239. 薔薇3部隊による交易路敷設
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百合帝国の首都『神都ユリタニア』から東に向かえば、そこには『迷宮地』を利用する探索者達で常に賑わっている『迷都ユリシス』の都市がある。
2つの都市は僅か20kmの距離しか離れていない。定期運行している馬車を利用すれば2時間掛からず到着できるし、その気になれば5時間ほど歩いて移動することも出来てしまう、その程度の近しい距離だ。
但し、この2つの都市の間にある交易路は、雨が降るとぬかるんでしまうため、馬車でも徒歩でも移動に多少の難が生じてしまう。どうにもこの辺り一帯の地質に問題があるらしく、これに関してユリはなかなか対処出来ずにいた。
とはいえ、ルベッタやアドス、エリンやオーレンスといった商人の面々からその話を聞かされる度に(何とかしなければならない)とは常々思っている。
薔薇の名を冠する3部隊に―――『紅薔薇』と『黄薔薇』、『青薔薇』の子達に頼んで交易路の敷設を試行して貰っているのは、その事情があってのものだ。
交易路の敷設は建築部隊である『桔梗』に任せれば、完璧に仕上げてくれることは判っているけれど。『桔梗』は都市建造の従事だけで手一杯になりがちだ。
だから、もし戦闘部隊である『紅薔薇』・『黄薔薇』・『青薔薇』の子達でも、交易路の敷設を問題無く行うことが出来たなら。今以上のペースで、国内の開発と整備を急速に進めることが可能になるだろうと、ユリは期待していた。
ユリタニアとユリシスの2つの都市の近郊には、全部で4つの衛星村落がある。
畜産を主とする『ノトク』、林業がメインの『シリン』、農業だけに特化されている『エラート』、そして馬の飼育・繁殖を行う『コルト』の4つだ。
このうち、首都ユリタニアからノトクまでの交易路を『紅薔薇』に、シリンまでの交易路を『黄薔薇』に、エラートまでの交易路を『青薔薇』に、それぞれ敷設を任せていたのだけれど。―――これに、最近になって進展があった。
実は今月の前半、つまり『春月20日』頃までは、3部隊がそれぞれに試行錯誤しながら行っている交易路の敷設は、全く上手く行っていなかったらしい。
精霊魔法や魔術を行使して、充分な固さの道路を敷くこと自体は出来たらしいのだけれど。数日と経たないうちに路面にヒビが入ったり、酷い時には一部に陥没が生じることもあったそうだ。
僅か数日で異変が生じるような欠陥道路が、常用に耐え得る筈もない。
けれど何度造り直そうとも、路面には同様の問題が発生していたそうだ。
この窮状を救ったのは、ユリから命じられた20日間の『休暇』を終えたばかりの『桔梗』の子達だった。
彼女達は3部隊が交易路の敷設作業を行う様子を見学して、路面に欠陥が生じる原因が『道路を上辺しか造っていない』せいであることを即座に看破したそうだ。
―――その報告を受けた際には、ユリもまた(なるほど)と思ったものだ。
道路というものは層を重ねることで初めて安定する。例えば、日本でよく使われている道路だと、その構造には大体4~6層が重ねられていたりするものだ。
単にアスファルトを敷けば道路が完成する、というような単純なものでは無い。そんな乱暴な作り方をすれば、すぐに交通荷重に耐えきれず路面が自壊してしまうことは判りきっている。
嘗て現代日本で暮らしていた頃に『造園会社』に勤務していたユリは、当然その辺りの知識も多少は持ち合わせている。だから『桔梗』が指摘したことの意味が、ユリにもすぐ理解出来たというわけだ。
『桔梗』の子達からアドバイスを受け取った3部隊は、まず交易路敷設予定地の地面を大きく掘り下げ、魔術や魔法を用いることで版築を済ませた土砂のように、固く締まった1mほどの厚みがある路床を構築する。
その上に路床の半分の厚みを持つ路盤を作り、更に基層も重ねて造成する。
最後に、馬車が揺れることなく走行できるような、凹凸の少ない表層を重ね合わせることで。初めて各部隊は交易路の敷設成功に至ったそうだ。
ルベッタやアドスに協力を求めて、3部隊がそれぞれ完成させた交易路に、商会が有する馬車を荷物を満載した状態で何度も走らせて貰っているけれど。今の所は特に、問題も起きていないようだ。
これならば実用に耐えうるかもしれない―――そう考えたユリは次に『3部隊で協力してユリタニアからコルトまでの交易路を敷設』するように命じた。
また、今度の敷設作業には『桔梗』の子達に一切手出ししないようにも求めた。3部隊の力だけで敷設が行えることを、ちゃんと確認しておく為にだ。
コルトの村落はユリタニアから南方側に、ほぼ正確に20kmの地点にある。
その20km分の交易路が『紅薔薇』と『黄薔薇』、『青薔薇』の3部隊が協力して当たることで、作業開始から僅か4日の内に完成した。
もちろんこの交易路でも、荷物を満載した馬車を何度も行き交いさせることで、耐久性の確認を行っているけれど。現時点で全く問題は生じていない。
1日あたり5kmのペースで交易路の敷設が行えるというのは、大きな進歩だ。
これならば―――もっと大きな交易路に挑戦させてみるのも面白いだろう。
そう考えたユリは、早速アネカ共和国のフルール総督に連絡を取った。
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