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忘れられた手紙
家具付の部屋は少し割高だが、初めての一人暮らしにはありがたい。
段ボール数個とカラーボックスだけの荷物はすぐに片付いてしまった。引っ越し屋さんに渡した余りであるところのペットボトルを開け、ぬるい水で喉を潤す。
自分の部屋の窓から山が見える、ただそれだけのことがひどく気になって、何度も外を眺めてしまう。ガラス戸を開けると、どこか違和感のある空気が私を包み、そして呼吸を通じて中に入ってくる。
ぱさり、と、鳥の羽ばたきのような音がした。
「……ん?」
振り向くと、部屋の中央に何かが落ちていた。さっきまではなかったはずだが、家具の間にでも挟まっていたのだろうか。
近寄って拾い上げてみる。茶色く焼けてしまった封筒だ。しばし迷ったものの、好奇心に負けてハサミを手に取る。
(自分の部屋から出てきたものなんだし、昔のものっぽいし、宛名も差出人もないから誰のものかもわからないし……)
言い訳をしながら、中の便箋を広げる。
――はじめまして。突然の手紙で驚かせてしまってごめんなさい。
手紙は、丁寧な字でそう書き始められていた。




