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【1話30秒】BL掌編集  作者: 二ッ木ヨウカ


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さやかな

 雨戸を閉めようとすると、リン、と澄んだ音がした。

 気のせいだろうか、と首を傾げていると、もう一度リンと音が響く。

 何だろう。気になって裏口から外に出る。音の響いてくる方向に向かって歩いていくと、家の庭に祀られたお稲荷さんの前で狐が踊っていた。

 後ろ足で石の上に立ち、右前足に持った鈴の音に合わせてくるりくるりと回る。その度に、満月に照らされた被毛がキラキラと銀の光を反射する。ピンと立った耳、ヒゲの先、尻尾の先端に至るまで研ぎ澄まされたような美しさがあった。


 ――わあ……


 もっと近くで見たい。私が一歩踏み出すと、サンダルの下でぱきりと枯れ枝が音を立てた。

 がばりと狐が振り向き、大きく跳ねた。鈴を投げ捨て、四つ足で走り出す。


「待って!」


 鈴を拾った私は、その後を追って生け垣の間へと飛び込んだ。


 ――それが、長い長い旅の始まりになるなんて、その時はまだ知る由もなかった。


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