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ステファン・ストロイエという男 ②


 別邸へと追いやったあの子供はまだ生きている。

ジルが早々に子供を死なすわけがない。


いくらジルが大切に育てようと私はあの子を認められない。そうなると正しくストロイエ家の色を持った子供が必要となる。

私は妻に言った。愛人との遊びは暫く禁止すると。案の定、マリアは怒った。しかし、誰の子か分からない子をまた産んでもらっては困るのだ。愛人との遊びを止められないのならば私が愛人を持ち、その者に後継者を産んでもらうしかない。マリアに言うと渋々従った。私としてもマリアと閨を共にするのは苦痛でしかない。仕方なく酒と媚薬の力を借りてなんとかマリアが妊娠する事が出来た。

良かった…。これで義務から解放される…。



 産まれた子供はストロイエ家の色を持っていた。

正しく私の子供だ。この子を次期当主とするのだ。


 私は子供の為にも家にいるようにした。私の子供の頃のように寂しい思いをさせたくなかった。マリアがあの通りの分、私が側にいようと思ったのだ。

もちろん、魔の森の管理はある。しかし騎士団からの報告によると魔獣の増加傾向はないとの事。

ならばこの子と共に居よう。例え昔からの使用人達から諌められようとも。


 マリアは出産から解放されると今まで以上に遊んだ。愛人を屋敷に連れ込み、ドレスや宝石に散財し、夜会に頻繁に出ては帰ってこない日も多かった。だからこそ、これまで以上にギルバートの側にいようと決意した。



 そんな日々を過ごしていたが私の孤独は深まるばかりだった。決定を下さねばならぬ事が多々あり、側近はいてもジルの様に頼りになる訳ではない。

マリアは好き勝手気儘に過ごし、ギルバートは少しずつ大きくなり、当主教育を始めた。


 そんな中、私は出会ったのだ。

男爵家の次女であるアナスタシアに。彼女は儚げな見た目によらず豪快な所があり、よく笑いよく怒り逞しく、善良であった。

私は彼女に恋をした。彼女と居ると長く私の中にあった怒りや悲しみが流れていくようだ。このまま彼女と共に居たいと考えるも、侯爵家当主が側室に迎えるにしても男爵家では階級的に難しい。何処かの家の養女にしてからとも考えたが苛烈なマリアが許すわけがない。シアを愛人という立場に落とすのも許せない。

悩んでいた最中、マリアにアナスタシアの事がバレたのだ。

案の定、マリアは烈火のごとく怒り狂いシアを殺すとまで言い募った。

勝手なものだと…、自分は数多いる愛人との逢瀬を楽しんでいるのに、私には1人の女性も許さないのかと呆れた。

しかしマリアの性格上、やると言ったらやるだろう。…となると別れるしかないのだろう。

別れるからシアには手を出さないようにと言い聞かせて私はシアと別れた。


シアと別れた後は何もする気にはなれなかった。もう何もかもどうでも良かった。ギルバートが早く成人して引退したかった。その時が来るのを指折り数えて待っていた。



……もう私には何もないのだ……。




 ある日城に呼ばれて不正の事実を突き付けられた。

(ああ…、私は1番信頼していた側近にも裏切られていたんだな…。あぁ…疲れた。これで楽になれるだろうか……。)



 その後シアの存在をトニーが守ってくれていた事、私を裏切った訳ではなかった事が判明した。


色々な事が明らかになった。私の未熟さから視野が狭くなっていた事、見たい物を見たいように見ていた事。憑き物が落ちたように色々な物が見えた。

目の前にはいるのはギルバートと私があれ程憎んだアルフォンスだ。ギルバートはいつの間にか大きくなり私を冷たい目で見ている。

隣にいるアルフォンスは…、目が父にそっくりだった。間違いなくストロイエ家の顔立ちだった。

しかし父そっくりの目は他人を見る目で私を見ていた。何の熱もない目で無関係だと…。



 私は当主を降り、ギルバートが当主となった。私の不甲斐なさでトニーが不正をせざる得なかった事を鑑みて、トニーの罪は全て私が責を負う事としたのだが、私達の処分はギルバートが下した。




「ステファン様!ゆっくりしてると日が暮れちゃいますよ!」

「あぁ…、そうだな。少し急ぐか。」

「ははは、ステファン様が素直に急ぐなんで珍しいですね!でもそういう素直な所が貴方の良いところですよ。」

「……悪い所ではないか?散々騙されたり都合よく使われたり…。さっぱり良い所ではないぞ?」

「いいえ、貴方は昔から素直でした。その素直さで皆さんに可愛がられていたんです。アーサー様もよく自慢してましたよ。素直で人の話をよく聞くから飲み込みが早いって。俺は小さい頃から貴方の側にいたからどんどん進む貴方に置いていかれないように必死でした。

まぁ、途中から素直が拗れて意固地になっちゃてましたけどね。」

「……すまん。でも見捨てないでくれてありがとう。」

「ははは!そういう所ですよ、俺がどうしても貴方の側にいようと思ったのは!

さて!アナスタシア様も待ってますから本当に急ぎましょう。この魔獣は美味しいんですよ!」

「あぁ、シアにもだが屋敷の皆にも食べさせたいな。皆喜ぶだろうか…。」

「…貴方のそういう笑顔は久し振りですね。」

「……トニー、泣かないでくれ…。これからは私がまた意固地になったら殴ってでも教えてくれ。私は君の言う事ならば信用しよう。」

「…俺のことも信用しすぎちゃダメですよ…。ちゃんと自分で考えて幸せになって下さい。」




 父上、不甲斐なく父上の様に立派な当主にはなれませんでした。子供達にももう会えないでしょう。それでも今私は幸せです。


ギルは両親が大嫌いです。特に母親。父親も情けなくて小物感があって嫌いです。でも小さい頃の一緒にいてくれた記憶が心の奥底にあって、最後の最後、すっぱり切ることが出来ずに父親と一緒に行く事を希望する人達とシアさんを一緒に送り出したのです。

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― 新着の感想 ―
どんな事情があろうと生物学上の父ステファンが息子たちにまともな謝罪も償いもせず 愛人や家臣達と仲良くキャッキャウフフで幸せになるのは納得いきませんね… 侯爵家当主としてのプレッシャーからも解放されて楽…
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