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処刑まであと7日。悪役令嬢はもう何もしません  作者: すなな


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24/34

24- 処刑まであと2日

その夜。


セレナは王宮の一室にいた。

牢ではないが、扉の外には衛兵が立っている。自由に出ることは許されていなかった。

父がどこにいるのかも知らされていない。


明朝には審問が再開される。


今日、父には死刑が言い渡されかけた。

自分には終身幽閉。


アルベルトに婚姻を持ちかけられたときも、迷わず断った。


それなのに、大広間の扉が開いてレオンの姿を見た瞬間、張りつめていたものが少しだけ緩んだ。


戻ってきた。


約束通り。


「……会いたかったですわ」


口に出してから、セレナは目を瞬いた。


誰もいない部屋でよかった。

本人を前にして言える気はしない。

扉が叩かれた。


「セレナ様」


侍女が入ってくる。

手には小さな包みがあった。


「ヴァルディア皇太子殿下より、お預かりしております」


セレナは立ち上がった。


「レオンから?」

「はい」


受け取った包みには、焼き菓子と小さく折られた紙が入っていた。

開いてみる。


『ちゃんと食べろ。明日また会おう。 レオン』

「……」


もう一度読む。

それから焼き菓子へ目を落とした。


「……命令ばかりですわね」


一つ手に取って、ひと口かじる。

甘い。





レオンの前には、今日の審問で使われた資料が積まれていた。


「殿下、少しお休みになられては」

「いらない。照合は?」


側近が帳簿を開く。


「ヴァルディアで押収した記録と、こちらで提出されたものに食い違いがあります」

「どこ?」

「日付と送金元です。公爵家から支払われたとされる金額と同額の送金が、その前日に別の名義から行われています」

「名義は?」

「ヴォルターが使っていた商会の一つです」


レオンは帳簿を引き寄せた。


「毒は?」

「リリア男爵令嬢が入手した経路は一致しました。セレナ嬢の部屋に持ち込まれたものも確認中です」

「分かった」


次に手に取ったのは、今日の審問記録だった。

レオンは読み進めていく。

途中で手が止まる。


「……全部、公爵がセレナを使ったことになってるな」

「はい」


毒事件を仕組んだのは公爵。

娘の冤罪を王家への攻撃材料にし、最後には国王まで殺害した。

けれど、毒事件に公爵は関わっていない。

レオンは国王殺害に関する資料を抜き出した。


「ここも違うとしたら」


側近が顔を上げる。

レオンは召喚状を手に取った。


「公爵がセレナを送り込んだんじゃない」

「では?」

「誰かがセレナを呼んだ」


国王名義の召喚状。

指定された部屋。

そこにいた、すでに殺害された国王。

そして、直後に現れた侍女。


「この使者を探して」

「承知しました」

「セレナが王宮に入ってから拘束されるまでに関わった人間も」

「全員ですか?」

「ああ。門番、案内役、衛兵。それからセレナを見つけた侍女」


側近が書き留める。


「朝までに」

「承知しました」


側近が部屋を出ていく。

レオンは召喚状を机に戻した。

そして、次の資料を開いた。





扉が閉まった。

直後、激しい音が響いた。

アルベルトが机の上を薙ぎ払った。

書類が舞い、インク壺が床に落ちる。


「……あと少しだったのに」


椅子を蹴る。

倒れた椅子が床を滑った。


「あと少しだったのに!」


終身幽閉。


あと一言だった。


それで終わった。


なのに、扉が開いた。


「なんで戻ってくるんだよ!」


今度は机を蹴った。

重い机がわずかに動く。


「ヴァルディアに帰ったんだろ!」


だから急いだ。

レオンが戻る前に終わらせるために。


父を殺した。

セレナを呼び出した。

証拠も揃えた。

審問まで早めた。

全部うまくいった。

本当に、あと少しだった。


「邪魔ばっかりしやがって……!」


床に落ちた書類を踏みつける。

何枚かが靴の下で破れた。

そのまま何度か踏みつけて。

ふと、止まった。


足元に国王殺害の調書があった。

アルベルトはそれを見下ろす。

拾い上げた。

毒事件は崩れるかもしれない。

灰穂病も、小麦も。


「……別に、いいか」


アルベルトは倒れた椅子を起こした。

座る。

もう一度、調書を読む。

父が死んでいた部屋にいたのはセレナ。

国王がセレナを呼んだ記録はない。

召喚状は偽物。

公爵へつながる証拠も用意してある。

明日は、国王殺害だけでいい。

アルベルトは破れていない書類を拾い集め、机へ戻した。


「これだけ残せばいいんだ」


公爵は死刑。

セレナは幽閉。


結果は同じだ。


アルベルトは床に転がったインク壺を拾った。


「片づけさせないと」


明日の朝までには、部屋を元に戻しておこう。


誰かに見られたら面倒だ。


アルベルトは呼び鈴へ手を伸ばした。

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