299. 騎士堂鼎談(中)
ちょっと昨日腰をやってしまいまして、本日は朝から寝たきりになっております。
その影響で本日投稿分は無推敲の上に短めです。すみません。
また誤字指摘を頂いても反映修正が遅れるかもしれません。
「面白い試みだとは思いますが……。それに、どのような意味が?」
「アガット騎士団領は毎年、ヴォルミシア帝国との『戦争』を行っているのよね?
そしてこの『戦争』は、それぞれの家門に武勲を得る機会を与えるために、必要なものだと聞いているわ」
「……ええ、そうです。アガット騎士団領では『武』こそ最も尊ばれますが、平和な世に於いてその威を示す機会は限られるもの。国に忠誠を誓うそれぞれの家門に対して公平に、武功を挙げる機会を与える為に『戦争』は必要なものでした」
「でも、武功というのは別に、人と人との争いでしか認められないものでも無いと思うのよね。人が強き魔物に―――それこそ竜に打ち勝てるようなことがあれば、それは充分過ぎる程の武功になるのでは無いかしら?」
「それは、そうでしょうが……」
「ヴォルミシア帝国は当国が既に滅ぼしてしまっているから、アガット騎士団領は今年から『戦争』の相手に事欠くことになるわね? なのでその代わりとして、当国の竜と貴国の騎士隊、これに『試合』を行わせるというのはどうかしら?」
「ふむ……」
ユリの提案に、暫しの間ジュレミー総長が考え込む。
残念ながらその表情は、あまり良い物では無かった。
「……申し訳ありません。興味はありますが、お受けしかねます。
死者こそ出なかったとはいえ、我々は6年前に50名以上の騎士を動員してワイバーン1体を狩猟した際にも、かなり苦労しています。だというのに、ワイバーンより更に格上の竜と戦うというのは……死人が一体どれほど出るのか、正直予想も付きません。騎士達の命を無駄に散らせるわけにはいかないのです」
「死人なら1人も出ないように出来るわ。私の臣下に優秀な子が居てね」
「……優秀? それは、治療師として優秀ということでしょうか?」
「治療師として優秀な子も居るけれど、それとは別ね。そうね……私の口から説明しても構わないのだけれど。どうせなら第三者としての立場から、その効果を理解している、アルトリウスに説明して貰えないかしら? そのほうが、ジュレミー総長にも信じやすい情報になるでしょうし」
「私からですか? もちろん、説明役ぐらいは構いませんが」
アルトリウスはニムン聖国の国主でありながら、それなりの頻度で『迷宮地』への挑戦を行い続けている、現役の探索者でもある。
なので彼は当然、ユリシスの都市の探索者達を保護している、『紅梅』の子達が都市に展開している【救命結界】の効果の凄さを知悉している筈だ。
ジュレミー総長は、アルトリウスの口から『死から保護される結界』についての説明を受け、かなり興味を持った様子だった。
【救命結界】の中では常に命が保護されるため、絶対に死ぬことが無い。
なので人と竜との『試合』でも、安全に行うことが可能となるわけだ。
「騎士達に危険が無いのでしたら、興味はありますね……。我が国が誇る騎士隊が竜を相手にどれ程通用するのか、試してみたいかもしれません」
「個人的には、竜に『飛行禁止』と『ブレス禁止』の2つの制約だけ課せば、なかなか良い勝負になるかもしれないと思うのよね」
流石に―――竜が自由に大空を舞えば、騎士隊には勝ち目が無いだろう。
やろうと思えば、竜は矢が届かない位置まで高度を稼ぎ、そこから一方的に魔法で地上を攻撃し続けることができるのだから、当然と言えば当然だ。
また竜が吐く『ブレス』もまた、大軍を丸ごと飲み込む非常に強力な攻撃になり得るので、制限しなければ数を頼みにする騎士隊には勝ち目が殆ど無いだろう。
逆に言えば、この2つさえ制限すれば充分に『試合』が成立しそうな気がした。
『下位竜』は巨体に見合う強力な物理攻撃を繰り出すことができるが、身体が大きければそれだけ敵から攻撃を貰いやすくなるので、これは一概に有利なこととも言えない。
また『下位竜』が扱うことができる魔法は、自分が司る属性のものだけに限られており、それ以外の属性の魔法は一切使うことができない。
つまり―――彼らの多くは『自身を回復させる治療魔法が使えない』のだ。
なので堅実にダメージさえ積み重ねていければ、必ず倒すことが出来る。
『下位竜』のレベルは100~130程度。
そのレベルに見合ったタフさを持つ、竜の生命力を。数の強さを活かして騎士隊が削りきるのが先か、それとも個の強さを発揮して竜が蹂躙するのが先か。
実際にやってみれば、なかなか面白い『試合』になるのでは無いだろうか。
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お読み下さりありがとうございました。




