26- 処刑まであと1日
「そいつを、見つけた」
レオンが召喚状を審問官の前へ置いた。
最高司法官はそれを受け取り、傍らの資料へ重ねる。
「その者には後ほど証言を求めます。その前に、昨日の審理について一点、訂正します」
公爵の調査についてだった。
穀物商会、財務局、交易業者。
反逆の準備とされた一連の接触先が、ヴォルターを追う過程で調べられたものと一致していた。
「レオンハルト殿下。公爵とは情報を共有されていたのですね?」
「ああ。毒の出所を追っていた」
「財務局への接触も?」
「金の流れを調べるためだ」
最高司法官が頷く。
「提出された記録とも一致します。これらの行動を反逆準備の根拠から除外します」
公爵は黙ったまま、一礼した。
「それは喜ばしいことですね」
アルベルトが口を開いた。
「セレナがリリア嬢を害していなかったことは、僕も嬉しいよ」
穏やかな声だった。
「では、父上の件に戻りましょう」
大広間が静まる。
「父上の遺体のそばにいたのはセレナです。そして、父上が彼女を呼んだ記録はない」
「そうだな」
レオンはあっさり認めた。
「じゃあ、誰が呼んだ?」
アルベルトの目がレオンへ向く。
レオンは召喚状を指した。
「セレナはこれを受け取って王宮へ来た。公爵が偽造したって話だったが、その前提はもう崩れてる」
最高司法官が召喚状を見る。
「届けた者を」
レオンの側近が扉へ合図した。
◇
入ってきたのは、王宮に勤める下級役人だった。
セレナは顔を見るなり言った。
「この方ですわ」
男の肩が強張る。
最高司法官が召喚状を見せた。
「これをセレナ嬢へ届けましたね?」
「……はい」
「誰から受け取ったのです?」
男は俯いた。
「答えなさい」
「私は……陛下からの召喚状だと聞いただけで」
「誰から?」
沈黙が落ちる。
やがて男が口を開いた。
「……王太子殿下付きの侍従です」
ざわめきが起こった。
「名は?」
男が答える。
アルベルトが眉を寄せた。
「?」
初めて聞いたような顔だった。
最高司法官が衛兵へ命じる。
「その者をここへ」
「僕も話を聞きたい」
アルベルトは平然としていた。
やがて扉が開く。
一人の侍従が入ってくる。
中央まで進み、顔を上げる。
アルベルトと目が合った。
侍従の足が止まった。




