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時計の針
机に開かれた読みさしの本、蓋が開いたままのインク壺、出しっぱなしのペン——その部屋は、主の訪問を今でも待ち続けているようだった。その上にうっすらと積もった埃だけが、時間の経過を表している。
窓を開けると、陽光がキラキラとほこりに反射した。
彼が最後に見ていたのは何の本だったか。軽い好奇心に駆られて本の表面を手の甲で拭う。何のことはない、手紙の文例集だ。隣の紙には、それを見て書かれたのだろう、私の名前が入った時候の挨拶だけが残っていた。
(……何の用だったんだろう)
心当たりはなかった。
——だがもう、聞くことのできる相手はいない。
しばらく考えてから本を閉じ、書棚の開いた部分に戻す。
階下から、時計の鳴る音が聞こえた。
柔らかく吹き込んだ風が、私の髪とカーテンを揺らしていく。




