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JOLENEジョリーン・Y字路の女神  作者: オブチアスマ
最終章 大団円へ

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第9話 トラブル・イン・バンク

 式は何事かと思い奥の物置から飛び出した。

すると地響きに驚いた女子行員たちがザワザワと響(どよ)めき始めた。


店内にはコレといった異変は感じられません。式がキョロキョロしていると

和華が刀を抜いて右手に持ち、鞘(さや)をベルトに差しサングラスをして

玄関の所に立っておりました。


『和華さん、どうするのかな・・・』


すると支店長室に居る静華が式を呼んだ。


「アキラァーッすぐ来てくれ!」


「はいっ」

式は脚立(きゃたつ)を抱えたままカウンター内に入って行き奥の支店長室に向かった。


次いで武藤が支店長室から飛び出してきて大きな声で指示を出した。


「みなさん店の外に避難してくださいっ!おい警官たちも今すぐ外に出るんだ!ガスだっ!ガス漏れだっ!!退避っ!!」

どこかに電話しながら武藤は、みんなを誘導した。


嘘から出た真(まこと)。


式が支店長室へ行くと強いガスの臭いがした。


『えっ?クサイ・・・』


窓を見るとサッシごと外されて床に置かれている。

武藤が外したようだ。


「アキラ、すぐガス会社に連絡して都市ガスの元栓を止めてもらって、できる限り対応して」

静華は支店長の救命活動をしていた。


支店長は聖水がかけられたのか胸のあたりが濡れており

周囲には大量の塩が撒かれていた。


 式は前にあった成田の事件をまた一瞬、思い出した。


もう、トラウマです。


「了解しました、まず電気のブレイカー落としてきます」


式は、なぜそんなこと言うのか、以前TVでガス漏れ部屋で換気扇のスイッチを入れた途端に通電の火花がきっかけで爆発が起こったという

ドキュメンタリードラマを見て覚えていた。


「わかった、それと急いでこの部屋の四方に御札がっちり貼り付けてくれ」


「はい」


『これは・・一体何が起こっているんだ?とにかく急ごう、

そうだ奥に給湯室あったな、あそこの壁に緊急連絡先のシールが貼ってあったはずだ・・』


式がブレイカーを落としたりガス会社に連絡を取りながら店内を走り回っている最中も時折、強いガスの臭(にお)いがした。


窓は無いかと見回りながら裏口を開け放ち小窓も外して、なるべく風通しが良くなるように努めた。


 こういう店には火災の時、煙が逃げるように排煙口と呼ばれる設備が天井付近壁伝いにずらりと並んでおり1箇所ワイヤーを引っ張ると窓がバタバタと順番に手前へ倒れて大量に開口した。


でも、まだガスの匂いがします。


そして、また

―ドンッ と不気味な地響きがした。

そして

―バキバキッー という音が支店長室の方から聞こえてきた。


その時、正面出入り口付近で和華さんの掛け声が聞こえた。


「イザ・ヤァッ!オンッ!!かみさまあーーーーっ!」

こちらに背中を向け外と天井に向かって叫ぶ和華の右手には、しっかりと刀が握られている。


『後に教わったのですが和華さんの言う『かみさま』と云うのは正式には『アメノミナカヌシ様』と云う神様なのだそうです』


和華は

―フォン・フォン と刀を振り回すと

店のはめ殺しになっている

大きな強化ガラスに向かって空を切り出した。


「ひとぉー」

―フォン!

すると大きなガラスが『ギャリリィーッ』という音を立てて

真横にキズが入った。


さらに和華は向き直り、足を開き腰を落とすと

「ふたーぁ」

―フォン、フォン と二回真横に空を切りました。

目の前のガラスが『ギッシィー』と鳴ったかと思うと


―バン!と強化ガラスは粉々に砕けて床に、どっさりと落ちた。


「えっ!えええぇーーーっ?」

式は驚き、つい声を上げてしまった。


式は、あっけにとられて和華の後ろ姿を見ていると

サングラスをかけた彼女はくるりとコチラに向き直り

ニコニコと笑いながら式に小さく手を振ってきました。


『えぇー?笑ってるよ、凄すぎるよ和華さん・・・』

その時なぜか先ほど菅原さんに頂いた名刺の肩書きを思い出していました。


『国土交通省・・・保安部・・・特務課・・・』


やがて和華は刀を鞘に収めると胸のところで修験者のように両手の指を組み合わせ叫んだ。


「あっきゃーのんっ! かむいおーぺれっ!風神様、招来っ!」


遠くで救急車のサイレン・・・パトカーか?・・・聞こえてきました。

そして

―ゴウ・ゴウウ・ゴウォーと風の音が聞こえ店内に強い風が吹き込んできた。

「うわっ、うわわわわ・・・」


―ゴーーーーーーーッ!


