気まぐれ
蓮斗「闇系統二重詠唱〝黒天来・龍軍跋扈〟」
天羽「次元系統最上位魔法・空縮貫槍〝乱〟」
祇梨蓮斗と天羽綾人が同時に動き出す。放たれる魔法全てに怒りと鬱憤を乗せ敵を屠り去る。
蓮斗「ここまで我慢したんだ、少し派手に暴れても文句は言われねぇだろ!!!」
天羽「とりあえず、獣は全部殺処分だな。」
魔法を発動と同時に両名は獣達へ向け凄まじいスピードで突進する。繰り出されたのは正面からの蹴りと、薙刀による横一文字の斬撃だった。
荒山「はっはっは!鬱憤が溜まってたんじゃろうな!あそこまで荒ぶる二人を見たのはあ奴らの単独戦以来じゃわ!」
そう2人の戦闘を笑いながら見るのは国防軍統括総司令官の荒山厳十郎だった。荒山厳十郎は自身と同じ冠位代行執行官のフェルテレス・サルジオンと激戦を繰り広げている真っ最中だった。
荒山「儂らも若い者には負けてられんなぁ!!」
そう言い精神干渉の暴走状態に陥っているフェルテレスに向かい笑い飛ばす。
荒山「儂らも本気で行こうか!」
荒山「重力操作〝加圧・500〟」
荒山厳十郎はフェルテレスが存在する空間の重力のみを倍加させる。その圧は凄まじく、フェルテレスの体は地面へめり込む。
荒山「重力操作〝重力拳〟」
地面にめり込むフェルテレスに向かい荒山厳十郎は近接戦闘に持ち込む。
フェル「物質操作〝無気領域〟」
暴走状態とは言え、フェルテレスもまた人類最強の一角、周辺の空気を無くし荒山厳十郎の行動抑止に動く。突然の大気の消失、それには荒山厳十郎も驚愕する。が、物質操作は長くは続かなかった。
蓮斗「万象之拒絶〝世界拒絶〟」
獣を蹂躙する祇梨蓮斗からの援護。祇梨蓮斗の特殊異能の発動によりフェルテレスの「無気領域」は崩壊する。その瞬間に、顔に強烈な痛みが走る。
荒山「大気が無い領域、つまりその場は真空状態となり、周囲から大気が急速に流れ込む。その際に凄まじい嵐や爆発的な轟音、周囲に壊滅的な環境破壊が発生する。それは避けたかったのでな、小僧に手を貸して貰ったわ!」
そう言いながら荒山厳十郎はフェルテレスと近接戦に臨む。が、フェルテレスにいくら攻撃を加えようが、痛みを感じる素振りを一切見せない。
荒山「(痛覚が無いのか?これも精神干渉が暴走し、もたらされた影響の一つか。なら...)」
荒山「一点集中〝重力波〟」
荒山厳十郎はその詠唱と共に人差し指をフェルテレスに向けた。瞬間、フェルテレスの肩が弾け、血が吹き出した。
フェル「.....!?」
荒山「まだまだ行くぞ。」
その言葉と同時、荒山厳十郎は凄まじい力で大地を蹴った。その瞬間瓦礫が飛散し、空中に浮き上がった。それと同じタイミングで詠唱した。
荒山「重力操作〝重力加速〟」
その詠唱が唱えられると同時に宙に舞った瓦礫がフェルテレスに向かい加速する。直撃の寸前、フェルテレスは地中の砂鉄を操作し槍を作り上げ、瓦礫を全て弾き返した。が、一瞬荒山厳十郎の姿を見失う結果になった。そして、
荒山「重力操作反転〝超過斥力・万里飛体〟」
突如として背後に現れた荒山厳十郎の渾身の一撃でフェルテレスの体は抗いようの無い凄まじい力によって前方へと吹っ飛ぶ。障害物に接触し、骨は折れ、に具体は千切れ飛び、フェルテレスの通った後には幾つもの血の跡が着いた。
フェル「........!!」
辛うじて生きているフェルテレスの肉体は既に再生を始めていた。だが、先程までの超速再生を行うことは出来ず、ただ激痛に苛まれながら自己治癒力のみでの再生だった。
荒山「やはりそうか、お主の今の状況は精神干渉の暴走から来る魔力の異常回復と術の範囲超化、異常魔力による人間性の喪失。だから、本来であれば使える筈の無い、お前が夢想した魔法を使えた。」
地に伏し、再生を待つフェルテレスに荒山厳十郎はそう語りかける。そう、フェルテレスが暴走状態に陥いって初めに使った魔法〝万質之獣災〟は実現するにはフェルテレスの脳の演算能力では使用は夢のまた夢程の代物だった。だが、異常魔力と人間性の喪失、術の範囲超化によって奇しくも、発動が可能になった。そして使えなかった事にも一つの理由があった。
