七つ目の最上位魔法
フェル「ぐぁっ!?あがぁぁぁぁ!?」
荒山「なんじゃ!?」
冠位代行執行官同士の激戦、それは壮絶な物だった。国防軍第一団隊副団長、小鳥遊優里ですら割って入る事が許されない人間の極致に至った者同士のぶつかり合い。今そこに異変が起きた。
小鳥遊「突然どうしたんだ?頭を抑えてる.....?」
荒山「何か分からんが、今が攻め時じゃ!小鳥遊、清水も攻撃を加えろ!」
小鳥遊&清水「了っ!!!」
突如頭を抑え苦しみ出すフェルテレスの様子を見て荒山厳十郎は即座に指示を飛ばす。その指示に従い2人は即座に攻撃に移る。
小鳥遊「雷系統上位魔法・雷帝回蹴」
清水「水系統最上位魔法・水龍衝波」
2人の魔法は確かに命中した、なのにも関わらずフェルテレスは傷を負うどころかその魔力が増えていたのだ。
小鳥遊「嘘....」
清水「総司令官、あれが彼の能力なんですか!?」
荒山「いや、奴にそんな能力は無かった筈じゃ。それにあの苦しみ様、さっき伝令があった精神干渉の影響か.....?」
そう、精神干渉については宵ノ森湊からの情報伝達によりこの戦場に立つ全ての者に行き渡っていた。だがしかし、一つだけ知られていない情報があった。それは精神干渉を行った人物特定の行動をとった時、精神干渉の防衛機能が1人に集中するという物だった。そして、その行動とは術者の死亡又は行動不能になった場合。その情報はどの情報よりも厳しく制限され、それを知るものは術者本人しか居なかったのだ。
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清和「あれ、俺やらかした?」
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祇梨清和の介入により奇しくもその機能が発動し武装国家アルドンスに掛けられた全ての精神干渉の防衛機能が冠位代行執行官フェルテレス・サルジオンに集中したのだ。
清和「「あーあー、荒山聞こえるか?」」
荒山「祇梨!?どうしたんじゃ突然。」
清和「「多分そいつがおかしくなったの俺のせいだ。武装国家アルドンスにかけられた精神干渉の防衛機能がおそらくそいつ1人に収束してるっぽい。こっちの厄災モドキの処理が終わったらすぐそっちに向かう。耐えれそうか?」」
荒山「お主な....なに、簡単な事よ。お主はお主のやる事を済ませればいい。」
清和「「そうか、了解した。」」
そう言い終えると祇梨清和からの通話は終わった。
荒山「さてと、ここからがキツイぞ?」
小鳥遊「わかっています。」
清水「新島さん、都内全域に総司令官の声が届く様にしてください。」
新島「「了解です....いつでも行きます。」」
清水「総司令官、お言葉を。」
荒山「うむ。」
荒山「「国防軍諸君、我々の別働隊が敵将の首をとった。後は雑兵の掃討戦だ。傷を負い体力が限界な者も居るだろう。だがあともうひと踏ん張りだ。今日勝ちを手にし、国を守ろうではないか!」」
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団員「確かに、もう疲れたなぁ.....」
団員「でも、あと少し勝てるんだ!」
団員「お前らァ、命捨ててでも勝つぞぉ!!」
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荒山厳十郎の見立て通り、団長副団長を除いた団員達は遠の昔に限界を迎えていた。だが、勝利目前という事実を耳にし指揮は跳ね上がり、団員達に活力をもたらした。その上、指揮が上がったのは何も国防軍だけではなかった。
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天羽「おぉおぉ、いつの間に敵将の首とったんだろうな。情報によれば敵将はアルドンスに居た筈だが.....どういう事だ?」
蓮斗「深く考えなくても良いだろ。俺達のやることは1つ、民間人を守る事と自分の身を守る事だ。」
マッド「君が噂の少年かぁ、全部終わったらゆっくり話を聞かせてくれ。」
蓮斗「お易い御用です。」
