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散った
「どうしよ、すっげえ綺麗な人いた」
洗い場に戻ってくるなり、同僚はそんなことを言い放った。
「……モデルさんとかかな。連絡先聞いてみたら?」
どんな顔かなんて見たくもない。でもそれには気づかれないように、冗談めかした言葉を吐きながら忙しいふりをして食洗機に皿やコップを突っ込んでいく。
「いやー、気持ち悪いだろそんなの。彼女に怒られるし」
手から滑り落ちた皿が、シンクの端にぶつかる。そのまま床に落ち、甲高い音を立てて砕けた。
「失礼いたしました!」
条件反射で叫ぶ。
「あ、大丈……」
同僚が手を伸ばそうとしたところで、新たな客の入店を告げるドアベルが鳴ってしまう。
入るだけの食器を食洗機に詰め込み、ボタンを押す。バシャバシャと回り始めた機械の横で、バラバラになった皿を拾う。後ろからの店長の視線が怖い。多分また後で怒られるやつだ。
欠片をつまんだ指先に、チクリとした痛みが走った。
「いたっ……」
指先に小さく赤い粒が盛り上がり、そして一雫だけ垂れていった。




