第1話 件のアパート1
ある日、武藤刑事が式の事務所にやってきた。
武藤は少し、お疲れの様子で昼時だったので出前を頼んだ。
事務所の近所に出前をしてくれる、お店がないので離れたお蕎麦屋さんにお願いした。
そのお蕎麦屋さんは少し遠いので嫌がられるが、たくさん頼むと出前がOKになる。
冷やしたぬき二つとカツ丼一つカレーライス一つを注文、遅めの昼食になった。
式は武藤に「書くなよ」と言われながら
あのアパートであった過去の事件の詳しい内容を聞いた。
数十年前、最初の大家さんは勤め人で仕事を辞めて退職金で川沿いの安い土地を買い、あのアパートを立てた。
並びに民家は無かったが車道を挟んで向かい側には民家や長屋が点在している。
当初のアパート家賃は四万円だったそうで立地が良いとは言え当時は、そこそこの物件だった。
各部屋は、すべて契約されて順調な滑り出しに思えましたが一ヶ月持たずに入居者みんなで相談したかのように出て行ってしまった。
残った入居者は101号室の人のみだった。
住人が出て行った詳細はといえば、
アパートの裏側に川が流れていて季節は夏、みなさん裏側の窓を網戸だけにして寝ていると夜中、金縛りになり窓の外に『生首が現れる』と騒ぎ出した。
管理していた不動産会社は、権利金・敷金・前家賃・仲介料と徴収していたが住人たちは
「お化け屋敷を紹介して金返せ」と揉めて
「引越し代が馬鹿にならないので弁償しろ」と
さらに揉めに揉めて裁判所で調停の場が設けられて不動産屋も大家も大損害になった。
賠償の決め手になったのは元・住人たちの証言と何枚も撮れた『心霊写真』だった。
意地になった借主たちが毎日、毎夜、交代でアパートの写真を撮りまくったのだ。
写真には真っ赤な霧のようなのが映っていたり、人間の顔らしきものがあったりと室内もアパート周辺もヒドイ写真ばかりで、お化け屋敷のようだった。
そのあと残っていた101号室の入居者が家賃を滞納して督促にも応じず、不動産屋さんと大家さんが取立てに行くと
部屋の奥に居たであろう入居者が刃物で二人に襲い掛かり
不動産屋さんと大家さん、お二人共、亡くなった。
犯人の101号室住人は、その場で首を斬りつけ自害した。
「マジすか…」
「うん」
現場は3人の血が広がりあふれ血の池が出来ていた。




