265. 第六側室(1)
暑さに屈して今朝は元気が全然なかったので、本日分は短いです。ごめんなさい。
なんで今日はこんな急に暑くなったの……。
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「アネカ共和国にて総督を務めておりますフルール・ケチャトの娘で、イロリナと申します。よろしくお願い致します」
百合帝国にて滞在を始めてから、今日で6日目。
ユリタニア宮殿内にある訪問した一室で、メルファルーデのことを出迎えてくれた『第六側室』の女性は、砂漠の民特有の褐色な肌をした、大変幼い少女だった。
2日目に会ったソフィアもかなり年齢の低い少女のように見受けられたけれど。いまメルファルーデの目の前に居るイロリナは、それを更に超える稚さに見える。
おそらく歳の頃は25前後といった所だろう。成人は済んでいるだろうけれど、まだ女性らしい魅力が伴うような体つきでは全く無かった。
一方で、丁寧な言葉遣いを自然に行うことができ、はきはきとした物言いをするイロリナの態度や雰囲気からは、あまり幼さが感じられなくもある。
何と言うか―――幼い割に、聡明な子なのだろう、と。
挨拶を受けただけで、そのことがすぐに理解出来る少女だった。
「メルファルーデよ。本日はよろしくお願いするわね」
「はい、お話は伺っております。メルファルーデさんから聞きたいお話が沢山ありますので、こうして私の元に来て下さる日を指折り数えて楽しみにしていました」
「そうなの? 何か私に話せることがあるかしら?」
「数日前にユリ陛下と夕餉をご一緒する機会があったのですが。その際にユリ陛下が、メルファルーデさんの弓の扱いについて『なかなかのものだった』と評価しておられまして」
「えっ―――そうなの?」
「はい。あれだけ鋭くて正確な矢は、かなりの修練を積まなければ射れないものだと賞賛しておられましたよ」
「そ、そうなんだ……」
ハイエルフの集落にて相対した時に、メルファルーデは4度、ユリ陛下の眉間に向けて矢を放っている。
4本の矢は全て障壁によって呆気なく弾かれているので、メルファルーデとしては己の技倆の未熟を恥じるばかりなのだけれど。
にも拘わらず―――あの時に放った矢が、自分より明らかに格上の実力を有するユリ陛下から、まさか評価して貰えているとは思わなくて。
イロリナの言葉はメルファルーデにとって大きく驚かされるものであり、同時に素直に嬉しいことでもあった。
「実は私も、弓はそれなりに使うほうでして」
「そうなの? こう言っては何だけれど……あなたの体格で扱うには、少し難しいのではないかしら?」
弓を引絞る動作には、身体の肩から背中に掛けての様々な筋肉を使う。
これらの筋肉は体格がまだ出来上がっていない年齢だと、なかなか鍛えることが難しいものだ。
だからイロリナのように、まだ子供らしい小柄な体格をしている人には、そもそも弓は決してお勧めできる武器ではない。
「不利な体格であることは理解していますが、それでも弓が好きなもので……」
「……その気持ちは、よく理解出来るわ」
少し躊躇いがちに告げられたイロリナの言葉に、メルファルーデは深く頷く。
かく言うメルファルーデもまた『弓』という武器を好んで用いているからだ。
好きだからこそ、何百年も飽きることなく修練を継続することができ、今の技倆を身に付けることができたという部分は、決して小さくないとも思っている。
だから体格的に不利と判っていても、好きだから『弓』を上手くなりたいというイロリナの気持ちは、メルファルーデには決して馬鹿には出来ないものだった。
「よろしければ本日は是非、弓の扱いについて指導を頂けませんでしょうか?」
「ええ。私でお役に立てるかは判らないけれど―――もちろん、構わないわ」
「ありがとうございます」
思えば―――昨日まで過ごした5日間は、側室の人達から様々なことを教わってばかりだったような気がするから。
最後の側室であるイロリナと過ごす今日ぐらいは、メルファルーデの持つ知識や技術を、教える側に回って過ごしてみるというのも良いだろう。
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お読み下さりありがとうございました。