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荒山「さて、儂らも最後の戦いじゃ。今のやつは精神干渉の防衛機能で強化されている可能性が高い。もしそうなら、奴の物質操作の能力も向上してるはずじゃ。気を抜くんじゃないぞ?」
小鳥遊&清水「了。」
フェル「物質操作〝万質之獣災〟」
小鳥遊「来たっ!」
清水「物質操作....やっぱり厄介だ....!」
荒山「「行くぞ、国防軍!!」」
団員達「おぉぉぉぉおお!!」
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蓮斗「始まったか。第二真祖のお陰でここが一番被害が出る事は認識済み。だったらやる事は一つだよな?」
天羽「もちろん。」
蓮斗「じゃあ、行こうか。」
祇梨蓮斗と天羽綾人が居る場所は第二真祖マッドフェイドの能力で予知された冠位代行執行官を除く襲撃地点で最も被害が大きくなるとされる場所だった。話をしていると冠位代行執行官フェルテレス・サルジオンが発動させ顕現した獣達が出現を始める。それを合図に2人は同時に魔法を発動させた。
蓮斗「闇系統統合根源魔法」
天羽「空間系統変容根源魔法」
蓮斗「黒王戦鬼〝骸神〟」
天羽「改元之神」
天羽「ん?統合?何と統合したんだ?」
蓮斗「死霊系統だな。使える訳では無いが死霊系統の効果と闇魔法を統合して作った根源魔法、だから統合根源魔法だ。」
天羽「なるほど〜、じゃ、お喋りもそこそこに始めましょか。」
天羽綾人のその言葉と同時にその場の空気が凍りつく。嵐の前の静けさの如くその場は静まり返り、静寂がその場を支配する。その静寂の中、2つの簡略詠唱がその場に小さく響く。
蓮斗「闇系統最上位魔法・黒掌触腕」
天羽「次元系統最上位魔法・次元龍〝跋扈〟」
詠唱した瞬間静寂を切り裂く様に無数の闇の腕と大量の龍が顕現。獣達へ向け襲い掛かる。
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荒山「フェルテレスよ、今お主にかけられた精神支配を解いてやる。痛いじゃろうが、我慢せぇ!」
フェル「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
精神干渉の防衛機能により我を忘れたフェルテレス・サルジオンを荒山厳十郎が抑えにかかる。清水西夏と小鳥遊優里は溢れ出した獣の対処に追われていた。
小鳥遊「くそ、倒しても倒しても無限に湧いてくる!これじゃキリがない!」
清水「でも、倒し続けないと周りに被害が出る!ここで抑えないと!」
清水西夏はそう言いつつ額に冷や汗が浮かんでいた。無尽蔵に生み出され続ける獣に加え、フェルテレスから漏れ出る魔力に体が拒絶を示していたからだ。
小鳥遊「大丈夫、ですか!?清水団長!」
清水「大丈夫.....!」
清水西夏は開戦と同時にフェルテレスにより片足を切断されるという大怪我を負っていた。その怪我を治す為に消費した魔力は少なからず、清水西夏の体力を削る物だった。
小鳥遊「(さっきから、少しづつ清水団長の息が上がって来るる...長期戦は無理だ....)」
根源魔法を用いいた超高速戦闘、ここに来てそのスピードが清水西夏に牙を向いた。
清水「あ......」
怪我の治療に加え、高速で動き回りながらの戦闘、根源魔法は魔力を殆ど消費しない。だが、体力そのものは消費する。清水西夏は体力の限界を迎えその場に膝から崩れ落ちる。
小鳥遊「清水団長!!」
倒れ込んだ清水西夏に小鳥遊優里は駆け寄ろうとする。しかし獣達はそれを許さない。小鳥遊優里を止める獣と清水西夏を襲う獣に別れる。
小鳥遊「くそっ、邪魔だ!どけ!」
小鳥遊優里はそう声を張り上げるが、獣は人の言葉を介していない。その叫びも虚しく清水西夏に獣達が襲いかかる。
小鳥遊「やめろ!!」
1匹の獣が清水西夏に飛びかかる。口を大きく開け首を噛みちぎらんとする。その時だった。
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蓮斗「天羽、ちょっと俺の事守ってくれ。」
天羽「了解。」
蓮斗「魔力確認、座標確定、出力安定。」
蓮斗「闇系統最上位魔法・黒刀夜神」
