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第18話 あなたが摘んだ花束
騒ぎが収まったあと、私は一人で中庭へ出た。
夜風に当たると、ようやく肩から力が抜ける。王都の石畳は相変わらず整いすぎていて、昔の私ならその上を小さく歩いたはずだった。
「ここにいたか」
振り返ると、レオンハルトがいた。手には北辺から持ってきた花束がある。乾いた花ではなく、今朝王都郊外で摘んだという白い小花と若葉の束だった。
「帰りの朝に渡すつもりだったが、今の方がいいと思った」
差し出された花束は、派手ではないのにやけにきれいだった。
「毎朝、机に花があると」
私は笑ってしまう。
「今日も頑張ろうって思えたんです」
レオンハルトは少しだけ目を伏せた。
「君の一日が、王都の嘘の匂いから始まるのが嫌だった」
胸が熱くなって、うまく息ができない。
「北辺へ戻ってきてほしい」
まっすぐな声だった。
「蒸留所に必要だ。……俺にも」
私は花束を抱きしめる。
「戻ります」
それから少しだけ声を落とした。
「だって、あの花がない朝なんて、もう考えられません」
彼の大きな手が、そっと私の髪に触れた。
甘すぎない、けれど確かな温度がそこにあった。




