↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
13/20

第13話 北辺香会の新作

北辺香会は、蒸留所を再開して初めての公開発表だった。


 雪解け水で復元した白百合に、朝の冷気を閉じ込めた『暁雪の白百合』。針葉樹と薄荷で城壁の朝を表した『城壁の朝霧』。派手ではないが、北辺にしか作れない香りだ。


 来場した商人たちは、最初こそ半信半疑だった。けれど試香紙を手にした途端、表情が変わる。


「これは王都の香りより長く残る」


「宿の客間に使えそうだ」


「兵舎向けの洗浄香液も欲しい」


 注文票が次々と埋まっていく。


 工女たちの顔にようやく笑みが戻った。止まっていた賃金も、今月から出せる見込みが立つ。マルタは帳場で大きく鼻を鳴らしながらも、誰より嬉しそうだった。


 発表の最後、レオンハルトは集まった人々の前で言った。


「北辺蒸留所の再建責任者は、宮廷から来た記録官リディア・ヴァイスだ。今日以後、この蒸留所の調香記録と新作管理は彼女が預かる」


 拍手が起きた。


 王都では、私はずっと裏方だった。名を呼ばれるのは責任を押しつけられるときだけだった。


 けれど今は違う。


 私の仕事に対して、まっすぐ返ってくる拍手がある。


 その日の夕方、王宮から正式な招状が届いた。次の大夜会で北辺蒸留所の新作を披露してほしい、と。


 もう逃げる理由はなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。