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chapter 5
気がつけば、息子はもう小学二年生になっていた。
そのあいだ、僕は何度も仕事を変えた。どれもバイトで、月収は平均して十万から十五万ほど。まったく話にならない額だった。
貯金は三千円もない。詩織のパート収入で、どうにか息をつないでいるような暮らしだった。
詩織がパートから帰ってくるたび、僕に向けられる怒りが、言葉にされなくても伝わってきた。夫婦仲は、もう冷え切っていた。
このままでは捨てられる。そう思って、小説を書き始めた。また同じ頃、息子とキャッチボールを始めた。
我が子を野球選手にして、楽な暮らしを手に入れよう――本気で、そんなことを考えていた。
「タッちゃん、パパを甲子園に連れて行って。お願いだ。お願いします。金がないんだよ。このままじゃまずい。我が家の金庫を守るために、な、頼む」
半分冗談のようで、半分本気だった。
達也は、そんな僕を黙って見つめていた。
「投げてごらん」
僕が投げたゴムボールを受け取ると、達也はゆっくりと振りかぶった。
小さな足が地面を踏みしめる。
――しゅっ。
ボールはかすかな風を切り、まっすぐ僕の胸元へ戻ってきた。




