22- 処刑まであと2日
協議は長く続いた。
やがて審問官たちが席へ戻る。
広間のざわめきが静まった。
「審議の結果を申し上げます」
セレナは顔を上げた。
「アルヴェール公爵。一連の事件の首謀者と認め、反逆罪ならびに国王陛下殺害の罪により死刑。公爵家は取り潰し、爵位を剥奪。領地および財産は王家へ接収するものとします」
「お父様……」
父は何も言わなかった。
ただ、まっすぐ前を向いている。
「続いて、セレナ・アルヴェール公爵令嬢」
セレナは姿勢を正した。
「国王陛下殺害への関与は極めて濃い。しかし、幼少期より公爵の強い影響下にあったこと、また先の毒殺未遂事件については無実であったことを考慮し――」
「お待ちください」
アルベルトの声が響いた。
審問官が言葉を止める。
上座からアルベルトが立ち上がった。
「セレナについて、一つお願いがあります」
「殿下?」
「彼女まで罪人として人生を終える必要はないと思います」
広間がざわつく。
セレナはアルベルトを見た。
「父上を失ったことは、僕にとってもつらいことです」
アルベルトの声は落ち着いていた。
「ですが、セレナ自身が望んで公爵の計画に加わったとは思えません」
「殿下……」
誰かが小さく呟いた。
「公爵の影響から離し、王家の監督下に置くべきです」
審問官が尋ねる。
「どのような形をお考えでしょうか」
「僕が責任を負います」
アルベルトは迷わなかった。
「セレナと結婚します」
大広間がどよめいた。
セレナは言葉を失う。
「殿下、しかし……」
「彼女は長い間、公爵のもとで生きてきた。ならば、そこから離せばいい」
アルベルトがセレナを見る。
「僕の妻として王家に迎えます。その場合、彼女の罪は問わないでいただきたい」
周囲から声が上がる。
父を殺されたばかりの王太子が、その事件に関わったとされる女を妻に迎えようとしている。
「なんという……」
「そこまでなさるとは」
セレナは唇を噛んだ。
「お断りいたします」
声が止んだ。
アルベルトが瞬く。
「セレナ?」
「あなたと婚姻するつもりはございません」
「……」
「罪を免れるためであっても、お受けいたしません」
アルベルトはセレナを見た。
怒るでもなく、説得するでもない。
「……残念だな」
寂しそうに笑う。
けれど、その声は妙にあっさりしていた。
アルベルトはそれ以上何も言わず、席へ戻った。
セレナはアルベルトを睨みつける。
アルベルトは満足そうに微笑み返した。
◇
審問官たちが再び言葉を交わす。
やがて一人が立ち上がった。
「では、改めて審判を申し渡します」
広間が静まり返る。
「アルヴェール公爵。反逆罪ならびに国王陛下殺害の罪により、死刑」
父は静かに前を向いていた。
「アルヴェール公爵家は取り潰し。爵位を剥奪し、領地および財産は王家へ接収する」
「……」
「続いて、セレナ・アルヴェール公爵令嬢」
セレナも顔を上げた。
アルベルトだけが、穏やかにこちらを見ている。
審問官が書面へ目を落とした。
「国王陛下殺害への関与、ならびに一連の反逆行為への関与について――」
一拍置く。
「終身――」
大広間の扉が開いた。




