第20話 力をあわせて
大きなビニールテントをひっくり返して強力な接着剤や速乾性のコーキングを駆使して
何とか応急的に鉄パイプを組んだりして台座としてプールを作り、道路の消火栓から水を引き入れ、
ご祈祷塩を混ぜたあとアレックスのお祈りをして聖水を作る。
陽暮れまで時間は無いが『人数』で勝負だ。
現場は火事場のような忙しさになった。
前代未聞の消防車と聖水を使っての悪魔退治作戦が始動。
「静華さん、聞いてますか大場です」
「はい」
「差し出がましいようですが悪魔は弱い者から標的にします。
尾形君と式さん、大丈夫でしょうか?」
「はい、尾形君には下がっていただいて式さんだけ残っていただこうと思います、聞いてる?尾形君」
「えっ!下がっていいんですか、じゃすぐに下がります」
式は思った。
『え!じゃ灯明の番、俺ひとりかぁーまぁ何とかなるかな、
でも蜘蛛だの妖怪だの、やっぱ怖ぇーなーアレ』
静華は
「アキラ」
「はい」
「アキラはね火の心配だけしていればいいの」
「了解」
『また心読まれた』
大場がヘッドセット・オンで言う
「静華さん、ひょっとしたらですが悪魔に引っ張られて
『魔王ノルデ』もやってくるかもしれません注意してください」
「えぇ大丈夫よ、今日はシバ神様も御不動様も
見守ってくださっているわ」
「はい、そうですね」
「もし・・・」
「はい」
「あいつが来るなら手間が省ける、父上も想いを遂げることができる、
日本の神々と我ら四天王が一丸となって消滅させる。
来なくても、いずれ探し出して思い知らせてやるわ」
「そのときは是非、同席させてください」
「またまた無理しなくていいのよ」
「無理なんて、私も敵を討ちたいのです」
「それもいいけど次の映画、撮影見学に行きたい」
「はぁー、お安い御用です」
「和華もよ?あと母も」
「了解です」
「おーい菅原だけど、みんなに筒抜けの世間話どうかと思うよ」
「いやらしいっー」
「やらしいって・・・」
もうすぐ陽が沈む。
「カーン、カーン、カーン」神楽鉄板厘の小気味よい音が現場に鳴り響く・・・
「ああーーーーあああーーーー・・・・・・」氏子衆のコーラスも続く
黒い瘴気を氏子衆が吸い込んだりしないように青龍がコマメに動き回り覇気を吹付け消滅させていた。
龍神様、頼りになります。
神座では宝剣の先で足元に円を書き、剣を台座に置くと
和華が懸命に指を組んで榊原家に伝わる呪文を唱えていた。
「発志っ!動っ!かみさまぁー!」
―カン!カン!カン!ドンドンドンドン! カンッ!
―あああ あーああーーーーーあーあ あーーーーー
金剛力士様は腰を落とすと四股を踏み、瘴気こと牛鬼を踏み潰し退治していた。
「むぅっ!」
―ズシンと地面に振動が伝わってくる。
その周りを付かず離れず青龍が覇気を口から吹いてお手伝いしている。
周囲の人々には、三本木の根元で上がり下がりする光の玉と周囲をぐるぐる動き回る光の玉しか見えていない。
金剛力士様と青龍の姿が見える者は霊視能力のある人間だけだった。
その様子を静華と、剣一郎、城一郎が見守っている。
静華は
『何か忘れている・・・なんだ?・・・』
すぐそばの地面に小さめの祠と半分壊れた木箱が転がっている。
木箱から紙幣がはみ出して見えた・・・
古い紙幣もあるが現代の紙幣もある。
『この金は誰が埋めた・・・頭取の家族か?・・・』
静華のテレパシーが発動した。
「しまったあっ!父上、向かい側の長屋に頭取の家族や一族の人々が残っている!危ないっ!」
「そうか、うっかりしてた、おい青鬼・赤鬼、瀬津、艶!どこにいる?居るんだろ?」
どこにいたのか、なみ彦の隣に四人の男女が姿を現した。
「はい、お呼びでしょうか」
皆、城一郎に、お辞儀をしている。
「見ていたな?」
「はい」
「向かい側に長屋が数件あるが、そこの人たちが危ない、助けに行くぞ刀を持て」
「ハッ、わかりました」
「おーい刀鍛冶衆、頭領以外の四人、柴刀持ってちょっと来てくれ」
「はい、了解しました」
「じゃ静華、何かあったら呼ぶかもしれんが、ちょっと行ってくるぞ」
「わかりました、父上気をつけて」
「おう、まかせろ俺は既に死んでいる」
「死んでないわよ、なみ彦の身にもなってねっ!」
「ああ、そうだった、気をつけるよ」
「兄上!」静華が護摩壇に陣取る政一郎に促した。
「わかった、長屋だな」
「はい」
目に見えぬ四人と刀鍛冶四人、なみ彦こと城一郎の白装束、
護摩壇前の政一郎の守護法力。
皆は、戦国侍の如き立ち振る舞いで
現場向かい側、無乗庵裏手の長屋に急いで向かった。