荒山「...使用すれば、お主の脳は焼き切れ二度と人間として生きる事は出来なくなる。そんな理由もありお主は使わなかった。じゃが、精神干渉の暴走でお主はその自身に課した禁忌を犯し、それを使った。お主、最早人には戻れぬ。」
荒山厳十郎が口にした言葉、それは残酷で、冷たい現実を突き付けるものだった。フェルテレスの意識は先の攻撃でほんの少し目覚めていた。だが、自身がどうなるのか、その小さな意識でなんとなく察していたのだ。
フェル「あら、やまさん........」
荒山「フェルテレス.....!?意識が戻ったのか!?」
フェル「ほんの、少しだけ.......」
荒山「...なぜお主は、精神干渉にかかったんだ?いつもお主であれば、精神干渉なぞ弾けた筈じゃ...!」
フェル「焼きが、回ったん、ですかね.....私は、国の民を、人質に取られ、抵抗が、出来なかかった...!でも、それが間違い、だった...本当に、申し訳ありません....!」
荒山「もういい、もう、喋るな...生きてさえいれば、償う事だって出来る筈じゃ。じゃから.....」
フェル「荒山さん程の、人が、気付かない訳、無いじゃないですか.....」
荒山「.......」
フェルテレスのその言葉に荒山厳十郎は押し黙る。
フェル「私に、掛けられた、精神干渉の暴走は、もう、二度と解ける事は、ありません...。止める方法は、1つ。私を、塵一つ残さず消し去る事です...!」
荒山「何を馬鹿の事を.....!」
フェル「貴方の、能力なら出来る筈です...!だから、お願いします...これ以上、誰も傷付けたく、無いんです.....!」
そう言うフェルテレスの目には涙が浮かんでいた。荒山厳十郎はしばらく葛藤する。そして1分程経ってからゆっくりと立ち上がった。
荒山「お主とは、もっと、多くのことを語り合いたかった。すまん、儂を恨んでくれても構わん。だからどうか、安らかに.....!」
フェル「うらみ、ませんよ.....ありがとう、ございます.....荒山、厳十郎......」
その言葉と共に押さえ付けていた暴走が再び牙を剥き始める。荒山厳十郎は右腕を上げフェルテレスを見る。その目には怒りも憎しみも無く、ただ1つ、後悔だけが映っていた。
荒山「許せ、フェルテレス....!」
その言葉を言い終えると同時に荒山厳十郎は腕を振り下ろした。友の最期の願いを叶える為に。あ、腕は振り下ろす事は無く、肩の高さで止められる結果になった。
荒山「.....お主は!」
蓮斗「すみません、荒山さん。俺はこいつがここで死ぬ事を許せません。確かに、今回の件は此奴が主犯では無い事は分かっています。だが、此奴のせいで多くの団員や、民間人が負傷しました。死傷者も出ています。だから俺は、此奴に生きて、罪を償わせます。」
荒山「お主の気持ちも痛い程分かる...!だが、不可能なんじゃ!此奴はもう...!」
蓮斗「.....方法はあります。」
荒山「!?」
荒山厳十郎は祇梨蓮斗のその言葉に耳を疑った。
荒山「あるのか、此奴を生かす方法が.....!?」
蓮斗「確証は、ありません。ですが、一つだけ、小さいですが可能性はあります。」
荒山厳十郎はその言葉を聞き希望と一抹の不安を覚えた。だが、そんな不安を今覚えている暇は、荒山厳十郎自身、無いと理解していた。
荒山「.....分かった!その策を試してくれ!」
蓮斗「分かりました。」
そう言い祇梨蓮斗はフェルテレスと向き合う。そして語り出した。
蓮斗「私の魔法は闇を用いて物理干渉で相手を攻撃するのが主だ。だが、その本質は闇に干渉して闇を自身の魔法に取り入れるのが私の魔法の本質だ。つまり闇があれば私の魔法はどんな形であれ発動する。それが形の無い精神に対しても、だ。」
荒山「......」
蓮斗「俺の目にはお前のその精神干渉の暴走は闇と認識出来る。。だから、それを私の魔法で切り離す。成功する確証は無いがな。」
