30話 パオロ村が…
私が放った火の玉はそれぞれに当たり、動きが止まった。しかし、死んだ訳ではない…トドメをささなくちゃ…でも…あまりの大きさに脚がすくむ…
「おじさんっ大丈夫? 一体何があったの? このオークは? とにかくこの車の側は安全だから絶対に離れちゃダメだからね」
とアイシャが叫ぶ! そうだった…この状況を一番何とかしたいのはアイシャだ。戸惑っている場合じゃない!
この大きな魔物がオークなんだね。名前だけは知っていたけど…オークはまだ動けずにいる。やるなら今しか無い! 剣で切りつけてみたけど、オークって頑丈なのね…切りつけた私の腕が痺れたよ。
それならコレだ! 左手に炎、右手に剣の魔法剣だ! 切りつけると切れた所が燃え上がる。オークは大きいから脚や胴のアチコチを傷つける。何とか一体やっつけた。これはアイシャじゃちょっと無理だな…。一生懸命やっているけど、頑丈すぎて小さな傷しかつけていないみたいだ。取り敢えず後2匹。殺るしかない。がむしゃらに切りつけていく。ブスブスと煙をあげようやく3匹のオークを倒すことが出来た…。
ふぅ疲れたなぁ…逃げて来た村の人たちが言うにはまだ村にいるらしい。これは休んでいる場合じゃないね。村の人たちにポーションを使って傷を治し、無理矢理車に押し込んで村の入口に来た。
アチコチの家から煙があがっている。オークも見える範囲では5匹確認出来た…5匹か…今まではテムさんやらバリーさんやら冒険者が居たけど、今はアイシャと2人だけ…村の人もいるけど、オークに襲われたせいで車の中で震えていた。
どうしよう…考えていると、目の前で1人の村人が喰われた…あんなに簡単に…。まだ村の中には生きている人がいるかも知れない。どうしよう…頭が混乱する。私1人が助けに入っても喰われるんだろうな。車で突っ込んでみようか、それとももう少し考えてみようか。
もっと時間が欲しかった。そしてオルに顔を引っ掻かれた…
「考えている場合じゃないだろ。とにかく動くんだホッ」
私は車で村の真ん中に突っ込み、聖域の中から魔法剣を振り回す。アイシャは大声を張り上げ車の側に来るように村人たちに呼び掛ける。車に居た村人たちは音を出しオークを引き付ける。オルは空から村人がいる場所を私に教え、私は車に向かって走って来る村人たちの援護に火の玉を放る。
走って来た村人たちの中には戦える者もいたので、聖域の中から皆で協力しながら何とかオークを倒す事が出来た……
何時の間にか夜もふけていて…長い戦いだった。車にもたれ掛かるように座り込み、意識を失った…。
燻る煙の匂いと人びとの泣き声で意識を取り戻すと朝になっていた。フラフラと立ち上がり村を歩くと、アイシャが燃え崩れた一件の家の前で座り込んで泣いている。
あぁ…これがアイシャが住んでいた家なんだなぁ…間に合わなかったんだ。もっと早くにシブーチの町を出ていれば…途中で泊まらないで真っ直ぐに向かっていれば間に合ったのだろうか…何とも遣りきれない思いでいっぱいになった…
こんな時に何て声をかけたらいいのだろう? 私に何か出来る事があればいいのだけど…頭の中がぐちゃぐちゃで…ただただ泣くアイシャを無言で抱きしめて私も泣いた。
どれくらいの時間が経っただろうか…アイシャが立ち上がり私に言った。
「ありさ。私、1人になっちゃった。今すぐには無理だけど、必ず立ち直るから…だからありさの旅に私も連れて行ってほしい。もっと、もっと強くなるから」
アイシャとはこの村でお別れの予定だった。家族も居たし、きっと成長して冒険者になってアチコチ旅をして…でも帰って来るべき場所があったから。でもそれももう無い。なら、アイシャが一人前になるくらいは見守ってあげたい。私もこの世界では半人前だ。一緒に成長していこうか…
「うん。一緒に旅をしよう。お互い強くなろう。こんな哀しい思いをすることが無いように…」
先ずはこのパオロ村を何とかしなくちゃね。村の復興のお手伝い。家を建てる為の木材を空間収納に入れれば1回でかなりの量が運べる。オルに周辺の村や町に行ってもらい人手を確保するべく手紙を配ってもらった。手持ちの食糧品をコピーで増やし炊き出しも行った。1週間たつ頃には人手も資材も集まり復興が始まった。
ようやく村人たちも襲われた時の事を話せるようになり、あの日何があったのか聞ける事になった。
「あの日突然、フードで顔を隠したローブ姿の奴がやって来て、何やら呪文を唱えて村から出て行ったんだ。この辺じゃ見たことの無い奴だったから覚えてる。それで何だったんだって思ったけど…それから暫くしてオークが村に現れて…あんな事に…クッ…」
ローブ姿の奴…それってバリーさんの娘さんに呪いをかけた奴じゃ………。




