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【1話30秒】BL掌編集  作者: 二ッ木ヨウカ


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時計の針

 机に開かれた読みさしの本、蓋が開いたままのインク壺、出しっぱなしのペン——その部屋は、主の訪問を今でも待ち続けているようだった。その上にうっすらと積もった埃だけが、時間の経過を表している。

 窓を開けると、陽光がキラキラとほこりに反射した。

 彼が最後に見ていたのは何の本だったか。軽い好奇心に駆られて本の表面を手の甲で拭う。何のことはない、手紙の文例集だ。隣の紙には、それを見て書かれたのだろう、私の名前が入った時候の挨拶だけが残っていた。


(……何の用だったんだろう)


 心当たりはなかった。


 ——だがもう、聞くことのできる相手はいない。


 しばらく考えてから本を閉じ、書棚の開いた部分に戻す。

 階下から、時計の鳴る音が聞こえた。

 柔らかく吹き込んだ風が、私の髪とカーテンを揺らしていく。


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