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【1話30秒】BL掌編集  作者: 二ッ木ヨウカ


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岬【おばけとカフェと、オーナーと】

 開店前、カフェの前を箒で軽く掃く。どこかから飛んでくる枯れ葉や砂をちりとりに集めていると、背後から幾人もの足音が聞こえた。


「おはようござ――」


 朝から珍しいこともあるものだ。私が挨拶をしようと頭を上げると、いつの間にか背後に立っていたオーナーに手で目隠しをされた。


「な、何っ……」

「黙れ。見るな」


 耳元で低く囁かれ、おとなしく言う通りにする。

 ザッザッザッと近づいてきた足音が目の前を通り、そして崖の方へと消えていく。

 つん、と夏の磯の香りを何十倍にもしたような悪臭が鼻に突き刺さった。


「……もういいぞ」


 完全に音が聞こえなくなってから、オーナーに手を離される。左右を見回すが、どこにも人影はない。


「な……何だったんですか、今の」

「お前がなりたがってたやつだよ」


 そう言ってオーナーは少しだけ口角を歪めた。笑ったのかもしれない。


「お仲間になりたくなかったら姿を見るんじゃねえぞ、いいな」


 わかりました、と答えると、どうだかね、という表情でオーナーは肩をすくめた。



 ――そして、夜。


 私が看板をしまおうと表に出ると、またザッザッと足音が聞こえてきた。今度は崖の方からだ。オーナーに言われたとおり、じっと目を閉じてやり過ごす。

 ザッザッザッザッザッザッ……びちょ。


 朝と一つだけ足音が違ったのは、きっと気のせいだ。


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