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百合帝国  作者: 旅籠文楽
1章 -

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235. 女国主会談(4)

 寝坊のため、本日投稿分は非常に短いです。ごめんなさい。

 夏場は夜に帰宅した後に即寝してしまうことが多いため、夜ではなく朝に小説を書くようにしているのですが。目覚ましをセットしても、冷房が良く効いた部屋では睡眠が深くてなかなか起きられず、結果として寝坊しがちなのが何とも……。

 



 夫のドレンから目の前にある霊薬の効能を説明されても、フルール総督は俄には信じられない、といった表情をありありと浮かべている。

 それでも実物が目の前にあり、かつ〈鑑定〉スキルの所持者が見極めた以上は、間違いがあろう筈も無かった。


「ユリ陛下は―――これらの大変貴重な霊薬を一体どちらで、どのようにして入手されたのですか?」


 僅かに震えた声でそう問いかけてきたフルール総督に、ユリは即答する。


「これは私の臣下が作ったものです」

「なんと……。百合帝国では随分凄腕の錬金術師をお抱えなのですね」

「錬金術師? ―――ああ、なるほど。これは紛らわしい言い方をしてしまった、私が悪かったですね。先程は『霊薬の1種』として説明しましたが、厳密に言えばこれは『霊薬』では無く、錬金術によって作られたものでは無いのです。

 まあ、似たようなものではあるのですが……。ですから、この薬を作成したのは〈錬金術師〉では無く、そもそも生産を生業とする職人でさえありません」


 ユリが手渡した『変若水(おちみず)』は、『紅梅(こうばい)』の子達が作ったアイテムになる。

 『紅梅』は〈神霊依姫〉の職業(クラス)だけで構成された戦闘(・・)部隊であり、『桔梗(ききょう)』や『竜胆(りんどう)』とは異なり、生産を得意とする部隊ではない。


「大量にありますが……。これを、本当に我が国に頂けるのですか?」

「ええ、もちろん。ただ先程も言いましたが、これはアネカ共和国にと言うより、フルール総督個人に対する贈り物として受け取って頂けると嬉しいかしら」

「……それは何故でしょう? 国家への贈り物とする方が、アネカ共和国に大きな恩を売ることが出来て、百合帝国の利益になると思うのですが」

「イロリナを側室として迎える以上、その家族には長生きして欲しい。

 そう思って譲渡するだけの物ですから。―――これが個人宛の贈り物でなくて、一体何だというのでしょう?」


 思わずユリは、そう口にしながら苦笑してしまう。

 実際、ユリにそれ以外の他意は無いのだ。事前にイロリナから話を聞いていたことで、彼女の両親がどちらとも結構な老齢であることは判っていたから、こうして『若返りの薬』を準備していただけに過ぎない。


「だから対価を求めるつもりはありません。―――強いて言えば、フルール総督とドレンの2人に、末永くイロリナの家族として長生きして貰うことが対価かしら」

「……馬鹿げていますね。これだけ大量にあれば、余裕で国が買えますよ?」

「欲しい国があれば、自力で奪(と)りに行きます。別に購う必要は無いですね」


 欲しいものがある時には、力を行使して手に入れる方が早い。

 少なくとも、安易にそう考えてしまえる程には―――ユリは明確に『悪』だ。


「……有難く頂戴は致しますが。個人宛の贈り物として受け取りますので、当国は国家として百合帝国に恩義を感じることはありません。それで構いませんね?」

「ええ。それで当方としても結構です」

「ただ、私も夫もそうですが、老いによる身体の衰えもあり最近は健康への危惧が随分と増えていたことも事実。

 ―――個人としては、ユリ陛下に深い感謝を申し上げます。我々に出来ることが何かありましたら、遠慮無く何なりと言って下さいね」


 そう告げて、フルール総督が深々と頭を下げる。

 彼女のすぐ隣では、ドレンもまた立ったまま深く頭を垂れていた。


「……では、ひとつ厚かましいお願いを口にしても?」

「ええ、何でしょう?」

「私を家族と認め、良い付き合いを今後とも宜しくお願い致します。私には『嫁』と『側室』こそ沢山おりますが、両親や姉妹といった『家族』は誰もおりません。

 フルール総督とドレンのお2人は、大変人格に優れた方々だとお見受けします。そういう方がイロリナと同じように私のことも『娘』も同然に諭して下さり、何か私が誤ったことをした際には、叱って下さるととても嬉しいのですが」

「あら、そんなことで宜しいのですか?」

「是非」


 ユリには全部で359名もの『嫁』が居るけれど。彼女達は全員が、ユリ自身の望みに忠実であり過ぎるが故に、ユリを否定することが一切無い。

 回りに自分を諫めてくれる相手が1人も居ないというのは、ユリにとって少なからず不安に思っていたことでもあった。


 何しろ、性向が『極悪』に振り切れているユリには、その気になればどんな極端な行為でも平然と実行できてしまうのだ。

 ―――喩えそれが、どんなに人の道から外れた行為であったとしても。


 だからユリは、いざという時に自分に制動(ブレーキ)を掛けてくれる相手を、大事にしたいと常々思っていた。

 それは例えばリュディナやアルカナといった主神だったり、ルベッタやアドスのような辣腕の商人だったり、エシュトアやソフィアといった側室だったりする。

 加えて、フルール総督とドレンの2人もまた、ユリが明らかに行き過ぎた場合の抑止役を引き受けてくれるなら。

 これは―――非常に有難く、そして頼もしいことだ。



 

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お読み下さりありがとうございました。

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