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朝焼け【幽霊とカフェと、オーナーと】
何をしていても、誰にも咎められない。どこにいても、邪険にされることもない。
(幽霊って、こんなに楽なんだ……)
カフェ二階の住居スペース。明るくなってきた室内をふわふわと漂いながら、私は開放感に浸っていた。
目の前のベッドでは、まだオーナーがすやすやと寝息を立てている。私は長い睫毛や整った鼻筋をじっくりとベッドサイドから眺め、しっとりとした質感の唇に指先を伸ばした。
もちろん半透明の人差し指はすり抜けてしまうのだけど、それでもどこか温かさを感じる気がするのだ。
じっとオーナーの顔を見つめていると、カーテンの間から不意に朝焼けが差した。
「ん……」
朝日が顔に当たり、オーナーが眉をしかめる。
眩しそうに薄く開いた目と、視線が合った。
「っ、ぁ、そのっ……!」
私が慌てて飛び退いた瞬間、オーナーの手が私を突き抜け、カーテンを引っ張った。再び薄暗くなった室内で寝返りを打ったオーナーは、また寝入ってしまったようだ。
(そ、そりゃそうか……)
目なんて合うはずがない。オーナーに私は見えないのだから。
よかった、と私はため息をつき――でも、どこか空虚な気がしてならないのだった。




