第1話 榊原静華・見参!
式アキラは自分が眠りについた、その後の事、全然覚えてい無かった。
式アキラは…完全に、やってしまった。
彼は情けないことに眠りに就いてしまい…
次に目を覚ましたのはナント約24時間後だった。
熱を出し、うなされたのは和華ではなくて・・・
式アキラだった。
多分ちょっとした隙に何か悪いものを憑けて帰ってきたらしい。
この大事な時に・・・そう、この大事な時に限って!
アキラと云う人間は・・・アキラと云う男は・・・
やってしまう・・男だった。
式がソファーで目を覚ますとホテルの部屋に、みんな集まっていた。
式に軽く毛布が、かけられていた。
「あっ、おきたよーアキラぁーオハヨー大丈夫?」
和華が心配そうに式の顔を覗き込んで、そばに居た。
「起きたか、この馬鹿」武藤刑事です、上から見下ろし笑っていた。
そして・・・念願の祭師・榊原静華が目の前に居た。
「アキラァーあはは、おはようー」
式は
『あぁ・・・本物だ・・・夢と一緒で・・・綺麗な女人だなぁ・・・
他にも社長に尾形君、西条先生に茂木さんまでいらっしゃって・・・
あれぇー、僕の友人あの天才料理人の土井良憲くんまで居ます、ん?』
カレーの美味しそうな匂いがした。
この時の式の顔ほど間抜けなものは、この世界のドコにも無いだろう。
このあとの事柄は式が
後に警察の方や静華や尾形に聞いた事だ。
失踪した奥さんは朝8時前に、なんと尾形の実家に姿を現し
居合わせた尾形の、お母さんが対応した。
「あんた誰?なに?」と、お母さんが例の奥さんに言うと
彼女は―スッと近づくなり
『ふーーーーーっ』と、お母さんに息を吹きかけた。
そこで、お母さんは気を失って倒れてしまい、
すぐに気が付いたらしいのだが
台所の包丁が2本、そして軽四の車が盗まれてしまった。
お母さんは、ただ事ではないと、すぐに110番通報した。
通報を受けた警察は服装から逃げ出した例の奥さんと断定され
緊急指名手配が再発令された。
時刻は朝8時半。
警察官2名が空港に静華さんを、お迎えに行き
降り口ゲートから静華が出てくると挨拶を交わし
警察官は左右に陣取り警護した。
静華は黒っぽいトレンチコートにリクルートスーツ姿だった。
日本刀『柴刀』を革ケースに入れ肩に掛けていた。
歩き出すと看護師の服を着た例の奥さんが現れ、すごい形相で皆を睨みつけ
静華ら三人の前に立ちはだかった。
盗んだ軽四で移動して、隠れて静華をロビーで待ち伏せしていた。
視える人が見れば
奥さんは目が釣り上がり口が耳まで裂けて歯を剥きだしていた。
周囲には真っ黒な霧が立ち込めている。
「フーッ、グルルルルゥーガァウッ、グルルルルーグルルーッ!!」
その嘶きは犬のようだった。
彼女の両手には大きな包丁が、それぞれ握られていた。
そして
―ズンズンッ と歩いて静華に向かってきた。
若い制服警官は
「止まりなさい!刃物を置きなさい!撃ちますよ!」
と叫び周囲にいた旅行客たちは悲鳴を上げ逃げ出した。
「きゃーーーー!」逃げ惑う人々・・・空港内は騒ぎになった。
「止まりなさい!」
警察官の警告を無視してズンズンと黒い煙を纏った奥さんが包丁を手に向かってきた。
一発、天井に向け威嚇射撃がなされた。
「パン!」
「キャーッ!!」と、どこかで悲鳴が上がり周囲の人々が逃げ出した。
静華が、すぐに反応した。
「撃つな、馬鹿者っ!誰かに当たるぞっ!お前らあー下がれぇーっ!!」
静華は左右の警官を押しながら激しい動きで後ろに追いやると
ケースから刀を出し『スラスラ』と鞘から抜いた。
その時、静華の周辺空間がグラリと揺れた。
その間も狂った奥さんはズンズンと真っすぐ向かってくる。
静華は大きく鼻から息を吸い、少しずつ吐き出しなが、低い声で言った。
「イザ・ヤア…」
刀を前に差し出し敵を睨みつけ
二人は対峙した。
その場にいた警察官は静華が、その刀で暴漢を斬ると思ったそうだ。
静華は日本刀を相手にかざして真横に一回、刀を振った。
「ひとーぉ」
―フォンッ
刀が空を切った。
周囲に風が発生した。
―ザァー
大きく足を開き刃先を敵に向け構えた。
「ふたぁー」
―フォン、フォンッ!真横に二回空を切ります。
―ザ・ザァー またしても風
すると狂った奥さんの動きが止まり苦しみ出した。
「ウグゥウウー、ウゥー」
静華が仁王立ちになり咆哮をあげた。
「我が名は一族、四天王の一人、榊原静華だぁーっ!貴様あーっ!名を名乗れぇっー!!」
さらに静華が動く。
「みぃー」
―フォン、フォ、フォン、三回。
アルファベットのZと空に書くように刀を振った。
―ザァザザー
「よぉー」
―フォン、フォン、フォンフォ、フォン、フォン刀が踊る。
「いつぅー」
―フォン、フォン、フォン・・・漢数字を相手に向け書いているようだった。
圧力的な風が吹いた。
―ズザー
「ウグゥー・・ウゥアァアア・・・」敵は苦しんでいる。
そして
『カラン!』と悪魔の取り付いた奥さんが包丁を床に落とした時
警戒していた武藤刑事が飛び出して走り寄り体当たりをして
奥さんを床に倒し手錠をかけた。
「カクホーぉーおーっ!!」
バタバタと他の刑事や警官が寄って集って身柄を確保した。
いつの間にか空港警備員と制服警官が周囲を囲んでいた。
「おい、お前らホテルに急げ!」
静華はボサッっとしていた迎えの警官2名に促した。
刀を鞘に収めながら足早にパトカーに向かい静華がホテルに到着した時
部屋で式が爆睡していたため誰も応答する者がなく
ホテル従業員の手によってドアが開けられると
うめき声をあげて、うなされ眠る式がソファーに居た。
聞けば高熱を出し、うめき声を出していたとか。
そして今…
目が覚め、みんなに囲まれていたのだが式は
一つ大変な事に気がついた。
式の股間にオムツが充てがわれていて明らかに用を足していた、
小ですが…
『ナニコレ?』
「あー」
式が、それに気がつき目を白黒していると
「私がオムツしたのよ、あははっ!」
部屋中に大爆笑が響いた。
式は…
『綺麗な・・・し・・・静華さんが笑ってる・・・っと言うことは、
えーっ!!・・・全部見られた…』
みんなは爆笑だった。
式は思った。
『だれか・・・だれか、これは夢だと・・・ぼくに・・・言ってください…』




