第10話 筝黙
銀行の事件の後、式は、思った以上に疲労したので休息の時間を貰い事務所に戻って仮眠を取ることにした。
結局、ウトウトはするものの、うまく眠れず夜、アパートの現場に向かった。
「じゃ入りますね」車で検問を通る、パトランプが眩しい。
アパートは建っている。
それを横目で見ながら車を停めた。
『先日の奥さんに取り憑いていた魔物タイガが言っていた主・・・
まだ此処に居るのかな?もう逃げ出したんじゃないか・・・
あっ結界刀で封じ込まれてるのか?あの日、和華さんが倒れるほどの儀式やったんだもんな・・・』
「黒い犬が息を潜めて黙するかぁ・・・」
夜20時、結局、上手く眠れずに現場プレハブ楽屋に、まず顔を出した。
尾形が一人で休んでいた。
「おはよう尾形君」
「おはようございます、これいかがです?」
見るとハンバーガーにコロッケ、アイスコーヒーと栄養ドリンク、コロッケは式の大好物!
「あ、空きっ腹で胸焼けがひどくてさコレ食っていいの?」
ストレス逆流中
「はい、さっきウチの会社から大量差し入れで・・・式さんの好きそうなの寄せておきましたよ」
「おーサンキュー、あっエビバーガーもあるじゃん、やった」
「式さん」
「ん?モガモガ」
「顔色悪いですよ昼間あわや銀行大爆発だったって、大変だったんでしょニュースでやってますよ・・・大丈夫ですか」
「んーモシャモシャ・・・へぇーそうなんだ・・・」
「いやいや鏡見ました?目の下クマ作っちゃって今日もういいですから帰って休んで下さい」
「まぁそうモグモグ・嫌うなよ独りで居たくないんだ、昼間は夢中だったけど戻ったらすげぇ疲労と恐怖でさ・ゴクゴク・・・帰るならココで寝るほうがいいよ」
「そうでしょうねぇ現場が、あの荒れようじゃ相当大変だったんでしょうね」
プレハブの窓から外の現場を見ると作業用の投光器がたくさん点いています。
「なんだ誰もいないのか?」
「はい、昨日までは警察官や消防の人なんかがサービスで居たんですけど皆、昼間から銀行の方に行っちゃって封鎖の警官と警備員が居るだけです」
「モグモグ・ふぉーーん・・・あれ?でも何か誰かいるんじゃないか、
ほら、あの公園跡のところ何か、ゆらゆら動いてるぞ?ホラ、うっぷぅ」
式は指を差して尾形に同意を求めた。
「えー?・・・どこです?・・・またぁー誰も居ませんよぉ」
公園は既に遊具解体が終わっていて更地になり聞けば
今日、昼間に少し地面を掘ってみようと言うことで公園の地面と少しずれた隣の地面を掘ると、まもなく遺骨が、どっさり出てきたのだそうだ。
祭師不在のため、すぐに戻して作業は中止、同時に銀行の騒ぎがあったという・・・
「尾形君、お前ちょっと行って見てこいよ」
「えー?」
「やめておいたほうがいいな!」
突然、窓の外を見ていた二人の背後で声がして悲鳴を上げた。
「うわあああー!」
「うわあああ!あ、なんだ・・・静華さん驚かさないでくださいよぉ、も、びっくりしたぁー」
「お疲れ様です」と尾形。
「ん、早目になってさ、あしたみんな来るからな一応ちょっと見に来たんだ・・・コレ食ったり飲んだり、ヨイ?」
「えぇ構いませんけど・・・あの動物食、大丈夫なんですか?」と尾形。
「えー、ダメだ、だが私は破戒者だから多少はヨイのだ、おエビ!みんなには内緒だぞ」
「はい」
手を合わせて静華さんは
「感謝致します、いただきます」と言った。
式がニヤニヤして、その様子を見ながら栄養ドリンクを飲んでいると・・・
「あれな・・・アキラ・・・」
「え?」
「ほら、そこのゆらゆら・・・100年も埋まってたんだ
虫でもガスでも出てくるだろう・・・憂いたっぷりの霊なんかもな・・・モグモグ・・・かわいそうにモウ妖怪みたいになってるわ、ングング・・・」
「はぁ、やっぱりあれ何かなんですね」
「うん、これから毎日、何か見えるはずだから注意してね、ング・・・
ほら、おでこトントンしたから見えるからね」
「はぁ」
『そういえば、さっきから何かココにもいるなぁ・・・誰だ?』
「それとね尾形君も、あした大方、決着付くから、明日は二人で護摩壇と御燈明の火が消えないように祭りの間ずっと番してくれ、雨や風、大丈夫だとは思うけど、とにかく火が消えないように二人で頑張って欲しい・・・モシャモシャ」
「はい」
「刺繍の入った作業着、御守り忘れないように、あした大変だから、ここの畳で二人共もう寝たらどうだ・・・ん?なんか悪あがきしてるな・・・」
『ウウウワアアー、モアアアーワンアー、モアアア、ウウウオー』
大勢の人間が大声を上げているのが現場から聞こえてきた。
「静華先生!あれ、何でしょうか?」尾形の顔色が青くなった。
「あれはな多分、悪魔が逃げようと、もがいてるのかもな」
「ほっといて大丈夫なんでしょうか」
「心配いらん、ま、何か実害があるようなら連絡してくれ、じゃ帰るからね」
「えぇー?せんせぇー・・・式さんも、なんで笑ってるんですか」
「なぁーにが『しぇんしぇー』だ情けない声出すなよ、静華さんが大丈夫だって、おっしゃってんだから、いいじゃないか」
『尾形が不安なのは当たり前だと思います。
それほど気味の悪い声がハッキリと聞こえています・・・』
『ウウウオーーー』
「それじゃひと周りして帰るから、あしたヨロシク」
静華は、さっと現場の様子を見てパトカーでホテルに帰って行った。
「式さん、なんか落ち着いてますね何かあったんですか」
「いいやぁもう覚悟決めたのさ、昼間な・・・」
「はぁ・・・」
いよいよ明日、本番。




