73話 ウドンゲの花の様な…
お城を出てしばらく走ると、小さな白い物が空を舞っているのが見えた。タンポポの綿毛の様な感じ? でもまだ花が咲いているのは見ていない。
「ねぇ、あの白いのって何かわかる?」
「白い物? そういえば飛んでますねぇ。そういえば見た事があったような…?」
アイシャが首を傾げて何か考えている。白い物を横目に車を走らせていると、白い物の数が増えてきた。車を停めて見ていると、どうやら前方の森から飛んで来ているのがわかった! 何だろう? 動物の毛? 綿毛? その白い物は車の周りにあるバリアの様な物にもくっついている。
見ているうちにもドンドンと数を増やしていて、目を凝らして良く見ると綿毛だった。綿毛の先には種が見えた。
「あぁ~タンポポみたいな植物があるんだね。暖かくなってきたから種を飛ばしているんだ…」
1人で納得しているとアイシャも車から降りてきて
「あっ! 思い出した…あれはユトンガの卵だ。あれは暖かくなって来た頃に大量の卵を散らすんですよ。人が住んでいる場所までは飛ばないみたいだけど、あれが肌につくと酷い痒みを伴って大変なんだよ!」
「ええ…種じゃなくて卵なの…」
「そうなんですよ。短時間しか飛ばさないんだけど、あの森の中には入らない方がいいですよ」
「そうなんだ…もし森に人がいたらどうなるの?」
「残念だけど、卵が大量についたら助からないでしょうね…肌を掻いて血が出てしまうとその血を吸って羽化して餌になっちゃいます…」
「怖っ! 何それ? 血を吸って羽化するの?」
「はい。遠くに飛んでいるのは半分死んでいる状態で痒くなるだけだけど、本体の近くのやつはまだイキイキしてるんで…ヤバいです」
「うへぁ~ヤダヤダ…さっさとこの場を走り抜けますか…」
車に戻って走り出そうとした時に森の中から2つの人影が出て来たのを見つけてしまった…。大量の白い綿毛に追いかけられているみたいだった。
『おいっ! さっさと車を出せ! あいつらを助けるぞ!』
とミントが叫ぶ。私はスピードを上げ2つの人影に向かった。近くに行くと2人…親子連れだった。
白い物が大量に付着していて、どう助けて良いのかわからない。聖域の中に入れると卵も入ってきちゃうし…一瞬、悩んだものの虫ならばって事で殺虫剤を振り掛けてみた…結果、卵は肌からポロポロと落ちたので、その隙に聖域に引っ張り込んだよ。多少血は出ていたけど、手からシャワーを出し殺虫剤を洗い流してバスタオルでくるんだ。その親子連れは気を失っていたので、気が付くまで寝かせて置こう。
それにしても、森の中はどうなっているのだろうか…近付かない方が良いのはわかっているけど、ちょっと見てみたい自分がいる。バリアの周りにはまだまだ卵が飛んでいる訳で…よし、実験してみよう! 先ずは虫除けスプレーを腕に念入りにふって…聖域から手だけ出してみた。卵は手を避けて飛んでいる。これなら大丈夫かな…。
マントを羽織って全身に虫除けスプレーをして森の中に入ってみたら、あったよ…ありましたよ、立派なウドンゲの花の様なデッカイ物が…。何本も何本も…。
私が知っているウドンゲの花は、クサカゲロウの卵で前の世界で何度か見た事があったんだ。凄く小さくて見つけるとハッピーだって聞いた事がある。場所によっては不吉な物って言われていたりするらしいけど。うわぁ~って見ていると白い大きな玉の部分がパカッと割れて、大量の卵が飛散した。




