232. 女国主会談(1)
朝に余裕がなかったため本日投稿分は短めです。(ごめんなさい)
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イロリナに先導されながらアネカ共和国の総督府へと入ったユリは、その建物の1階にある応接室へと案内された。
そこは、なかなかに豪華な装いの部屋だった。
宝石や金をあしらった高そうな調度品が室内に幾つも置かれており、それぞれの品に施された細工は、技術的にも優れた品であるように見受けられる。
この部屋だけで判断するなら、アネカ共和国は財政的に余裕がありそうな印象も受けるけれど。『撫子』隊長のパルティータからはその逆で、アネカ共和国はあまり豊かな国では無いと聞いている。
だとするなら―――余所から買ってきた品では無いだろうから、おそらく調度品に使われている宝石や金は、相手国内で採れたものだろうか。
アネカ共和国が悪地にハラキオやサイオンといった都市を築いているのは、その付近にある鉱山で希少な鉱石が採れるからだと聞いている。
その『希少な鉱石』というのが多分、宝石や金のことなのだろう。
イロリナが総督を呼びに行ったことで、ひとり応接室に取り残されてしまっているユリが、そんな風に部屋の様子を観察しながら暇を潰していると。
やがてドアが二度ノックされた後、侍女の格好をした2人の少女がやってきて、待っているユリのためにお茶を淹れてくれた。
2人の侍女は、ユリの感覚からすると15~16歳ぐらいの容貌に見える。
イロリナと同じく褐色の肌が似合う健康的な子達だ。あちらに気付かれないよう密かに盗み見ているだけで、時間なんて幾らでも潰せそうに思えた。
(本当に、先方は私の嗜好をよく理解しているようね……)
あからさまな待遇に、ユリは内心で密かに苦笑する。
とはいえ、ユリが同性愛者であることは『放送』を視聴している自国や同盟国の民にはよく知られていることだし、別に隠して居ることでも無いのだが。
「……あら」
ティーカップに口を付けたユリは、思わず驚きが声に出てしまっていた。
今しがた2人の侍女が、ユリの目の前でティーポットから注いでくれたばかりのものだから。てっきり、淹れたてのまだ熱いお茶だろうと思っていたのだけれど。ユリの予想に反し、それは常温よりも冷やされたお茶だった。
しかも味のほうも特徴的で、口に含むと、すっとする明確な清涼感がある。
(ああ、久しぶりに飲んだわね……)
まさか、日本でもそれほど飲む機会が多くなかったミントティーを、この異国で味わうことになるとは思っても居なかった。
普段は執務のお供に苦味が強いお茶を味わうことが多いので、苦味よりも甘味のほうが強いミントティーの味わいは、随分新鮮に感じられる。
「このお茶は、アネカ共和国の特産品なのかしら?」
ユリがそう問いかけると、侍女のひとりが答えてくれた。
「はい。悪地で採ることができる、数少ない植物になります」
「あら、そうなのね」
悪地は作物類が全く育たない過酷な場所だと聞いているが。このミントティーに用いられているハーブだけは、悪地に元々自生している種であるらしい。
竜を用いて悪地にある都市との『交易』を開始した暁には、食料の対価として、このハーブを幾らか希望してみるのも良さそうだ。
少し癖がある味わいなので、万人受けはしないだろうけれど。清涼感が伴う味わいは気分をすっきりさせてくれるので、事務仕事の供などに良さそうだ。
―――そんなことをユリが考えていると。
やがてイロリナが目的の人物を連れて、応接室の中へと入ってきた。
「初めまして、ユリ陛下。お会い出来て光栄ですよ」
第一声でそう告げたのは、柔和な笑みがよく似合っている初老の女性だった。
何と言うか―――見た目だけでもう、明らかに『善人』だと断言できるような。そんな穏やかな雰囲気を持つ女性だ。
ユリがアネカ共和国について知っていることは、それほど多く無いけれど。この女性が国を治めているのなら、きっとここは良い国なのだろう―――と、そんな風にさえ無条件に思えてしまう。
「初めまして、フルール総督。ずっとあなたにお会いしたかった」
「あら、こんなお婆ちゃんなんかにですか?」
「はい。私と同じ女性でありながら、長年立派に国主を務めておられるあなたに、深い畏敬を抱いておりましたもので」
「まあ! それはそれは、こちらこそありがとうございます」
そう答えながら、深々とお辞儀をしてみせるフルール総督。
釣られるようにユリの方もまた、自然と頭が垂れた。
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