第二真祖
マッド「うひゃー、結構強そうだな〜。」
そう言いながら敵前に立つのは深淵世界第二真祖、マッドフェイド。冠位代行執行官の更に上、冠位直々に力を与えられた上位存在。
マッド「うーん、見た感じただの人間って訳じゃなさそうだね。」
そう言いマッドフェイドが見つめる先には武装国家アルドンスにより編成された制圧部隊がいた。
???「が、ががが、が........」
構成員であろう者の口からは明らかに異様な声が絶えず流れ続けていた。
マッド「噂には聞いていたけど、まさかこんな序盤から改造人間が出てくるなんてね。君達の上の奴は今回で確実に天羽君達を殺すつもりなんだね。」
???「そうだな、上からは対象を殺すまでなら周りにどれだけ被害を出しても良いと命令されている。だから、国家機密の改造人間も出したんだ。」
マッド「おっと、喋れる個体もいたのか。名前を聞いてもいいかな?」
???「もちろん。私は武装国家アルドンス、改造人間部隊指揮官、アルカ・ソルハ。貴方は見た所、深淵世界の第二真祖、マッドフェイド氏とお見受けするが、間違いないか?」
マッド「そうだよ、俺はマッドフェイド、君の言う通り第二真祖だよ。」
アルカ「そうでしたか...丁度いいです、人間以外のサンプルも欲しかった所なので、貴方を倒してその死体を使わせて貰いましょう。」
そう言いアルカ・ソルハは片手を上げ、それを勢い良く振り下ろす。攻撃開始の合図だったのだろう、その合図と同時に改造人間達が動き出す。が、その動きは異様なものだった。
マッド「お.......?」
マッドフェイドは改造人間の動きを目にし困惑の声を上げた。なぜなら......
マッド「(速い.......)」
そのスピードは明らかに生物のそれを逸脱した物だったからだ。
マッド「速い上に、統率が取れてるな。厄介だな、殺す事は簡単だが、あまりやり過ぎると周囲に影響が出るな。」
そう、マッドフェイドは上位存在。その力は生物と言うより冠位指定ノ獣に近しい物だ。下手に力を振るえばその影響は国そのものに牙を剥く。その様子を見たアルカ・ソルハは笑みを零す。
アルカ「(真正面から戦えばまず私に勝ち目は無い!だが、マッドフェイドは周囲に気を使って全力を出せない、そこを突く!!!)」
アルカ「お前ら、かかれ!」
アルカ・ソルハのその号令とともに改造人間が同時にマッドフェイドに襲いかかる。
マッド「ふむ、早いけど、何か仕掛けがあるな?」
マッドフェイドは改造人間達の攻撃を捌きながらその動きを分析しある種の違和感を覚えた。
マッド「(改造人間達のスピードは目測で約500km/hか...まず人間には出せない速度だ。それに見た所、素体になっているのは兵士ではなく普通の一般人。どうやってこのスピードを...ん?)」
攻撃を捌きながら改造人間達を観察しているとマッドフェイドはとある事に気が付く。
マッド「(この人間達.....)」
アルカ「よしっ、左右から挟み込め!」
その指示に従い改造人間はマッドフェイドの両腕を掴む。その腕力は想像を絶するものだった。
マッド「身体機能全てが底上げされてるのか...」
アルカ「12番、19番、前後から刺せ!」
その号令に従い2体の改造人間がマッドフェイドに接近する。腕を鋼鉄の刃に変形させ同時にマッドフェイドの体に突き立てる。
マッド「がはっ.......」
マッドフェイドは刺されると同時に血を吐く。それを見たアルカ・ソルハは歓喜の声をあげる。
アルカ「よしっ、よくやった!これで新しい兵器が.....」
マッドフェイドを前側から貫いた改造人間はマッドフェイドの至近距離になる程、刃を突き刺していた。それを抜こうとした時、耳元である言葉が聞こえた。
マッド「やっぱり、表情も言葉も出てないけど、感情はあるのか...」
そう、先程よりも低い声でマッドフェイドは呟いた。感情を出力する事が出来ない筈の改造人間はその瞬間、例え様の無い恐怖に襲われた。次の瞬間だった。
マッド「天羽君、結界よろしく。」
天羽「了解です。」
そう、師弟は短く会話をする。
天羽「空間系統変容最上位魔法」
天羽「広域展開〝次元断層滅界障壁〟」
天羽綾人が発動させたのは最上位魔法を改変し変容した結界。それを目にしたアルカ・ソルハは余裕が一瞬で消え焦りを見せる。
アルカ「守りに入られれば突破が困難になる!お前ら、今すぐ突っ込め!」
初めての魔法、展開するのに少しばかりの猶予がありそれを逃すまいとアルカ・ソルハはすぐさま改造人間達に号令をかける。しかし、改造人間達はその命令を実行する事は出来なかった。
マッド「権能解放・同一化」
マッド「人類史との同一化」
その言葉と共にその場を、マッドフェイドの圧が包む。それは恐怖、焦り、困惑。様々な感情を敵味方問わず与えた。
天羽「やっぱ、えげつないな、師匠...」
アルカ「人類史との、同一化...?なんだ、それは」
アルカ・ソルハは形容し難い焦りを覚える。今目の前にいる存在が発動させた権能、その効果を一切と言っていい程予想が出来ないからだ。
マッド「天羽君の結界があれば、俺が少し暴れても問題は無いよな?」
天羽「戦闘は禁止されてるんで守備に力を注ぎます。だから、絶対壊れません。」
マッド「はは、言う様になったじゃん。」
アルカ「.......っ!お前ら、かかれ!」
アルカ・ソルハはマッドフェイドの変化に気を取られ結界が完成した事に気が付く。それに少しばかり苛立ちを覚え、単調な命令を出す。しかし、マッドフェイドの変化は想像を絶する災禍だった。
マッド「闇系統最上位魔法・黒掌触腕」
アルカ「は.....?」
瞬間、マッドフェイドの周囲より闇の腕が顕現、改造人間達を薙ぎ倒していく。
アルカ「何故、貴様が、闇魔法を使える....!?」
アルカ・ソルハは意味不明と言った表情でそう問う。それに対しマッドフェイドは薄ら笑いを浮かべながら言う。
マッド「俺の権能は人類史との同一化。人類史に刻まれる人間や神、冠位の力を俺の規模で出力し発動させる。気をしっかりもてよ?今からお前らが戦うのは、この世界が始まった時から紡がれて来た歴史そのものなんだから。」
そう言い武装国家アルドンスの制圧部隊の前に立つは深淵世界に存在する上位存在、真祖達の中で最強と謳われる、第二真祖マッドフェイドその人だ。




