心象って大切…。
なんか僕達が分からないまま、話が進んでいく。
待って!今は僕が長年の鬱憤を晴らす時なんじゃないの?
それに…、何を言われても諦めたような情けない顔をしていた生物学的父がシアという人の名前を聞いた途端、別人のように反応した。生物学的父にとって大切な人のようだ。僕は大丈夫。むしろ聞きたい!僕、野次馬な所があるから!
…でも、ギルは聞きたくないんじゃないかな…。腐ってても親だし…。
ギルの手をギュッと握ると、ギルはこちらを向いてニコッと笑い、手を握り返してくれた。
「大丈夫ですよ。兄上がドクラガン王国へ行っていた際、色々僕も調べたりロバート様から話を伺っていたのです。なので全て知っております。」
なんて事だ!知らないのは僕だけか!
じゃあ心置きなく野次馬ろう!
さあさあ!何があったのか!早く教えて!
「何よ!まだあの女の事を想ってるの?!バッカじゃない?あの女は今もそれなりの所で私を馬鹿にした事を後悔してるんじゃない?」
「何を!!私がシアと別れれば彼女には手を出さないと約束したじゃないかっ!!」
「あははっ!だからあんたはバカなのよ!お坊ちゃんで人を疑う事をしないで!
そんな約束守る訳ないじゃない!この私を馬鹿にしたんだから!!
そんなんだからあの女が痛い目をみるのよ!
あんたのせいよ!あんたが私を裏切ってあの女を大切にしたから!!」
ははぁん…、痴情のもつれか?生物学的父が生物学的母を裏切ったと…。
「先を裏切ったの君の方だろう!婚約していた時も結婚した時も!常に何人もの愛人を側において!穢らわしい!この結婚を違える事が出来たならどれほど良かったか!」
いや…、先に裏切ったのお前か…。
「だから自分も愛人を作ったと?!」
「愛人などと彼女を呼ぶな!お前の愛人達とは違う!彼女は私が心から愛した人だ!お前とは違う!」
「同じじゃない!私と結婚してるのに他の女と関係を持った!私を馬鹿にして!あんたは一生私に傅いていれば良かったのに!あんな女に本気になって私を裏切った!あんな女は娼館に売られてせいぜい男に媚を売って生きるのがお似合いじゃない!あんたに媚売ったようにね!」
「なんて事を!娼館に売ったのか?!彼女を?!」
「えぇ、それも娼婦にとっては待遇の悪い所にね。しかも特殊性癖持ちがよく来るって評判の!」
ニンマリといやらしい顔で笑う。
「助け出さなきゃ!すぐにでも!」
「あははっ!どうやって?何処にいるかも分からないのに!しかもあんたは前侯爵で領地から出れないんでしょう?こうしてる間にもあの女は日々汚されていくのよ!ざまあみろ!
散々他の男に汚された女を迎えに行くの?!」
我が生物学的母ながらキツイ。何これ……。さっきより生物学的父への同情が高まってくる…。
最悪だな、この女。
「あぁ。それでも良い。彼女を…、シアを助けられればそれで良い。例え私を恨んでいても。」
おぉぅ…、生物学的父がここで男を見せるとは…。
心なしか今までより男前に見えてきた…。心象風景ってこんな感じなんだね。
生物学的母が悔しそうに睨んでいる。
ここでギルが僕と手を繋ぎながら前に出た。
「父上、大丈夫ですよ。」
生物学的父母は僕達がいる事に気が付いてなかったからか、驚いてギルを、次いでなんでお前がここにと憎々しげに睨みながら僕を見る。
「ギルバート…、何故此処に…。」
「そうよギル、何故貴方が此処にいるの?」
ハッとしたように生物学的母が、
「それより貴方が次期侯爵となるのでしょう?この母を見捨てないわよね!」
ギルは生物学的母を見る事もせず、生物学的父に
「父上、アナスタシアさんは大丈夫です。娼館に売られそうになった時、貴方の側近のトニーが阻止しております。その後、トニーが娼館への支払いとアナスタシアさんの生活を支えておりました。そのお金は領地からの不正で得たものでしたが…。
トニーはアナスタシアさんが父上にとって大切な方だと分かっていたからこっそり保護していたようです。ただ、母上の苛烈さを考えて今は教えるべきではないと判断していたようです。」
おぉぅ…、トニーが有能…。不正で得たお金でだけど…。まぁ、一応主人の事を考えていたんだね。
生物学的父がホッとしたように疲れたように微笑んだ。
「そうか…。無事か。トニーが…。」
次いでギルは生物学的母に目を向けた。
「見苦しいですよ、母上。自分の生みの親がこんなに腐っているとは…。穢らわしい。」
ギルが嫌悪の眼差しを向ける。
あれ…、このままじゃ僕じゃなくてギルが鬱憤晴らしそう。
まぁ、いいか…。ギルも生物学的父母には苦労させられてたし。どんどん鬱憤晴らしちゃえ〜!!
ギルが詰まるようなら僕が援護射撃するから任せとけ!!




