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W 021話 訓練、訓練、また訓練 

 1941年◯月◯◯日 『南洋諸島のとある島の上空』


 日米関係は悪化の一途を辿っていた。

 日本としては関係改善の努力はしていた。

 野村吉三郎特命全権大使をアメリカに派遣し、悪化する両国の関係を何とか修正しようと努力している。

 しかし、未だその成果は出ていない。


 そんな中、南洋諸島において真っ青な雲一つ無い大空で、メーコン型飛行船が艦載戦闘機「(はいたか)」の発艦、回収訓練を行っていた。

(はいたか)」はカーチス社製のF9C戦闘機の日本名である。


 飛行船内に設けられた狭い管制室より管制官が緊張を讃えた顔で指示を出す。

「発艦よろし! 初号機発艦!」


「初号機発艦!!」

 (はいたか)初号機のパイロットが復唱し、機体を飛行船より発艦させ大空に飛び出していく。 


 管制官は初号機が充分に離れた事を確認すると次の指示を出す。

「発艦よろし! 弐号機発艦!」


「弐号機発艦!!」

 (はいたか)弐号機のパイロットが復唱し、機体を飛行船より発艦させ大空に飛び出していく。


 管制官は弐号機が充分に離れた事を確認すると次の指示を出す。

「発艦よろし! 参号機発艦!」


「参号機発艦!」

 (はいたか)参号機のパイロットが復唱し、機体を飛行船より発艦させ大空に飛び出していく。


 次々と発艦していく複葉戦闘機。いや複葉戦闘爆撃機だ。

 F9C戦闘機の武装は機銃しかない。 

 しかし(はいたか)は改装され小型爆弾を2発搭載できるようになっていた。


 これは史実における伊25号潜水艦の零式小型水上機が改装され、本来は機銃しか積んでいなかった所を爆弾も搭載できるようにした例と同じ様な改装の仕方である。


 爆弾も搭載できるようになった「(はいたか)」の発艦、回収訓練は連日行われていた。

 時には夜間訓練も行われている。


 日本海軍が導入したメーコン型飛行船は広い南洋諸島を短時間で哨戒する事を任務としている。

 少なくとも海軍軍令部の参謀達や連合艦隊司令部はそう聞かされており、そうした任務に就いている事になっている。


 この猛訓練をしている飛行船も海軍軍令部の運用予定表では、哨戒任務に就いている事になっている。

 しかし、実際には哨戒任務には就いていない。


 そして、その訓練の真の目的を知る者は少ない……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 1941年◯月◯◯日 夜 『南洋諸島のとある島の海岸』


 綺麗な星明りの下、海辺に3隻の潜水艦が遊弋していた。

 その潜水艦から1隻あたり何艘かの小型の手漕ぎボートが出され、兵士を乗せ海岸に向かっている。

 オールを持った者達はタイミングを合わせて懸命に漕ぎ海岸を目指している。

 星の光に照らされる下で、波に翻弄されながらも小型ボートはようやく岸に辿り着いた。


 ボートに乗っていた兵士達は、ボートから降りると全員でボートを砂浜に引きあげ、その後に内陸に向けて移動を開始した。


 そして十数分後…… 


「遅い!! やり直し!! もう一度最初から!! 40分以内にやってみせろ!!」

 兵士達は怒鳴られていた。

「「「「「「はい!」」」」」」


 夜間の隠密上陸作戦の訓練。

 それが繰り返されている。

 太平洋の小さな島で、日々、厳しい訓練が繰り返されていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 1941年◯月◯◯日 夜 『南洋諸島のとある島近くの海域』


「艇降ろせっー!!」

「艇降ろしますっ!!」

 

 大型貨物船のスロープ上に改装された後部甲板より小型艇が滑り出し、派手な水しぶきを上げて海上にその姿を浮かばせた。

 1隻、また1隻と小型艇が海上にその姿を見せる。

 小型艇は直ぐにエンジンを始動し、予め決めてあった通りの隊形をとった。


 全ての小型艇が海上で隊形をとったのを確認すると、主計班に属する記録係が艦長に報告した。

「21分です!」

「ご苦労! 副長もう一度最初からやり直しだ。21分はかかり過ぎだ。15分。15分が最低ラインだ」

「わかりました! 艇隊の収容を急ぎ、完了ししだい、再訓練を行います!」

「うむ。できるまで訓練は終わらないと皆に伝えろ」

「わかりました!」


 厳しい訓練が繰り返されていた。

 この改装型大型貨物船はこの1隻だけでは無かった。

 同型艦が何隻も他の海域で同じように猛訓練を積んでいた。

 ある目的の為に……



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 1941年◯月◯◯日 夜 『南洋諸島のとある島の海岸』


 夜空を埋め尽くす星々の下、とある島の海辺に2隻の貨物船が遊弋していた。

 その貨物船から1隻あたり何艘かの小型の手漕ぎボートが出され、兵士を乗せ海岸に向かっている。

 オールを持った者達はタイミングを合わせて懸命に漕ぎ海岸を目指している。

 星の光に照らされる下で、波に翻弄されながらも小型ボートはようやく岸に辿り着いた。


 ボートに乗っていた兵士達は、ボートから降りると全員でボートを砂浜に引きあげ、その後に内陸に向けて移動を開始した。


 そして十数分後…… 


「遅い!! やり直し!! もう一度最初から!! 40分以内にやってみせろ!!」

 兵士達は怒鳴られていた。

「「「「「「はい!」」」」」」


 夜間の隠密上陸作戦の訓練。

 それが繰り返されている。

 太平洋の小さな島で、日々、厳しい訓練が繰り返されていた。


【続く】


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