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さやかな
雨戸を閉めようとすると、リン、と澄んだ音がした。
気のせいだろうか、と首を傾げていると、もう一度リンと音が響く。
何だろう。気になって裏口から外に出る。音の響いてくる方向に向かって歩いていくと、家の庭に祀られたお稲荷さんの前で狐が踊っていた。
後ろ足で石の上に立ち、右前足に持った鈴の音に合わせてくるりくるりと回る。その度に、満月に照らされた被毛がキラキラと銀の光を反射する。ピンと立った耳、ヒゲの先、尻尾の先端に至るまで研ぎ澄まされたような美しさがあった。
――わあ……
もっと近くで見たい。私が一歩踏み出すと、サンダルの下でぱきりと枯れ枝が音を立てた。
がばりと狐が振り向き、大きく跳ねた。鈴を投げ捨て、四つ足で走り出す。
「待って!」
鈴を拾った私は、その後を追って生け垣の間へと飛び込んだ。
――それが、長い長い旅の始まりになるなんて、その時はまだ知る由もなかった。




