15/20
第15話 王都帰還の馬車
王都へ向かう馬車には、私とレオンハルト、それにヨナスが同乗した。
窓の外を流れる景色は、北辺の白から徐々に春の緑へ変わっていく。王都が近づくほど胸は重くなったが、不思議と以前のような息苦しさはなかった。
「緊張しているか」
向かいの席から問われ、私は素直にうなずく。
「ええ。けれど、前ほど怖くはありません」
「なぜだ」
「戻る場所があるからです」
レオンハルトは少しだけ黙り、それから荷袋から細長い包みを取り出した。
中には、北辺で摘んだ花を乾かして束ねた小さな花束が入っていた。
「毎朝、机に置くのは今日で途切れると思った」
「……困ります」
思わずそう返してしまい、自分で驚いた。
彼の灰青色の目がわずかにやわらぐ。
「なら、帰ったらまた置く」
それだけの会話なのに、手の中の花束がやけに熱かった。
「今夜が終わったら、改めて聞かせてほしい」
「何をですか」
「北辺へ戻ってくる気があるか」
私は花束を抱え、窓の外を見るふりをした。
答えはもう決まっている。
ただ、それを口にするのはすべてが終わったあとにしたかった。




