第22話 長屋の落日2
「みんな作戦は無しだ面倒は、お掛けしたくなかったが、あの様子では人々だけのの救出は難しいようだ。神様にお願いする。
みんなっ!今すぐ黙座してくれ何があっても良いというまで目を開けるな守護霊のお前達もだぞ目がつぶれるからな、それでは神様を召喚する」
「はい」
守護霊4人と刀鍛冶衆4人は、その場に、あぐら座りをして目を閉じた。
その間も、じわりじわりと悪魔に憑依された住人たちが鬼の形相で、こちらに向かってくる。
「うぅーーーっ」
「あああぁーーーーー」
城一郎は両手の指を組み合わせ榊流・神様召喚の呪文を唱え始めた。
『かみさま、いつもありがとうございます』
「イザ・ヤア…」
フーっと息を吐き、指を組み神に助けを求めるべく早口で呪文を唱える。
「へいぺいれい ふないなほい さーたるまん ぎーたるまん とうじんだんだんね わくぐーあくらーせつ りゅーごーしょーきーとう
あっきゃーのんっ!かむい おーぺれっ!!七福神様 招来っ!!」
長屋の空から
「カーン!」と鐘の音が聞こえたかと思うと
大きな金色の光の玉が北東から物凄いスピードで飛来してきた。
―ビュンッ
目を瞑ることを忘れた瀬津と艶が見上げると金色の光は二人には予想外の宝船で七福神様達が乗っていた。
「城一郎よ、瀬津、艶、赤者、青者なぜ、もっと早く、わしらを呼ばん?」
「はっ寿老人様・・・」城一郎が返答に困っていると
「みずくさいのぉーなあー弁天よぉー」
宝船の上で寿老人がスッパイ顔をした。
弁財天様が言う。
「榊原は代々遠慮しくさる無作法者ばかりじゃ、命を落としても、まだ遠慮しとる、このたわけっ!」
福禄寿様が割って入った。
「まぁよい、そう攻めるでない・・・とは言え、ないがしろにされるような憶えもないぞ榊原、たまには遠慮のう頼れや」
「ハハァーーーーありがたき幸せ・・・」
布袋様が言う
「しばらく暴れとらんのでな、やらせてもらうぞ」
船からぴょんと長屋の屋根に飛び移ると布袋様は力任せにトタン屋根をバリバリと剥がし離れた野原に投げ飛ばした。
長屋の内部が丸見えになり、おかしな悪魔崇拝の置物や小ぶりの掛け軸が各部屋の、其処かしこに見受けられ
良くない「もの」や「瘴気」が溢れていた。
すると
「そうれっ!」
毘沙門天様も飛び降りるが早いかムチで悪霊付きの住人を次々と叩きのめし気絶させだした。
―バシッ バシッ!バシッ!