和華が被っていた白い帽子が風で飛ばされ、式の足元まで

飛んできて落ちた。


『和華さんは?』と見ると


仁王立ちで手を胸のところに組んだまま髪を振り乱し


『ニヤリ』

とサングラスをしたまま式に微笑んでいた。


風は、まだ吹き込んで来ています。

「アキラおじさん!支店長室に御札、おふだ貼って!」


『あ、あぁそうだった』

「ハイーッ!」

式は慌てて支店長室に向かった。


部屋の中で静華が先ほどの和華のように仁王立ちで胸のところに手を組んで何か唱えていた。


―ノウマクサンマンダー・・・・・


「アキラ、御札はあとでいいわ心臓マッサージ救命士達が来るまで続けて」


「あぁ・・ハイッ」

式は、すぐにマッサージを始めた。


『やっぱ気持ちのいいもんじゃないなぁ・・・戻ってこい、いちにっさん!んー無理っぽいか・・・』


「呼吸は止まってるけど霊体は、まだソコのカドで悪魔に捕まっていて本人はこっちに助けを求めているの」

頭の上で静華の説明が聞こえて来た。


「だったら何で首なんか、いちにさんっしっ!」

「記憶が無いそうよ、すいませんだって」

「え?誰が?」

「支店長、ほらそこにいるでしょ」

静華の指差す方を見ても誰もいません、それより壁にヒビが入っています。


それと

今、気がつきました、静華は負傷しているようです。

コートに血が滲み出していました。


「静華さん、足、大丈夫ですか」

「かすり傷よ」


そう言うと静華は歩み寄ってきて

式のおでこを指先でトントンと二回軽くたたいた。


その途端、式は部屋中に響き渡る声が聞こえ出した。


「あーのくたあらあー・・・」

『うわ!アレ?なんだっけコレ・・・あー、政一郎さんかあ!』


静華が指差した。

「ほらアキラ、見える?」

部屋のカドに支店長が立っていた。


その横には壁から生えている真っ黒い腕が見えた。


「あっ、見えます!」

「そうか、やっぱりなアキラ…」

店の方から救急隊の声が聞こえてきた。


「イザ、ヤァッ!」

静華は黒い腕に向かい掛け声とともに刀の先を壁に突き刺しました。


―ザン!


「あーのくたあらあー・・・・」

「グゥウウウ」

黒い腕はダランと力が抜けたように壁に垂れ下がった。


ついで救急隊がドヤドヤと入ってきた。


「よしAED、アドレナリン用意、ガスは大丈夫かな?」


和華が大穴を開けて風を通していたのでガスの臭いは

もうほとんどしていませんでした。


ガス会社の対応もあり、ガスの供給はストップした。


静華さんが壁に向かい言った。

「今だ、体に戻れ支店長!鬼子母神様!」


すると、フラフラと支店長の幽(・)霊(・)は歩いて自分の体に向かった。


そして壁の黒い悪魔は

「グウ」とうめき声をあげ、光に包まれていき、やがて

光も黒い腕も見えなくなった。


救命士が注射を胸に打ち、処置が始まった。

「じゃいくぞ、いちにさん、バチッィ!」


静華は壁から刀を外し部屋の外に向かった。


「アキラ、今度は支店長の家族が心配だ・・・なんだって今日なんだまったく・・・

警察に支店長の家族、安否確認頼んでくれ」


「はい、了解です」


帽子をかぶり直しサングラスを外した和華が走ってきた。


「お姉様!」

外に待機している救急車に静華は和華の肩を借りて歩いて行った。


何でも悪魔が襲いかかってきて壁にヒビが入った時にモノが飛んできて

左足の太ももに突き刺さってしまったというのです。


「麻酔でもして止血してくれ!」


「いやぁ、そういう医療行為は・・・病院で・・・」


「いいから、やってくれホチキスくらいあるだろ!

今すぐ上の者に無線で許可もらえっ!この石頭!」


「そうよ!早くやってよ!おじさんクビになりたいの?!」

静華と和華の声が救急車から聞こえてきました。


「やれやれ…」


式は武藤刑事を探し出して支店長の家族のことを、お願いした。


表の車道は完全通行止めになっており、救急車、消防・レスキュー、パトカー、ガス会社の緊急車両と集まっていて大騒ぎになっていた。

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