寄生存在
蓮斗「後は、お前だけだ.....!」
そう、怨嗟に近い声を上げながら祇梨蓮斗は精神干渉の暴走体に1歩1歩に近づく。そして、5歩目を踏み出したと同時に暴走体が攻撃を開始した。
暴走体「Ja-dld~sla'krid'a'!!」
暴走体は意味不明な声を発しながら祇梨蓮斗の命脈を断つ為に腕を変形させ攻撃する。祇梨蓮斗はフェルテレスと暴走体を切り離す際に魔力のほとんどを消耗し本調子ではない。しかし、暴走体程度の力ではそんな万全とは程遠い祇梨蓮斗に触れる事すら許されなかった。
蓮斗「危ねぇよ。」
変形した腕を避けると同時に地面に落ちていた瓦礫を踏み抜く。すると瓦礫はシーソーの容量で片側が跳ね上がり暴走体の体に激突する。
暴走体「!?」
蓮斗「やっぱお前、肉体を構築しているのか.....精神生命体は物質体が無ければ現世に干渉できないってのは本当だったんだな。」
新たに分かった事を口にしながら祇梨蓮斗の蹴りが暴走体の顔にめり込んだ。が、その瞬間、暴走隊は醜悪な笑みを浮かべた。
蓮斗「!!」
蓮斗「火系統中位魔法・炎槍」
ナニかを感知した祇梨蓮斗は即座に魔法で暴走体を弾き飛ばす。が、異変は既に体に現れていた。
蓮斗「(ちっ...触れた場所がおかしいな。どういうからくりだ?いや、それより暴走体自体が特異な能力を扱えるものか.....?)」
足に起きた異変、それは祇梨蓮斗の足を何かが侵食し色が変色するものだった。
蓮斗「(壊死、と言うよりは何かが入り込んできたのか?どちらかと言えば組織の破壊と言うより侵入に近かった様にも感じる.....どういう事だ?)」
今自身の身に起きた出来事が祇梨蓮斗の思考を乱す。体の異変、暴走体が浮かべた醜悪な笑み。今この状況で起きた全ての事象が怪しく映る。
蓮斗「とりあえず、様子見と行こうか。」
蓮斗「闇系統上位魔法・黒獣之群」
暴走体「jsiruskworisjwial!」
暴走体は黒獣の群れが現れた瞬間、行動を開始する。群れに正面から突っ込み次々と首を刎ねて行く。そして、意味不明な出来事が起き始める。
蓮斗「(俺の操作から外れた.....?いや、魔法そのものが乗っ取られたのか!?)」
首を刎ねられ、消える筈の黒獣が次々と起き上がり祇梨蓮斗へ牙を剥く。襲い来る黒獣の攻撃を避けながら祇梨蓮斗は暴走体の能力について考える。
蓮斗「(魔法の維持自体には俺の魔力は使われていない、つまりはあの暴走体自身の魔力って事だ...そして何より不思議なのが乗っ取られ対象だ。精神干渉の通じる生物が相手ならまだしも、対象は意思も自我も無い魔法。それをどうやって.....)」
祇梨蓮斗は考えながら攻撃を捌き続ける。そして、暴走体を観察しているとある事に気が付く。
蓮斗「(そう言えば、あいつさっきから明確な意思持って動いてないか?)」
祇梨蓮斗が目をつけたポイント、それこそが暴走体の正体に迫る最大の鍵だったのだ。
蓮斗「(暴走体、その上精神干渉の防衛機能だ。自我がある事はまず無い。だが、さっき触れた時に見せた醜悪な笑みに加え、まともではないが言葉を発していた。こんな物、精神干渉の効果には無かった筈...)」
祇梨蓮斗は魔法が好きだ。故に、幾つもの魔法書を読み漁り、様々な系統についても学んだ。だからこそ、精神干渉系には無い効果であると理解したのだ。
蓮斗「お前、本当にただの暴走体か?」
その一言を聞いた暴走体の動きがピタリと止まった。その顔には歪な表情が浮かび、ドロドロとした腐った様な眼差しを祇梨蓮斗へと向ける。
暴走体「.....く....つ.....か.....」
蓮斗「喋った....」
