレはセレナじゃないとだめなんだから」
少しだけ笑う。
甘えるように。
「責任とって」
セレナはしばらく何も言わなかった。
その言葉の奥にあるものを、どこまで理解したのだろう。
やがて。
頬にあった手が黒髪へ入る。
優しく撫でられた。
「仕方のない方ですこと」
呆れたような声だった。
けれど。
手は離れない。
セレナはレオンの頬を両手で包んだ。
額を合わせる。
「では、一生かけて責任を取って差し上げますわ」
一瞬。
レオンは何もできなかった。
それから。
今日一番、嬉しそうに笑った。
セレナもつられて笑う。
次の瞬間。
強く抱きしめられた。
もう。
すぐには離れなかった。
セレナも離れない。
それでいい。
今まで知らなかったレオンを、今夜だけでいくつも知った。
甘えたがりで。
泣き虫で。
思った以上に我儘で。
少し意地が悪くて。
そして。
セレナが思っていたよりも、ずっと。
自分なしではいられない人だった。
そのことが。
何よりも嬉しかった。
ただ一つ。
セレナはまだ知らない。
左手にはめた指輪を見つめるたび。
レオンが密かに。
ようやく首輪をつけてもらえたと、喜んでいることだけは。




