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処刑まであと7日。悪役令嬢はもう何もしません  作者: すなな


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25/34

25- 処刑まであと1日

翌朝。


セレナは再び大広間へ連れてこられた。

父とは今日も離れた場所に立たされる。

セレナは上座を見るより先に、レオンを探した。


いた。

目が合う。


レオンがほんの少し笑った。

セレナも小さく息を吐く。


「では、審問を再開します」


最高司法官の声が響いた。

上座にはアルベルトが座っている。

昨日と変わらない、穏やかな顔だった。





「まず、昨日ヴァルディア帝国より提出された資料について報告します」


最高司法官が帳簿を開いた。


「押収記録、立会人の証言、署名を確認しました。翻訳についても照合を行い、提出された資料は真正なものと認めます」


広間がざわつく。


「さらに、本審問に提出されていた帳簿との照合を行った結果、改竄が確認されました」

「どの帳簿です?」

「アルヴェール公爵家から、毒の仲介人へ金銭が支払われたとするものです」


ざわめきが大きくなった。

父が顔を上げる。


「公爵家からの支払いは?」

「確認できませんでした」


今度こそ、広間が騒然となった。

最高司法官が手で制する。


「一方、ヴァルディア帝国で押収された帳簿には、同時期、同じ仲介人への支払いが記録されています」

「支払ったのは?」

「ヴォルターの管理下にあった商会だ」


レオンが答えた。

セレナはその名前に覚えがあった。

レオンがヴァルディアへ戻るきっかけになった人物だ。


「ヴォルターとは?」

「ヴァルディア帝国の貴族。現在、国家反逆の容疑で拘束している」


レオンが一通の書類を差し出した。


「供述も取った」


最高司法官が受け取り、目を通す。


「ヴォルターは灰穂病の拡大に手を加え、国外の小麦価格を操作していた。目的は、アルヴェール王国の穀物市場を混乱させること」


頁がめくられる。


「そして、その障害として名前が挙げられているのが――セレナ嬢です」

「……わたくし?」

「あなたは財務、物流、穀物取引、それぞれの情報に接することができた。過去にも不自然な取引を指摘していたため、計画の発覚につながる可能性が高いと判断されていたようです」


セレナには覚えがなかった。

おかしな数字があれば、確かめていただけだ。


「そこで利用されたのが、リリア男爵令嬢でした」


リリアの肩がわずかに揺れた。


「王太子殿下への思慕を利用し、毒を入手できるよう誘導した。さらに同じ毒をセレナ嬢の私室へ持ち込ませた」


最高司法官が書類を閉じた。


「セレナ嬢を犯人にするために」





「リリア男爵令嬢。前へ」


リリアが証言台へ進んだ。


「改めて確認します。毒を飲んだのは、あなた自身の意思ですね」

「はい」

「セレナ嬢から命じられたことは?」

「ありません」

「アルヴェール公爵からは?」

「ありません」

「公爵本人、あるいは公爵家の者と、この件について接触したことはありますか?」

「一度もありません」

「では、毒はどのように入手しましたか」


リリアは指先を握った。


「その頃、知り合った人がいました」


一人の名を告げる。

審問官がすぐに資料を確認した。


「ヴァルディア側から提出された関係者名簿にあります」


リリアは俯いたまま続けた。


「最初は、アルベルト様のことを相談していただけでした。セレナ様が私を嫌っているように見えればいいと……そんな話をして」


一度、言葉を切る。


「その人から、少し具合が悪くなる程度の薬なら手に入ると聞きました」

「自作自演をするよう命じられたのですか?」

「いいえ」


リリアは顔を上げた。


「毒を飲むと決めたのは、私です」

「その人物から公爵の名を聞いたことは?」

「ありません」

「公爵の指示であなたに接触したと聞いたことは?」

「ありません」

「金銭を受け取っていたという話は?」

「一度も」


リリアはまっすぐ前を向いた。


「公爵様は関係ありません」


最高司法官はしばらく資料を確認していた。

やがて顔を上げる。


「以上をもって、リリア男爵令嬢毒殺未遂事件について、アルヴェール公爵を首謀者とした昨日の認定を撤回します」


広間がどよめいた。


「また、灰穂病および穀物市場への工作についても、ヴォルターならびにその関係者による関与が認められます」

「ただし」


その一言で、ざわめきが止まった。


「国王陛下殺害については、別途審理します」

「当然でしょう」


アルベルトが口を開いた。

皆の視線が上座へ向く。


「毒事件と父上の死は別です」


最高司法官が頷く。


「その通りです」

「父上が亡くなった部屋にいたのはセレナです。父上がセレナを召喚した記録もない」


アルベルトはレオンを見る。


「ヴァルディア皇太子殿下がお持ちになった証拠にも、父上の死に関するものはないのでしょう?」

「ないな」


レオンはあっさり認めた。

アルベルトの口元がわずかに緩む。


「でしたら、話は簡単です」

「いや」


レオンが言った。

アルベルトの目が止まる。


「簡単じゃなくなった」


レオンは一枚の紙を手に取った。

セレナに届いた、国王名義の召喚状。


「召喚状のことを調べた」


アルベルトの笑みが消えた。


「セレナ」

「はい」

「これを持ってきた男、覚えてる?」

「ええ」

「なら、よかった」


レオンは召喚状を審問官の前へ置いた。


「そいつを、見つけた」


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