大黒天様と恵比寿様は船の上で何やら術をかける相談を始めた。
「面倒なことせず下僕の悪魔だけ消滅させよう、おーい弁天よ」
「なんだい?」
「こっち来て力貸せや柴光で片付けようぞ」
なんと素戔嗚尊様・シバ神様の力を借りるらしい。
弁財天様はジャランと琵琶をひと振り鳴らすと身をしならせ
「あいよ」とニッコリ笑った。
柴光とは分かりやすく言うと粒子の単位で悪魔・悪霊と人間を判別し悪だけを一瞬で焼き尽くす、ナノテクノロジーだった。
柴光で強烈に輝く金色の宝船は長屋の頭上で止まると、
ゆっくりと降りてきて夕方で薄暗くなってきていた長屋エリアを柴光で朝陽のように照らした。
それを見た悪魔に憑依された住人たちは皆、各々悲鳴を上げて刀を落とし目を抑えて地面に倒れ、苦しそうに悶え苦しみ動かなくなると、住人の背中や口から黒い霧が出てきては蒸気が消えるように見えなくなった。
「うぎゃぁーーーーっ!」
「うううっうわぁーっあああ・・・」
霊感の無い者に見えたとしても光の玉に見えている神様達は目玉をギョロリとして周囲を見回すと、そのまま船に乗り込み鬼屋アパートの現場上空に移動して浮かんだまま動かず留まった。
住人たちは命に別状無かったが目を火傷していた。
不思議な事に地面に落ちた古い刀は、すべて真ん中からボッキリと折れていた。
我に返った城一郎が言う
「よし、みんな目を開けて良いぞ住人たちの手当てが必要だな、よしバスを使おう・・・お前達、怪我人に手を貸してやってくれ・・・」
刀鍛冶衆は立ち上がると自分の刀を帯に収め周囲に倒れている住人たちの救助に応った。
城一郎はヘッドセットの無線スイッチを入れると菅原に怪我人を長屋から運び出しプレハブで手当するよう要請した。
「今すぐです、お願いいたします」
「了解、長屋にすぐ向かいます」菅原が即座に対応した。
あちこちから救急車のサイレンが無数に響きだした。
その頃、アパートの現場では臨時の聖水プールが出来上がっていた。
場内アナウンスが入る。
「こちらは保安部です。プール作成、大変ご苦労様でした。大変申し訳ありませんが作業員の方々警察官の方々消防士の方々は係員を除き、すべて非常線の外まで速やかに避難願います。
一般住民の怪我人が多数出ました、菅原組は至急プレハブ横のバスに怪我人の収容をお願いいたします。
これより魂散華の儀、続いて解体の儀・抜刀演舞へと祭りは進行致します。
撮影、録音はドローン監視の他に警視庁の公安部による厳しい取り締まり対象となりますので警察官や消防士の方々、一般の作業員の方たちは隣近所で、お互い注意し合っての撮影禁止、御協力を重ねて御願い申し上げます。
なお私たち国土交通省・保安部は公安官立会いのもと逮捕権の執行、及び武器の所持、使用を許可されております。予め御了承ください」
静華が声を掛けた、現場で二度目の魂散華になる。
「和華、お願いします、一人でも多く、お連れしてください」
「はい、お姉様」
神座には柱が立てられ、しめ縄が張ってある。
その先では政一郎が守護の護摩焚を相変わらず続けていたが少し疲労の表情があったため一時休憩となった。
丁度その頃、武藤刑事の携帯が鳴った、まだ入院中の刑事、鈴木からだった。
「あっ、今大丈夫でしょうか」
「ああ、どうした」
「はい、あの小辻さんの事なんですが・・・・」
「うん・・・」
「彼女に今日アパートが解体されると話したら是非、見学したいと言うのですがダメでしょうか」
「なんでだ小辻は、どんな状態なんだ?」
「体は問題ないみたいです、ただ精神的にやられてまして
彼女、先日、辞表提出したんです」
「はぁー?聞いてないな・・・」
「はい、それが茂木副署長のところで辞表、留まってまして
俺、何にもしてあげれないし、そしたら解体を見たいって、
これって何か彼女が立ち直るキッカケにならないものかと思いまして・・・」
「うーん・・・解った、小辻は今、病院なんだな?」
「はい」
「俺と小林が迎えに行くよ離れた場所からしか見れないが色々見られるから今からでも遅くない、すぐに急行するから外出の支度して外に出て待つように小辻に言ってくれ」
「本当ですか、あーありがとうございます、すぐ外出の準備して外で待つように伝えますね、ありがとうございます」
「お前の為じゃねぇよ、お前は安静にしてなきゃダメだからな」
「はい・・・」
「そっか辞表出してたんだな・・・パトカーで行くからな、じゃ」
逢魔ヶ刻の街を1台のパトカーが猛スピードで病院に向かった。
武藤が思う
『小辻ごめんな・・・全部、バカな俺の責任だ・・・』
激しくサイレンを鳴らし武藤の運転するパトカーの助手席で長い付き合いの小林刑事は彼が静かに泣いているのを初めて見た。




