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肝試し【おばけとカフェと、オーナーと】
最後の客を見送り、札をひっくり返して「CLOSE」にする。まだコーヒーの香る店内でレジを締めていると、窓の外できゃあきゃあと姦しい若者たちの声がした。夏だからか、ここが飛び降りに適したスポットだからか、最近こういった肝試しの輩が多い。
この暑い中、真っ暗な海に行って何が楽しいのか。若いなあ、と窓の外を見ると、案の定大学生くらいのヤンキーっぽい男の子二人と、似たようなタイプに見える女の子、場違いにもワンピースを着た大人しそうな女の子が崖の方へと歩き去って行った。
自分にもあんな青春があったらよかったなあ、と感慨に浸っていると、五分もしないうちに通り過ぎたばかりの若者たちが駆け戻ってくる。
「……あれ?」
何かから逃げるように駐車場を飛び出していった車を見送り、私は浮かんできた違和感に首を傾げた。
「今、三人しか乗らなかったような……」
「三人で来たんだから三人で帰るだろ、そりゃ」
何をするでもなく窓の外を見ていたオーナーが、私に背を向けたまま断言する。
「そう……でしたっけ」
レジに鍵をかける私の目の端で、ちらりと白い布が揺れた気がした。




