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ぱちぱち
揺蕩う夜の海は黒くとろりとしていて、水面と空は遥か彼方で暗く溶け合っているようだった。
最後に残った線香花火を手渡すと、アルハヴトンはそれを他の手持ち花火と同じように横持ちにしようとして不思議そうな顔をした。
「あ、これはね、こうやって縦に……えっと、ピラピラした方を上にして持つの。足の上に来ないように気をつけて」
彼の故郷には、こういう花火はなかったのだろう。お手本を示しながら柊斗が火をつけると、アルハヴトンも同じようにした。
暗闇の中に、二つのオレンジの玉が浮かぶ。膨らんだ玉は小さな音を立てて火花を散らし、ジリジリと震える。
――海水浴に来て、バーベキューして、最後に花火。
盛りだくさんの一日だったはずなのに、終わってしまうとその短さに愕然とする。まだまだ物足りないのに。
思い返しているうちに、ぽとりと柊斗の手元から線香花火の玉が落ちる。続いてアルハヴトンの手元からも。
「ああ……楽しかったな、柊斗」
「……うん」
潮騒の響く闇の中、声を潜めて囁き合う。
これから来る秋に、気づかれないように。
「獣人国の留学生」番外編




