93話 笑わなくったって
何時も読んで頂きありがとうございます。次の更新は8月22日を予定しておりますので、宜しくお願い致します。
ミントの肩の上にいるディトを撫でながら
「ディトもゴメンね…迷惑かけちゃって」
『キュイキュイ』
と鳴きながらディトが私の肩に乗ってきた。その時、大きな鷹の様な魔物がディトを握り飛び去ろうとしていた。猛禽類が獲物を持ち去るように…テレビで見た事のある光景だった。
「ディトー!」
顔が熱い…ポタッポタッと胸元が血で汚れていく。ディトを掴む時に私の頬をあの魔物の爪が掠めていったのだ。
「お、乙女の顔を傷つけるとは…そしてディトを連れ去るとは…断じて許せん!」
ありさの目に怒りの炎が灯った。地面から小石を拾い風魔法にのせて打った…何発か当たったみたいで
『ギィヤォゥ』
と鳴いたが致命傷にはなっていなかった。バサバサと翼を羽ばたかせ魔法が届かない所まで飛んで行ってしまった…。
「ディト…ディトが…」
私が崩れ落ちそうになった時、ミントの大きな手が私の肩を掴み
『追うぞ! しっかりしろっ』
と走り出した。
私は走りながら収納からポーションを出して飲む。パァっと光り傷は消えた。疲れていたはずの身体も回復したようで足に力がはいる。そうか…傷や怪我の回復だけでなく疲れも回復してくれるんだね。ポーションをアイシャとミントにも渡す。山の中を走り回ったので枝や草で腕や顔等の出ている部分に切り傷が出来たけれどそんな事では止まれない。みんなで必死に追いかけた。
あの魔物が高度を下げたようで見えなくなってしまったけど諦めない! アッチの方角に向かえば…。
『こっちだホッ!』
オルの声が聞こえた。姿は見えないのに? キョロキョロと空を見回すけどやっぱり居なかった…。えっ? 何処から…と考えていると、右ナナメの方角に白い何かが吹き上がった。急いでそちらに行くとその白い何かがオルの羽だという事がわかった。オルが私達をそこへ導く為に?
藪を掻き分けてその場に着くとあの魔物に白い羽が無数に刺さり倒れていた…。傍らにはオルも倒れている、ディトはオルに寄り添っていてキュイキュイと鳴いている。
「嘘…嘘だよね…オル、オル…」
自然と涙が流れた。傷だらけの顔にしみる…
「オル…ねぇオルってば…」
立ち尽くす私の肩を叩きミントが
『何をしている、早くオルにポーションを飲ませてやれ。大丈夫だ、まだ生きている』
握りしめていたポーションをオルの嘴に近づけるとオルが嘴を開いたのでポーションを流しこんだ。
『ふぅ~飛んでいたらディトを見つけたから追ってみたホッ。僕よりデカイから頑張って沢山の羽を撃ったホッ』
「オル~ゴメンね…迷惑かけてゴメン。それとディトを助けてくれてありがとう」
『ディトはもう仲間だホッ、仲間を助けるのは当たり前だホッ』
走り回って疲れてしまった私達はこの場所で1泊する事にした。ポーションで疲れと傷を癒してあの憎っくき魔物を検索、検索っと!
フォーイゲル。爪と羽は武器や防具に加工できる、肉は筋張っているが煮込むとやわらかくなり美味しく食べられる。
フムフム…なるほどね、煮込み料理か…確か、大根に似た野菜があったっけ。今日はこのフォーイゲルのお肉と大根風野菜を煮込んでいくよ! 私とミントはフォーイゲルをアイシャは野菜類の下拵えオルはディトのおもりだね。グツグツと煮込んでいる間に寝る準備もしておこう! ミントとフォーイゲルを捌いていると、
『フフ…そういえばあの時自分の事を乙女と…フフ』
えっ? 今なんて? まぁ、あの時は驚きと痛さで冷静ではなかったけど…思い出して笑うなんて…ひどい! 私だって乙女だもん! ……多分。