暴走体は途切れ途切れながら言葉を発した。そしてその言葉は何か意味のあるものだと祇梨蓮斗は直感的に理解する。
蓮斗「やっぱり、お前精神干渉の防衛機能とかじゃ無いな?」
暴走体「......!!」
その発言を聞くと同時に暴走体は笑い声をあげた。それは自我の無い怪物などでは無く、明確な意志を持って行動する存在だったのだ。
蓮斗「精神干渉に無い効果があると思えば、お前の力は精神干渉なんかじゃなく、寄生と言った方が正しいんじゃないのか?」
暴走体「さス、がに、きがつくカ....オマエノ、イうトオり、だ.....ワタしの名ハ、モリアーレ、テルルソン、だ.....特殊、異能は、寄生、だ.....」
蓮斗「モリアーレ.....確かその名はアルドンスの将軍の名前だったな。なるほど、合点がいったよ。少し前までアルドンスは平和な国だった。だが、将軍が変わってから国の方針が変わったと聞いていたが、全部お前の仕業か。」
モリ「如何にも、わたし、の、魔力を、国民、全員に寄生させ、操って、いた。」
蓮斗「なるほど、だったらお前は正真正銘のクズ人間って認識でいいのか?」
モリ「なんとでも言え。」
蓮斗「(此奴、さっきと比べてよく喋れる様になってきたな...時間経過による自己進化、の線は無いな。単純に独立して暫くはまともな思考ができないのか.....理由はどうであれ、厄介だな。)」
祇梨蓮斗が厄介と評したのには理由があった。魔力の殆どを消費しているとはいえ、祇梨蓮斗の特殊異能を無視した攻撃を先程モリアーレは行った。
蓮斗「(ほぼ魔力無しの状態で、サシでやって勝てるか怪しいな...荒山さんはフェルテレスと負傷した清水団長の避難について行って貰ったから、近場には.....あ。)」
どう戦うか、思案をしていると祇梨蓮斗はとある事に気がついた。一つ、置いてきた男の存在を。
モリ「お前を倒して、その肉体を貰う...」
蓮斗「んー、無理だと思うぞ?」
モリ「.....その根拠は?」
蓮斗「簡単だよ、お前の相手は俺一人じゃないんだから。」
モリ「何を.....」
祇梨蓮斗の発言に困惑したモリアーレだったが、次の瞬間にはその言葉に意味を理解する事になった。
?「次元系統最上位魔法〝空縮貫槍〟」
モリアーレに向け放たれる特異な魔法。モリアーレはギリギリのラインでその魔法を躱す事は出来た。だが、振り下ろされた薙刀は、避ける事は出来なかった。
モリ「がぁ.....!?」
蓮斗「随分遅かったな、天羽。」
天羽「うるせぇ、お前が獣の処理全部俺に押し付けたからだろ。んで?あれは何だ?」
蓮斗「寄生存在、モリアーレ・テルルソン。今回の侵略戦争を企てた首謀者にして、アルダンスの将軍だ。しかも生身が触れただけで寄生される。オマケに、生物系の魔法も寄生される。」
天羽「あれまぁ、そいつは厄介だな。それにしても、お前なんでそんなに魔力消耗してんだ?」
蓮斗「フェルテレスからアレを分離させる為に冠位の権能を使った。お陰で分離自体はできたが、魔力はほぼスッカラカンだ。」
天羽「冠位の権能ねぇ...お前よく意識保てたな。」
蓮斗「今も倦怠感と吐き気がやばいぞ。天羽の魔力少し分けてくれないか?」
天羽「いいぞ。お前の魔力3割程度渡すよ。」
蓮斗「そんなに渡して大丈夫か?」
天羽「へーきへーき。これでも保有魔力は多くなってるからな。お前ほど馬鹿魔力じゃねぇけどな。」
蓮斗「馬鹿魔力言うな。」
そう会話を交わした後祇梨蓮斗と天羽綾人が手をかざす。魔力の譲渡を行っていると今まで空気だったモリアーレが口を開く。
モリ「話は終わったか?」
天羽「なんだお前、律儀な奴だな。もう準備も済んだしいつでもどーぞ。」
モリ「そうか、ならば始めようか!」




