第9話 護摩壇
大急ぎで会社の方たちが慣れた手つきで足場を組立て
ついで式と尾形でわざわざ東京から送られてきた特注の組立キットを使用し護摩壇を作った。
お焚き上げ用・と書かれた護符と今しがた切ったばかりの松ノ木の枝が護摩壇のそばに次々運ばれた。
通称コンゴウと呼ばれる軽油と灯油の混ぜられた油もあった。
6人で作業していた造園業の方たちは公園・アパート周辺すべての草刈も始めており、草はすべてゴミ袋に入れられトラックに積まれた。
意外だったのは遠巻きに見ただけですが草を刈る前に殺虫剤が念入りに散布されていたのが印象に残った。
その間、作業員の方たちは淡い光に包まれ守られていた。
「お兄ちゃん、アキラおじさん、ここからが大変よ、私は今から眠りにつきます、
その代わり私のなかに私のおじい様が入って護摩焚を行います、
その間このユニットから神楽の音楽が流れます」
いつの間にかラジカセと外付けの大きなスピーカーが用意されていた。
「その太鼓の音に合わせてアパートを囲む形で、この日本刀を66本、地面に刺して歩いて欲しいの少しやってみせるけどブルーシートがまだね・・・じゃ車で少し休憩しましょうか・・」
そう言うと和華さんが車に歩き出したので
式と尾形も後に続いた…
車の中で和華から、お願いがあった。
「私、体力の限界が近いです。
それで護摩壇の火入れからは私のおじいさんに変わっていただきます。
魂散華・抜刀演舞
そして結界刀の入刀儀式が終わると同時に
おじい様も一回、三重県の実家に帰ります。
多分・・・私は気を失った状態で眠り続けると思います。
自然に起きるまでホテル側には余計なベットメイキングなどが
勝手に入ってこないように念を押してください。
尾形兄ちゃん、アキラおじさん、よろしくね!」
「ハイわかりました、とにかく眠りを妨げるなということね」
「うん・・・」
そういうと和華さんは車の中から手を合わせ
何事か唱えている野次馬たちを、じっと見つめた。
大体、そんな大掛かりな払いの儀式など見たこともありませんし、
どうしていいのか手はずが何もわからない。
つまり現場の状況に合わせ、行動を決断するのはすべて祭師様の判断に委ねられるからです。
式は一瞬我に返り周囲を見回せば
真夜中だというのに
パトカー、警備保障、消防車、救急車がたくさん現場に
集結しており作業員たちは総勢25名ほどで走り回っていた。
尾形のお父さんは部下の方たちと手分けして動き回り常に電話したりして
会社で待機していた社員3名も足りないものを届けたり、急遽、用意したりと街中を走り回っていた。
集まった警察官、警備員、消防隊員、救急救命士、市役所の担当、銀行の代表社員さんたちには警察の茂木さんが
「では私の目の前で今すぐ装着してください」と、お守りを配って歩いた。
『戦場と化したアパート周辺を今思えばスマホで撮影しておけばよかった』
式は現場で夢見心地で、どこか浮き足立っていた。
みな懸命に作業している。
「おーい、そっち、チョット持ってくれ、せーのっ・・・重いなぁ、ちょっと一回下ろそう、足に落とすな」
「はい、おーい、ちょっとこっち、てつだってくれぇーっ!」
「あー?なんだってえー?」
「こっちきてくれーっ!」
騒々しく回るパトランプ、足場を運び走り回る作業員たち、通行止めを担当された警察官と警備員たち
テント小屋でタバコなど吸いながら談笑する消防隊員さんや関係者たち・・・
普段は生意気な口を利く尾形も式も、すっかり口数が少なくなっていた。
疲労もあった。
二人共、和華さんの後ろを付いて歩き、まったく金魚のフンのようです。
ふいに乗っていたバンの窓がノックされました。
そこには西条先生と副署長の茂木さんが立っていた。
「これ差し入れです、それと、たった今ですが、ちょっと気になることを近隣住民さんに聞きました、ちょっと中に入らせてもらっていいですか」
「ええ、構いませんけど・・・」
西条先生は小学生の和華に対して言った。
「祭師様、どうやらあの3本の木、根元のところに
遺骨などとは別の良くないものが埋まっているらしいのですが、お気づきでしたでしょうか?」




