33/74
呼吸
真夜中に、不意に目が覚めることがある。
それは大抵、月明かりがきれいな夜だ。薄い銀色の輝きに室内は照らされていて、あれほどうるさかったはずの蛙は絶滅したかのように静かになり、耳が痛いほどの静寂が辺りを支配する世界。
そんな時、私は荒唐無稽な妄想に取り憑かれる――この世界のすべてが夜の眠りに閉じ込められてしまっていて、何かの手違いで私だけ目覚めてしまったのではないか。
ずっとこのままだったらどうしよう。
そんなはずないと分かっているのに怖くなるので、私は隣に眠る人の口元に耳を寄せることにしている。
すうすうとした小さな寝息は、怖がりな私の不安を吹き飛ばし、目を閉じて布団に潜り込む勇気を与えてくれるからだ。




