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【1話30秒】BL掌編集  作者: 二ッ木ヨウカ


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光と騎士

 小さな衣擦れの音に目を開ける。頭を上げると、簡易式のテントから出ていく白い裾が見えた。

 横に置いていた長剣を腰に差し、自分も外に出る。夜明け前の、薄青色の闇の中に立つ、白い姿を見守る。

 世界に光が差し、あたりが赤く染まる。赤い輝きは白い衣をも鮮やかに染め、その前に広がる湖を、空を飛ぶ鳥を、浮かび上がらせていく。


「あっ……」


 後ろに立つと、華奢な青年が振り向いた。恥ずかしそうに頬の涙跡を拭う顔立ちは、この国の人のものではない。

 救世の御子。定期的に瘴気が増えて作物が生育しなくなり、魔物が増えるこの国を救うために異世界より呼び寄せられた存在。


「ごめん、ちょっと……前の世界のこと、思い出しちゃってた」

「いいえ、当然のことかと」


 当然のことながら、事前の合意や承諾などない。だから、彼の「大切な人」も向こうの世界に置いてきぼりだ。


「安心して、一番好きなのは君だから」


 私の視線に何かを感じたのだろうか。ふわりと笑う様子に、狡い人だ、と思う。


 ――でも、あっちのほうが、私より大事なんでしょう?


 聞きたいけれども、そんな質問に彼は答えてくれないだろう。

 無言で隣に立つ。

 透明になりゆく空気の中、空と湖の青と草の緑が鮮やかになる様子を、ただ眺めて目に焼き付ける。

 今、この景色を彼と共有しているのは、自分だけなのだから。


「神の僕は愛を謳う」前日譚

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