祇梨蓮斗が両腕を持ち上げ何かを掴む動作をした。瞬間、祇梨蓮斗の手中に漆黒の刀が生成される。それをどこかへ向けて振り下ろした。
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小鳥遊「清水団長ーーー!!」
間に合わない、小鳥遊優里はそう思った。清水西夏までの距離はおよそ20m。その間には獣がひしめき合い、突破は困難。逃れようの無い確実な死がs清水西夏に訪れる。そう確信した時だった。一筋の黒い閃光が走った。
小鳥遊「.......え?」
その黒い閃光は清水西夏をギリギリで避け獣達を両断する。その光景を目にした小鳥遊優里は混乱する。今目の前で起こった摩訶不思議な出来事。小鳥遊優里の口から、自然と1人の少年の名が零れた。
小鳥遊「祇梨、君.....?」
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荒山「新島!!今の状況を日本全土に流せ!!」
新島「「どうしていきなり!?」」
新島杏は荒山厳十郎の突然の言葉に困惑を隠せない。しかし、それに対する荒山厳十郎の答えはこうだった。
荒山「日本に新しい英雄が生まれるんだ!その晴れ舞台を全国民に見せてやれ!!」
荒山厳十郎のその言葉を聞いてすぐには理解出来なかった。だが、新島杏の脳裏に2人の少年が浮かび上がった。
新島「「分かりました!!」」
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避難所で戦闘を繰り広げていたルミナストリニティは敵を全て打ち倒し疲弊しきっていた。3人共に地面に座り込み肩で息をしていた。
霧島「やっと、終わった.....」
エイナ「2人共、お疲れ様.....」
戸塚「なんとか、勝てましたね.....」
改造人間とそれを束ねる制圧部隊長を完全に制圧し捕縛を終え、少し休んでいると空中に突如映像が映し出された。そこには大量の獣とそれを生み出し続けるフェルテレスの姿が映されていた。
戸塚「嘘......」
エイナ「まだ、終わりじゃないのか.....?」
霧島「勘弁してよ.....」
ルミナストリニティの面々はその映像を目にしたと同時に再びの修羅場に戦意を大幅に減らした。それはルミナストリニティだけでなく、士気が上がった国防軍も同じだった。が、それは決して絶望を映す為の物ではなかった。
???「闇系統最上位魔法・黒刀夜神」
映像から突然一つの声が響く。その瞬間、獣達が黒い斬撃によって両断された。
戸塚「今の、声.....」
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荒山「はっはっは!来るのが遅かったではないか!小僧共!」
蓮斗「これでも、道中の獣を掃討しながら来たんです。早い方だと思いますよ?」
天羽「まぁ、結構残ってはいますけど、民間人の方は大丈夫だと思いますよ?だって、援軍が来ましたからね。」
荒山「ふっ、そうじゃな。」
その会話が映像で流れたと同時に新しい3つの映像が流れ始めた。そこには3体のイレギュラーが映し出されていた。そう、映像に映っていたのは空狐長、龍神王、廻拓者の3名だったのだ。
空狐長「いやぁ、随分と調子に乗ってたなぁ...」
廻拓者「俺達のいる場所に厄災モドキをよこして足止めするのはいい作戦だったな。」
龍神王「でも、数が少なかったんじゃない?」
空狐長「安全を確認した上でここに来た。」
廻拓者「民間人の事は俺達3人に任せてくれればいい。傷を負った国防軍の団員達もこちらで治療する。そっちは頼んだよ、3人共。」
荒山「協力感謝する。」
天羽「さ、て、と、そんじゃぼちぼち.....」
蓮斗「始めようか、舐められっぱなしじゃ、終わるに終われねぇからな。」
突然の最強種3体の介入と現日本に存在する純粋な人間の上位勢が集まった。その光景を目にする暴走状態のフェルテレス・サルジオンは圧を強める。
蓮斗「アレの相手は、誰がします?」
荒山「あやつとは昔馴染みじゃ、儂がやる。お主ら2人は奴が作る強力な獣を相当してくれ。」
天羽「了解です。」
蓮斗「じゃぁ、行動開始ですね。」




