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何も変わらない
つま先が離れた、と思った次の瞬間、鈍い音とともに背中が床に叩きつけられた。カランカランと金属質な音も響く。
「っ、たた……?」
何が起きたのかわからず、ゆっくりと体を起こす。ぐるりと見回してしばらく考え、それからようやくカーテンレールが外れたことに私は気づいた。人間の体重を支えるには、この細い金属レールは役不足だったのだ。
ああ、と声を上げた私は、また床に転がって丸まった。紐で繋がったレールが、鳴子のように音を立てる。
――まただめだった。
タンスのポールもドアノブも、足がつくので思いきれなかった。高いところも刃物も怖い。
――なんで……自分は、こんなに何もできないんだろう。
ガラスの向こうには青く澄んだ空が広がり、鳥が飛んでいる。薄く開いた窓の間からは近くの学校のチャイムや道を走る車の音、工場の音などが聞こえる。
何も変わらない、いつもののどかな風景。
私にとって大切な人は、世界にとっては大切ではない。
――一人にしないって、言ったのに。
そして私が愚鈍で臆病なのも、その程度では変わりはしないのだ。