蓮斗「闇系統最上位魔法・黒刀夜神〝精神〟」
蓮斗「(番外の発狂凶声の精神に干渉する部分だけを抽出、黒刀夜神に統合する...!頼む、成功しろ!)」
その思いと共に祇梨蓮斗の黒刀がフェルテレスを捉える。肉体ではなく精神そのものを切り離す魔法、それは人に許されない神の領域。魔法を発動した瞬間、祇梨蓮斗を想像を絶する痛みが襲う。
蓮斗「ぐ、ぐぅぅぅ!!」
祇梨蓮斗は苦悶の声を上げる。だが、魔法を解かず精神を断ち切る事に集中する。
蓮斗「ダメ、か.......!?」
徐々に黒刀が崩壊を始める。やはり、精神その物を切り離すという神の領域の技は実現不可能なのだ。
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覇王「んーーーーーー」
殺戮神「どうした、兄者?」
覇王「いやぁ、蓮斗君がさ、敵を救おうとしてるんだ。それも神の技で。」
殺戮神「.....今の奴の力量では、共倒れするのが一番確実な結果だろうな。なぜ祇梨蓮斗は自身を殺そうとした者を生かそうとするのだろうな。」
覇王「さぁ、人間が考える事なんか俺には理解出来ん。ただ.....」
殺戮神「ただ?」
覇王「出来る限り、ハッピーエンドに近づけたいんじゃないか?」
殺戮神「死人が出ているのにか...?」
覇王「それを分かった上での行動だろうな。たとえどんな修羅の道でも彼は自身の理想の為に進むだろうな。」
殺戮神「やはり、人間が考える事は分からんな。」
そう言い終えると殺戮神が机を指で1回小突いた。
覇王「良いのか?お前はあまり干渉を好まないのに、どういう心変わりだ?」
殺戮神「さぁな、ただの気まぐれだ。」
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蓮斗「ぐ、ぐぅぅぅぅぅ!!」
蓮斗「(あと少し、何が足りない!?精神の境目は見えてる!あとは何が足りない!?)」
祇梨蓮斗は未だ精神の分離に成功していなかった。黒刀夜神の持続終了まで残り20秒。祇梨蓮斗に焦りの色が浮かぶ。そんな時だった。
蓮斗「っ!?」
祇梨蓮斗の体に異常が起きた。何か、得体の知れない物が体の中に入ってくる感覚。直感的に生命体では無く、一種の力のように感じた。
蓮斗「なんだいきなり.....!?」
その言葉と同時に一つの声が聞こえた。
「1回だけ俺の権能を貸してやる。その権能を使ってソレを成功させてみろ。」
祇梨蓮斗はその声に聞き覚えがあった。だが、どうしても思い出す事は出来なかった。だが、そんな事はどうでもいい。千載一遇のチャンス、逃す手はなかった。
蓮斗「権能解放〝理断絶〟」
祇梨蓮斗は本能的にその権能がどういう物なのか理解した。そして刀をもう一度振り上げ振り下ろす。
蓮斗「闇系統最上位権能統合魔法〝闇魔・理斬〟」
その特殊詠唱と共に振り下ろされた刀はフェルテレスの芯をを捉える。そして、
蓮斗「うぁぁぁぁぁぁぁ!!」
咆哮と共に振り抜かれた刀は精神と精神の狭間を切り裂き分離に成功した。
蓮斗「はぁ、はぁ、はぁ.....」
振り抜くと同時に祇梨蓮斗は凄まじい倦怠感と吐き気に襲われていた。
蓮斗「(人では扱う事の出来ない理外の力を使った反動か.....!魔力の殆どを持ってかれた!)」
魔力枯渇寸前の状態異常。人の身の上、未熟な体で冠位の力を振るった代償は少なからず大きかった。だが、それに見合う成果はあった。
フェル「こ、ここは......」
荒山「フェルテレス...!祇梨蓮斗!よくやった!」
暴走が解かれ正気を取り戻したフェルテレスが意識を取り戻したのだ。祇梨蓮斗は意識を取り戻したフェルテレスに言葉を突き付けた。
蓮斗「フェルテレス...!お前は一生掛けて被害者達に詫び続けろ!今言えるのは、それだけだ.....!」
そう言い終えると祇梨蓮斗はとある存在に目を向けた。
蓮斗「あとは、お前だけだ......!」
フェルテレスの体から切り離され独立した精神干渉の暴走体だけだった。




